家畜伝染病の「アフリカ豚コレラ」が2018年8月からアジアで猛威を振るっている。通常の豚コレラよりも感染力が強く、到死率が高く、豚肉の最大生産国および消費国である中国では、中国本土の31省・自治区・直轄市全てで発生し、特に影響を受けている。ヨーロッパでの生産量に匹敵する最大2億頭の殺処分となる可能性がある。
『Les Echos』によると、アフリカ豚コレラは、チベットから北京を通り香港まで中国全土に広がっている。国際連合食糧農業機関の中国事務所代表ヴァンサン・マルタン(Vincent Martin)氏は「中国当局はこのウイルスの侵入に備え、対応計画を立て、それを実施する手段を持っていたが、伝染病の蔓延を抑制するのに十分ではなかった」と述べた。
『France Info』によると、「アフリカ豚コレラ」は豚やイノシシに感染するが人には感染しない。1921年に最初にアフリカ大陸で発見され、サハラ砂漠以南セネガルからケニアまでの約20ヵ国で見られたアフリカ大陸での家畜伝染病であった。
しかし、その後徐々に世界に広がり、ワクチンなどの治療法、予防法が確立されていないため、発生が確認された地域では、周辺の養豚場を含めて予防的殺処分で対処する必要がある。
アジアでは中国だけでなく、2019年1月にはモンゴル、2月には豚生産国第5位であるベトナム、3月にはカンボジア、その後北朝鮮でも発生が確認された。
『France Info』は、養豚農家がアジアに集中していることが、中国を中心としたアジア地域での蔓延を助長したと伝えている。たとえば、世界最大の豚肉生産量を誇る中国は年間5,500万トンの豚肉、つまり世界全体の45%を生産しており、消費量も世界の約半分を占めている。国際連合食糧農業機関(FAO)が5月に発表した報告書では、地球上に生きている「半数近くの」豚が中国で飼育されていると報告している。
例えば、フランスでの2000万匹に対して、7億匹の豚が中国にいる。そのため、中国は豚肉の主要市場となっている。
中国や他のアジア諸国での衛生対策もまた疑問視されている。国際戦略研究所(Iris)によると「中国で飼育されている豚の約半分は、家族経営の農場だ。豚は、家の残飯を餌として与えられ、残飯には感染した豚肉が含まれている可能性がある」。
また農業経済学者のジャン・マルク・ショメ(Jean-Marc Chaumet)氏は『France Info』で、中国での大規模な家畜の流通も原因としてあげている。「中国の消費者は屠殺されたばかりの肉を食べるのが好きなので、動物は一か所で飼育され、数百または数千キロメートル離れたところに運ばれます。動物のこの循環も病気の拡大に貢献しています。」
『L’Express』によると、4月時点での中国政府の発表で、豚肉の在庫は1年前より19%少なくなく、価格は病気が勃発した8月よりも14%高くなっているという。そして専門家は、養豚場の生産量が30%以上、さらには50%減少したと推定している。 これにより、年間で3億頭の豚が減少となる。
アフリカ豚コレラに対するワクチンの開発には何年もかかる。 病気を防ぎ、生産量を現水準に復活させるためには5-7年かかることが予想される。そのため年間1,620万トンの豚肉、米国の総生産量の1.3倍が失われることになるという。
現在中国は欧州連合(EU)、カナダ、ブラジルなどからの豚肉の輸入を増やしており、今後世界中で豚肉の値段が上がることは避けられないだろう。
香港城市大学の動物伝染病学者のダーク・ファイファー氏は『The Guardian』で次のように述べている。「これは、私たちが体験した家畜伝染病の流行の中で史上最大級のものです」また、「口蹄疫およびBSEとは比べ物にならないほどの被害を起こしています。 そしてその拡散を止める方法がないのです。」
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