米英語辞典メリアム・ウェブスターは10日、2019年の「今年の言葉(Word of the Year)」を代名詞「they」に決定したと発表した。自らを男性でも女性でもないと認識する人などに、「they」をノンバイナリーの単数代名詞として使う事例が普及している。
『AFP通信』や米
『CNN』、英
『BBC』などによれば、今年の同辞典の言葉は代名詞「they」となった。しかし、従来の用法である三人称複数の「彼ら」を意味するものではない。今年選ばれた「they」は、近年普及してきた「単数のthey(singular they)」だ。特定の性別には分類されない性が混在する人、変化する人、男性・女性いずれでもない人など、ノンバイナリーの人々について「he(彼)」「she(彼女)」の代わりに使用する。
メリアム・ウェブスターは9月、「they」を1人の人物を表すノンバイナリーの代名詞としての定義を追加した。同辞典のウェブサイトは、単数の「they」の検索回数が過去1年で313%増加したとして、「本用法が英語の中で確立したことは疑いない」と指摘した。
同辞典によると、検索数が急激に伸びるきっかけとなったのは、1月のパリのファッションウィークにノンバイナリーのモデル、オスロー・グレイス氏が登場したこと、米議会民主党のプラミラ・ジャヤパル下院議員が4月、自分の子どもがノンバイナリーであると明かしたこと、6月のLGBTプライド・パレードなどだったという。
ノンバイナリーの認知度は高まっている。英歌手のサム・スミス氏は最近、自分のジェンダーとの長い葛藤の後、代名詞「they」「them」を好んでいると明かし、そのように呼んで欲しいと訴えた。米IT大手アップルは、基本ソフト(OS)の最新版に、ジェンダーニュートラルな絵文字を追加している。
今年、メリアム・ウェブスターで「they」以外に多く検索された言葉は、「quid pro quo(代償、対価)」、「impeach(弾劾する)」、「egregious(とんでもない)」などだ。過去の「今年の言葉」には、昨年の「justice」(正義、公正)、2017年の「feminism」(フェミニズム)、2016年の「surreal」(シュールな、超現実的な)などが選ばれている。
英語辞典「コリンズ」は先月、地球温暖化への対策を求める抗議デモ「climate strike(気候ストライキ)」を2019年の「今年の言葉」としている。但し、「non-binary(ノンバイナリー)」も候補に挙げられていた。「オックスフォード英語辞典」で今年最も参照された言葉は、「climate emergency(気候非常事態)」だった。
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