2019年12月に中国中部の武漢(ウーハン、湖北省)で発症が確認された新型コロナウィルスは、中国主要都市のみならず、日本、韓国、タイでも患者が報告されるところとなり、益々感染拡大の恐れを呈している。そこで習近平(シー・チンピン)国家主席も今週初めて、情報開示を徹底する等して、感染拡大を収めるべく関係省庁に檄を飛ばした。実は、2003年に中国で重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、時の政府が隠ぺい工作をしたがために、結局感染拡大を止められずに800人近くも犠牲者を出すという、苦い失策があった。そこで、今回の対策に失敗すると、景気後退気味の中国にあって、指導部の政治責任が問われることを恐れての積極姿勢だとみてとれる。
1月21日付米
『AP通信』:「中国、新型コロナウィルス感染拡大阻止に躍起」
感染症専門家の終南山(チョン・ナンシャン、83歳、SARSウィルス発見の功労者)呼吸器内科医が1月20日夜、中国国営メディア『中国中央テレビ』の番組に出演して、武漢の魚市場から広まった新型コロナウィルスについて、“ヒトからヒトへの感染”が認められると発表した。
これまで中国政府は、ヒトからヒトへの感染は確認されていないとしてきたことから、中国国内では一斉に懸念が広がっている。
何故なら、1月25日から春節(旧正月)の大型連休を迎えて、のべ30億人もの中国人が国内外で大移動すると言われており、新型コロナウィルスが爆発的に広がるのではと恐れるからである。
習近平国家主席も1月20日、関係省庁の役人を集めて、積極的に情報開示して他国の協力も仰ぎ、感染拡大を何としてでも阻止するよう檄を飛ばしている。
実は、2003年にSARSが中国で猛威を振るった際、当時の政府は情報統制に腐心し、結果として800人近い犠牲者を出す、という苦い失敗があった。
また、中国の情報開示不足で、SARSウィルスは2002~2003年の間に近隣十数ヵ国に感染が広がる事態となっていた。
今回の新型コロナウィルスについても、中国からの旅行者が、旅先の日本、韓国、タイで発症したとの報告が出されている。
そこで、日本の安倍晋三首相も1月21日、厚生労働省ら関係省庁の幹部を集めた席で、万難を排して新型コロナウィルスの感染拡大を阻止するよう指示している。
なお、アジア株式市場は、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、観光業等経済への影響を懸念して、軒並み大幅下落している。
同日付中国『人民日報』(『新華社通信』配信):「中国は新型ウィルス感染拡大を阻止する重大な責任」
武漢市から始まった新型コロナウィルスの感染は、既に224人が発症する事態となっている。
そこで中国市民の多くは、2003年当時に猛威を振るったSARSのことを苦々しく思い出している。
しかし、中国当局は当時と違って、感染拡大を阻止するための様々なシステム、例えば緊急対応や情報の開示等を構築している。
新型コロナウィルスであると認められるまで既に2週間経っているが、中国当局は関係省庁一丸となって、病気診断、原因究明、検疫、処置等の徹底を図っている。
中国疾病対策予防センターの専門家は、かかる適切な対応がとられれば、新型コロナウィルスの爆発的感染は抑えられるとしている。
ただ、非常に多くの市民が移動する春節を控え、対策は二重、三重に講じていく必要がある。
中国当局は既に、世界保健機関(WHO)並びにその他関係国とも情報共有含めて綿密な打ち合わせを開始している。
なお、かかる協力体制を敷いたことによって、2009年発生のH1N1豚インフルエンザや2013年のH7N9鳥インフルエンザの拡大を制御できた実績がある。
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