米ニューヨーク市議会は先週、市内の小売店やレストランなどが現金での支払いを拒否し、キャッシュレス方式の支払いに限定することを禁じる法案を賛成多数で可決した。銀行口座やクレジットカードを持てない低所得者層を保護することが目的であり、法案は市長が承認、署名した後に成立する。
『CNN』『ABCニュース』『USAトゥデイ』など多くの米メディアが26日までに伝えた。ニューヨーク市議会が23日に可決した同法案では、現金払いを受け付けず、クレジットカードやデビットカード、スマホ決済などのキャッシュレスに限ることだけでなく、現金払いの客にキャッシュレス利用客より高い料金を請求することも禁じた。但し、インターネットや電話による販売は対象外としている。また、プリペイドカードなどの支払い用のカードの購入やチャージにより支払いを行う形式の店舗も対象外だが、カードの機械が壊れたときには現金を受け付ける義務がある。
ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は同法案を支持しており、これを承認、署名する見通しだ。法律の施行後、ニューヨーク市内でこれに違反した店舗には、初犯の場合1,000ドル(約10万9,000円)の罰金が科される。2回目以降の違反の場合、罰金は最大で1,500ドル(約16万3,000円)に増額される。
米国では、キャッシュレス化の進行が、銀行口座やクレジットカードを持てない低所得者層の不利益につながるとの指摘が以前からある。そうした人々が地域経済から排除されるとの懸念が高まっており、キャッシュレス店を禁止する動きが国内で広がっている。
ニューヨーク市による昨年10月の調査では、市民の11.2%が銀行口座を持たず、約22%が小切手を現金化するような代替サービスを利用していた。同割合は、市中心部のマンハッタン島以外の、移民や有色人種などの低所得者層が多く住む地域でさらに高い。
法案を起草した同市議会・民主党のリッチー・トーレス議員は、「消費者には、支払い方法を選ぶ権限があるべきだ。」と述べ、「この法案は、高齢者、ホームレスなど、最も脆弱なニューヨーク市民を保護することになる。」と記者会見で説明した。
昨年、ペンシルベニア州フィラデルフィア市、カリフォルニア州サンフランシスコ市がキャッシュレス禁止法を成立させた。また、ニュージャージー州では、州全体で禁止法を導入した。マサチューセッツ州では、1978年に同様の法律を制定している。
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