米国立科学アカデミー紀要掲載の最新の研究によると、犬が儚げで人を惹きつける“子犬のような目“をするのは、飼い主の愛情によるものでなく、犬の眉の筋肉の進化によるものだったという。この筋肉は狼に近いシベリアンハスキー以外の小型犬ほぼ全種でみられたという。
6月18日付カナダ
『CBC』は「子犬の無垢な目は偶然じゃないとの調査」との見出しで以下のように報道している。
子犬の儚げで無垢な目は、飼い主の愛情によるものでなく、進化によるものだった。この人間を虜にし、語りかけるような“子犬のような目”と言われるものは、偶然の産物でなく生存のためメカニズムだったという。
デュケイン大学のバローズ教授は、解剖学的に家畜犬と狼を比較し検証した。...
全部読む
6月18日付カナダ
『CBC』は「子犬の無垢な目は偶然じゃないとの調査」との見出しで以下のように報道している。
子犬の儚げで無垢な目は、飼い主の愛情によるものでなく、進化によるものだった。この人間を虜にし、語りかけるような“子犬のような目”と言われるものは、偶然の産物でなく生存のためメカニズムだったという。
デュケイン大学のバローズ教授は、解剖学的に家畜犬と狼を比較し検証した。
子犬のような目が出来る犬は、人間に何かやってほしいことをしてもらうよう人間を動かす事に長けている。このような表情が他の犬より上手(すぐに出来る)犬を人は飼いたいと思うものだが、これは人にとり重要で、犬にも利益がある。眼球域に眉毛を上げる筋肉があるが、これは人間にもあり心配そうな表情をすると見られるもの。この筋肉は狼には見られず犬にはある重要なもので、ある種が長年に渡り獲得した表情筋だという。犬は狼の直系だと考えられており、初期の狼は狼と犬の混合種だった。
火元に骨や残飯を漁りに来た時、最も長く生き残ったのが、この表情が出来るものだった。人間がこの表情をする犬を飼って繁殖させたか、あるいは単に攻撃的でないおとなしい性質に起因する。人は犬が噛みついたり人間の子どもを食べたりしないように、より小さな歯を持つものを好んだ。この表情は穏やかな性質と結びつきがあるという。このような理由から“子犬のような目”の犬が生存してきたと考えられるのだという。犬の保護シェルターでは、このような顔の犬から早く貰われていく。
この子犬のような目はハスキー犬では検出できなかったが、ヨークシャーテリアのような小型犬全種において、この表情がみられたという。これは非常に興味深い点で、ハスキー犬は古代犬とされ、犬の起源に近い種類。ヨークシャーテリアのように、おもちゃで遊ぶ犬種は、狼からより遠い品種で、調査対象とした全ての小型犬はこの筋肉を持っていた。
6月17日付米国『ワシントンポスト』は「犬は人間の心を惹きつけるため“子犬のような目”を進化させた可能性」との見出しで以下のように報道している。
悲しげで、何かをせがむような、眉を上げた犬の表情を我々は”子犬のような目”と呼ぶ。15000年以上前古代狼を家畜化し進化した犬には人とコミュニケーションをとる驚くべき能力もみられる。特別な眼球内の筋肉が動くことで、目を大きく見せ、より子どもっぽく、人が悲しい時のような表情を作り出す。
眉を良く使う表情をする古代犬は人から餌を多く貰い、これが子孫に受け継がれ、人の無意識の偏見が犬の目の筋肉の進化に影響したと考えられるという。進化人類学者は、これら解剖学的違いは、人が犬と協力し交流したいという意図が進化の原動力となったことを意味するという。
人が操作を加えた種における物理的多様性の中で、犬の目の筋肉は驚くべき速度で進化した。家畜化への過程で自然界以上に犬の進化が変化した。人と犬の関係において目は重要だ。犬は問題が起きた時、人とアイコンタクトを行うが、狼はそうしない。人も犬も互いを見つめる時、人の母子同様、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌される。別の研究では、犬が子の世話をする時、眉の筋肉を耳の方へ近づけ、ほとんど“微笑む”ような表情をするという。これが、狼に近い古代犬であるシベリアンハスキー以外のほぼ全種でみられるという。
眉に関する発見は家畜化の副産物と言える可能性がある。銀ぎつねの家畜化の研究では、人がおとなしい動物を飼育に選ぶとき、ある身体的特徴、柔らかい(垂れた)耳、カールした尻尾、斑状(ぶち)色を選ぶとされる。
その理由は定かではないが、これは家畜化症候群とよばれ、犬の眉が上がるのはその一部だという。
閉じる