英政府は18日、欧州連合(EU)離脱後の移民受け入れについて、世界各国からの高技能労働者を最優先し、求められる条件に応じて付与するポイントによって判断する新制度案を発表した。EUからの安価な労働力に依存する現在の状況から脱却し、国内労働者の雇用推進を目的とするものだが、産業界はこれに反発している。
『BBC』など英メディアや
『AFP通信』『ロイター通信』などが報じた。英国では2016年、EU離脱の是非を問う国民投票が実施されたが、その争点の1つがEUからの移民の大量流入をめぐる懸念だった。英政府は移民の全体数を抑制する方針を表明している。
新たな移民制度は2021年1月から実施され、特定の技能、資格、給与、専門性などに応じたポイントを付与し、ポイント数が一定水準に達した者にのみ査証(ビザ)を発給する。EU出身者もEU域外出身者も同じ条件で判断する。新制度ではさらに、英語を話す能力などの基準を満たす必要があり、既に就職先から職の提示を受けていることも条件とされているため、これに従えば、低技能労働者の入国ルートは閉じられることになる。
2004年に中欧・東欧の旧共産主義諸国出身の労働者を受け入れて以来、特に同地域から大量に移民が流入し、英国で職を得てきた。新制度によって、EUなどからの移民の安価な労働力に依存してきた英産業界は、大きな打撃を受ける可能性がある。
英政府の諮問機関である移民助言委員会(MAC)は、技能や給与の新基準の導入によって、2004年以降に英国に入国したEUを含む欧州経済地域(EEA)からの移民は、その約70%が査証発給の要件を満たさないことになると試算した。
産業界からは、新制度案に対し批判の声が上がっている。英国の雇用者らを代表する英国産業連盟(CBI)は、医療や社会福祉の現場や建設業界、宿泊や飲食などのサービス業など、外国人労働者への依存度が特に高い業界で、要員不足が懸念されると警告した。英国の農業も、毎年EUからの約8万人の季節労働者に依存しているという。
プリティ・パテル内相は、BBCやスカイニュースなどのメディアに対し、「然るべき技能を有する人々を歓迎し、低技能の人々の数を減らす」とした上で、英国には16~64歳の労働人口の約20%に相当する800万人以上の「経済活動に従事していない」人々がおり、企業は国内労働者の雇用促進を図るべきであると主張した。
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