年金問題を心配する声が日本と比べて遙かに少ない中国ではあるが、今回の国内有力メディアの報道だけに、年金悲観論が浮上し、大きな波紋になる可能性がある。特に若い世代にとって将来、自分が納めた社会保険料が年金となって戻ってくるかどうかは、非常に切実な問題となる。非正規雇用制度がない分、中国の年金制度は、相対的に安心だとされてきたが、このような議論が今後増えるものと思われる。
その背景には、先日、一部のメディアが「中国社会科学院レポート:年金2035年にも枯渇する可能性を踏まえて、専門家は若者に早期に老後資金作りを計画するよう促す」というタイトルで、「中国年金評価レポート2019-2050」のデータを引用し、「今後30年間、全国の市町村企業従業員基礎年金基金の当期残高は数年間の黒字維持をするも、余儀なく赤字に落ち込み、その規模がますます大きくなる。...
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年金問題を心配する声が日本と比べて遙かに少ない中国ではあるが、今回の国内有力メディアの報道だけに、年金悲観論が浮上し、大きな波紋になる可能性がある。特に若い世代にとって将来、自分が納めた社会保険料が年金となって戻ってくるかどうかは、非常に切実な問題となる。非正規雇用制度がない分、中国の年金制度は、相対的に安心だとされてきたが、このような議論が今後増えるものと思われる。
その背景には、先日、一部のメディアが「中国社会科学院レポート:年金2035年にも枯渇する可能性を踏まえて、専門家は若者に早期に老後資金作りを計画するよう促す」というタイトルで、「中国年金評価レポート2019-2050」のデータを引用し、「今後30年間、全国の市町村企業従業員基礎年金基金の当期残高は数年間の黒字維持をするも、余儀なく赤字に落ち込み、その規模がますます大きくなる。2035年にも累計残高を使い果たすことになる。60才で定年とすれば、現在39才の人は2035年にはまだ55才で、定年の年齢に達していない、この80年代生まれの世代が年金を貰えない最初の世代になるのでは」と報じていることからだ。
これに対して、政府主管部門の人力資源・社会保障省の担当者の回答は、「老齢保険制度に対する理解が不十分」だという。また、この担当者は、年金の持続可能な発展問題について、中央政府は非常に重要視しており、転ばぬ先の杖として、一連の対応措置を制定したと強調したうえ、今年の第一四半期の記者会見で年金部門の最高責任者の聶明隽氏が挙げた幾つかの対応措置を例に年金不安説に反論した。
中国は、今年に入って、高まる人口高齢化のプレッシャーに対処するため、社会保険料率を下げる総合政策を実施することにより、より大きい「パイ」を作り、企業の発展と年金制度の発展の好循環を図った。また、基金に対する中央調整という制度を実施することにより、地域間の社会保険の負担を均衡させ、困難な地域の給付確保を支援することにしている。2018年末現在、企業年金保険基金の累計残高は47.3兆元(756兆円に相当)に達したという。
「しかし、客観的に言えば、構造的な矛盾が目立ち、地域間のバランスが非常に悪いだけでなく、年金保険会社の納付比率が統一されていないだけでなく、基金残高の差も非常に大きいのが実情。現在と今後の一時期に、構造的矛盾が養老保険の運用の主要な矛盾である」とも聶氏は認めている。
聶氏はまた、今世紀初めから国は戦略準備基金を設立し、さまざまな措置を講じることで、基金の規模が拡大していて、現在、全国社会保障基金はすでに20兆元(316兆円)前後の備蓄があり、また一部の国有資本を振り替えて社会保険基金を充実させる仕事もすでに始まっている。それ以外に、各政府レベルの財政による基礎年金保険の資金投入が年々増加しており、2019年の中央財政歳出だけで企業年金保険に使う予算が5285億元(8.36兆円に相当)達し、前年比9.4%増となり、地方財政の資金手配を加えると、高い水準が保たれているとしている。聶氏は、「人力資源・社会保障相は、将来の給付リスクを解消するための準備が出来ており、制度の持続可能な発展は保証できるから、定年退職者の皆さん、安心してください」と述べている。
年金制度は日本でも参議院選挙の争点となっており、中国でも社会不安の種として、これからも様々な議論が行われる方が健全と思われる。
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