スイスの連邦議会で20日、上下両院を改選する総選挙が行われ、下院では環境保護を訴える左派野党・緑の党が歴史的な躍進を果たし、改選前より議席を大幅に増やした。同党は第4党となり、反移民を掲げる右派与党・国民党は、得票率を落としながらも第1党の座を維持した。中道左派の社会民主党、中道右派の自由(急進)民主党がこれに続いた。
『AFP通信』や
『ロイター通信』、英
『BBC』などの報道によると、緑の党の得票率は13.2%となり、選挙前の予想以上だった。2015年の前回選挙時の得票率を6.1ポイント上回り、11議席から17増やして28議席を獲得した。
緑の党のリサ・マッツォーネ副代表は、スイスの公共放送局RTSに対し、「我々は明らかに事前の予想を超えた。」と述べ、「我々は街中で見られた動きが票となり、極めて喜んでいる。歴史的な数へと向かっている。」と選挙結果を評価した。
自由主義的な社会経済政策を掲げる中道的な別の環境政党、自由緑の党も支持を伸ばし、得票率は2015年の4.6%から7.8%となり、議席を7から16に増やした。気温が世界平均の2倍のスピードで上昇し、氷河の融解などの問題が発生しているスイスでは、選挙前に実施された世論調査で、気候変動が移民問題に代わって有権者の間で最大の関心事となり、地元メディアはスイスの近代政治史上最も重要な変化が起きているとしていた。
その反移民的な姿勢をしばしば非難されてきた与党・国民党の得票率は25.6%(53議席)で、2015年の29.4%(65議席)から低下したが、第1党の座を守った。移民問題などが主な争点とならずに支持基盤の高齢層からの支持が低下し、これを補うだけの若年層の支持が得られなかった。
国民党は移民の脅威を警告し、欧州連合(EU)非加盟国のスイスに対するEUの影響力排除を訴えている。同党は気候変動への対応を公約に掲げていない唯一の主要政党であり、一貫してスイスの主権を守ることの方が重要であると主張する。
緑の党の躍進に伴い、同党が初めて閣僚を出すかについて注目が集まっている。スイスの政治制度では、4年に1度の総選挙で10月に下院200議席、上院46議席を改選するが、内閣に相当する連邦参事会の閣僚は12月まで決定されない。7つの閣僚ポストは、所属政党や出身地の言語、性別などにより、長い間同じ4大政党で分け合ってきた。今回緑の党はキリスト教民主党をかわし第4党となり、閣僚ポストの1つを希望しているという。
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