英慈善団体のナショナル・トラストは20日、イングランド南部の2カ所の地区に、現在では英国に生息しないビーバーを放ち、その習性を利用して、治水や周辺の環境対策に役立てる計画を発表した。
『AFP通信』のほか、
『BBC』『ガーディアン』などの英メディアが報じた。ナショナル・トラストは、歴史的建築物の保全や自然保護などに取り組んでいる慈善団体である。同団体は、野生生物の種の数が1970年以降減少しているとして、2025年までに2万5000ヘクタールの「野生生物が豊富な生息地」を回復することを目指しており、今回のビーバーの導入もその一環だという。
ナショナル・トラストは20日、来年初めに、ヨーロッパビーバーをイングランド南部の2カ所の地区に放つ計画を示した。...
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『AFP通信』のほか、
『BBC』『ガーディアン』などの英メディアが報じた。ナショナル・トラストは、歴史的建築物の保全や自然保護などに取り組んでいる慈善団体である。同団体は、野生生物の種の数が1970年以降減少しているとして、2025年までに2万5000ヘクタールの「野生生物が豊富な生息地」を回復することを目指しており、今回のビーバーの導入もその一環だという。
ナショナル・トラストは20日、来年初めに、ヨーロッパビーバーをイングランド南部の2カ所の地区に放つ計画を示した。ビーバーはフェンスで囲まれた森林地帯につがいで放たれ、専門家が環境の変化を水理学的、生態学的な面から監視する。
ビーバーは、かつて英国に生息していたが、毛皮や肉、じゃ香腺などへの需要により乱獲され、16世紀に地域絶滅種となった。それ以降は、スコットランド西部などで何度か、人間の管理下で元の生息地に再び導入されている。スコットランドでは2006年に再導入されてから飼育に成功しており、今回放たれるビーバーも同地から移送されるという。
2カ所のうちの1つの地区のプロジェクト管理者を務めるベン・アードリー氏は、「ビーバーが造るダムは、雨の少ない季節に水を貯え、下流での鉄砲水を減らすのに役立つとともに、河川の浸食を抑制し、沈泥を保持することにより、水質を向上させる。」と述べた。
ビーバーは、「自然のエンジニア」と呼ばれており、昆虫から野鳥まで幅広い種の生物を支えるための湿地の生息環境づくりに貢献する。アードリー氏は、河川流域にビーバーが生息することで、「気候変動やそれがもたらす異常気象に対し、周辺の地形がより復元力を持つようになる。」とその効用を説明した。
北イングランドの一部の地域は最近激しい洪水に襲われ、英気象庁によれば、過去最高の降水量を記録した場所もあった。長引く雨に加え、洪水に対する備えや水路の維持が不十分であることが、状況の悪化に拍車をかけている。ビーバーの再度の導入が、治水や生物の多様性の回復などの環境対策に、どれほどの効果があるかが注目されている。
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