米中合作アニメ映画“アボミナブル(忌まわしい、不愉快な、の意。注後記)”が東南アジアで物議を醸している。映画の中で、主人公が眺める南シナ海の地図上に、中国が一方的に領有権を主張する“九段線”が描かれている。そこで、中国と領有権問題を抱える周辺国に反発が起きていて、先週のベトナムに続いて、マレーシアでも同映画の上映が見送られることになった。
10月20日付米
『ロイター通信』:「アニメ映画“アボミナブル”、中国主張の地図の場面をカットせよとの命令に従わず上映中止に」
マレーシアの映画配給会社ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズは10月20日、米映画製作大手ドリームワークスと上海在の映画製作会社パール・スタジオが共同制作したアニメ映画“アボミナブル”が、マレーシアでの上映が中止になったと発表した。
同社によると、マレーシアンの映画検閲委員会が先週、映画中に出てくる南シナ海の地図に、中国が一方的に領有権を主張する“九段線”が描かれていることから、同映画の上映条件として、そのシーンをカットするよう要求してきた。...
全部読む
10月20日付米
『ロイター通信』:「アニメ映画“アボミナブル”、中国主張の地図の場面をカットせよとの命令に従わず上映中止に」
マレーシアの映画配給会社ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズは10月20日、米映画製作大手ドリームワークスと上海在の映画製作会社パール・スタジオが共同制作したアニメ映画“アボミナブル”が、マレーシアでの上映が中止になったと発表した。
同社によると、マレーシアンの映画検閲委員会が先週、映画中に出てくる南シナ海の地図に、中国が一方的に領有権を主張する“九段線”が描かれていることから、同映画の上映条件として、そのシーンをカットするよう要求してきた。
しかし、その要求を制作者側が突っぱねたため、マレーシア国内での上映ができなくなったという。
当初の日程では、11月7日に封切りされる予定であった。
マレーシアのサイフディン・アブドラ外相は先週、南シナ海における領有権問題での衝突に備えるため、同国海軍力を増強する必要があると語っていた。
一方、同じく領有権問題を抱えるベトナムでは先週、同映画の上映を中止する決定がされている。
また、フィリピン外務省も、同映画の不適当な地図のシーンはカットされるべきだとコメントしている。
同日付シンガポール『チャネル・ニュース・アジア』(『AFP通信』配信):「アニメ映画“アボミナブル”、南シナ海の地図のシーンのためマレーシアで上映中止」
マレーシアの映画検閲委員会のモハマド・ザンベリ・アブダル・アジズ委員長は、アニメ映画“アボミナブル”の中で描かれている地図は不適当であるため、そのシーンをカットすることを条件に上映を許可する、とコメントしていた。
しかし、同映画の配給会社によると、制作者側の米ドリームワークスがその要求を拒んだため、11月7日から予定されていた同国の上映が中止に追い込まれたという。
マレーシアと同様、中国との領有権問題を抱えるベトナムにおいても、10月4日から上映が始まったが、問題のシーンが取り沙汰されることになったため、既に上映が中止となっている。
更に、フィリピンのテオドロ・ロクシン外相も、同映画をフィリピン国内で上映するに当り、不適切なシーンはカットされるべきだとコメントしている。
(注)アボミナブル:2019年に公開された米中合作のアニメーション映画。上海のアパートの屋根の上でイエティ(ヒマラヤの雪男)の子供を、同アパートに住む子供3人が発見。捕獲されていた研究所から逃げ出したものだが、3人はイエティをエベレストに帰すべく奮闘する物語。映画の中で、イエティが眺めている地図には領有権問題となっている南シナ海の九段線が描かれている。この問題で中国と対立しているベトナムでは10月4日に公開していたが、10月13日夜に上映中止となっている。
閉じる