スイスの金融機関大手UBSと大手コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は8日、昨年時点での世界のビリオネア(億万長者)の総資産は、前年比4.3%減の約8兆5000億ドルとなったと発表した。減少は2015年以来3年ぶりだが、アジア太平洋地域で大きく落ち込み、特に中国での低下が目立った。
『ロイター通信』『ブルームバーグ』米経済誌
『フォーブス』などが報じたUBSとPwCの報告書によると、2018年の世界のビリオネアの総資産は、貿易摩擦や為替の変動、経済成長の減速、不安定な金融市場などにより、前年から3880億ドル減少した。
地域別には、中国や香港などを始めとするアジア太平洋地域のビリオネアの総資産が最も大きく減少しており、中国の景気減速や米国の金利上昇などの要因により、8%減の2兆5000億ドルとなった。中国の同総資産は、株式の下落や経済成長の停滞、為替の影響などにより12%超下落して9824億ドル、香港では4%減の3198億ドルだった。
ビリオネアの人数は、米国のIT企業の創業者などが引き続き存在感を示した米州(北米・中南米)を除き、全ての地域で減少した。2018年現在、米州には前年比4.8%(33人)増の749人のビリオネアがおり、米IT企業では70人から89人に増加している。UBS米国法人の私有財産管理と富裕層向けビジネスの責任者ジョン・マシューズ氏は、「米国経済の復元力を示すもの」と評価した。
アジア太平洋地域の合計人数は、前年比7.4%(60人)減の754人で、中国は48人減の325人だった。2018年には数十人が資産を減らしリストに名前を連ねることができなかったものの、同国ではなお新たなビリオネアが2~2.5日に1人生まれている。
昨年来、株価は世界的に回復しており、今年は20%ほど上昇している。報告書が示すとおり、2018年時点での世界のビリオネアの総資産は減少したものの、長期的には増加傾向を示しており、2013年から34.5%増加している。ビリオネアの人数も同期間に589人が加わり、38.9%増加して2,101人となった。
報告書は、女性のビリオネアの人数は、同じ5年間で160人から233人へと46%増加し、男性の増加率39%を上回ったと指摘した。2018年時点で、一代でビリオネアとなった女性のうちの10人中4人が、消費者・小売部門出身であるという。
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