米連邦最高裁は6日、連邦レベルの死刑執行を16年ぶりに再開するトランプ政権の方針を差し止めた下級審判断を支持した。最初の執行が9日に迫っていたが、高裁で再開の是非についての審理が行われ、結論が出るまでの数カ月間は、執行が回避される見通しだ。
『ロイター通信』や
『AP通信』、
『CNN』などが報じた。米国では死刑制度を廃止する州が増えており、連邦と過半数の州で同制度が残るものの、多くが執行を控えている。トランプ政権は、ウィリアム・バー司法長官が7月に連邦レベルでの死刑執行再開を発表。今週から来年1月に死刑囚4人の刑の執行を予定していたが、死刑囚側が新たな執行手続の違法性を主張し、再開停止を求めて提訴。連邦地裁は11月に執行の差し止めを命令し、これに対する政府の異議申し立ても高裁に退けられ、最高裁に判断が持ち込まれていた。
連邦最高裁は6日、下級審の執行の差し止め命令を支持し、首都ワシントンのDC巡回区控訴裁判所(高裁)に対し、再開の是非について本訴の審理を早急に行い、結論を出すよう命じた。保守派判事3名は、本訴では政府側勝訴の可能性が高く、高裁は60日以内に判断を下すべきとの補足意見を付している。米司法省のケリー・クペック報道官は、「最高裁判断には失望したが、高裁で、必要があれば最高裁で引き続き争う。」と述べた。
連邦最高裁の本判断について、死刑囚側の弁護士であるショーン・ノーラン氏は、「新たな死刑執行手続の合法性と合憲性の司法審査を回避するために、政府が執行を急ぐことは不可能であることを裁判所は明確に示した。」とコメントした。
シカゴの第7巡回区控訴裁判所は6日、9日に予定されていたダニエル・ルイス・リー死刑囚の死刑執行停止の解除を求めるトランプ政権からの申し立てを一旦認めていた。しかし、今回の最高裁判断により、同死刑囚の執行は延期される。
死刑執行が再開されれば、インディアナ州の連邦刑務所でリー死刑囚への執行が最初に行われる筈だった。現在、男性の連邦レベルの死刑囚の殆どが、同州の刑務所に収監されているという。白人至上主義のリー死刑囚は1996年、夫婦とその8歳の娘を窒息死させ、アーカンソー州で死刑を宣告されていた。
連邦レベルでの死刑執行は2003年以降実施されていない。執行で使用される薬物をめぐる訴訟が長引いていることが原因だ。薬物による死刑執行が予定される死刑囚は、その全員が連邦裁判所で殺人罪などにより死刑判決を受けている。
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