総務省が5月29日に公表した、4月の失業率は2.6%と、今年1月・2月の2.4%、3月の2.5%より漸増している。一方、米国労働省発表の4月の失業率は14.7%と、3月の4.4%から跳ね上がり、戦後最悪のレベルとなっている。しかし、国が定めている“失業”の定義の違い(日本では、求職活動している正規雇用者が主な対象)、また、雇用文化の違い(米国では、大量解雇は経営者の常とう手段)があるため、単純に失業率比較だけで、当該国の深刻度は計れない。米メディアも、日本の景気低迷の深刻さは米国と大差ないと報道している。
5月29日付
『ロイター通信』:「日本の失業率の低さが労働市場の深刻度を覆い隠す」
総務省が5月29日に発表した4月の失業率は2.6%と、3月比+0.1%上昇している。
一方、米国の4月の失業率は14.7%と、戦後最悪の数値となっていて、また、3月データであるが欧州の場合も7.7%となっている。
しかし、エコノミストの解説では、他国に比して失業率が低いことで、日本の労働市場の深刻さを覆い隠す結果となるという。...
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5月29日付
『ロイター通信』:「日本の失業率の低さが労働市場の深刻度を覆い隠す」
総務省が5月29日に発表した4月の失業率は2.6%と、3月比+0.1%上昇している。
一方、米国の4月の失業率は14.7%と、戦後最悪の数値となっていて、また、3月データであるが欧州の場合も7.7%となっている。
しかし、エコノミストの解説では、他国に比して失業率が低いことで、日本の労働市場の深刻さを覆い隠す結果となるという。
まず、昨秋の消費増税の影響等から日本の第一四半期(1~3月期)は既に景気後退局面に入っており、今後、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題の影響が大きく表れてくるとする。
また、日本人の消費傾向から、+0.1%とは言え、失業率が上昇していることで、更に買い控え現象が強くなるとみる。
次に、日本の雇用状況をみると、4月の一時帰休者は前月比3倍増の420万人にもなっている。
一時帰休者は、感染流行収束に連れて職場復帰するとみられるが、第一生命経済研究所によれば、もしこの一時帰休者を上記失業率(言わば完全失業率)に含めれば、(米国他と遜色ない)11.4%に跳ね上がるという。
また、更に深刻なのは、総就業者数で、総務省データによれば、4月は6,625万人と前月比▼107万人減少しており、1963年1月に記録した▼113万人減少以来の最大の落ち込みになる。
これに対して、4月の完全失業者数(上記完全失業率の分子)は前月比+6万人増の178万人となっているが、この対象は求職活動を行っている失業者のみがカウントされる仕組みとなっており、欧米の対象基準と異なっている。
日本企業はかつて、2000年代初めのITバブル崩壊時並びに2008~2009年の世界金融危機に遭遇した際、大量の解雇を断行した。
そして今回、COVID-19感染流行に伴う不況により、特にサービス産業や中小企業が新たな人員整理の必要性に迫られると見込まれる。
日本の労働人口構成では、非正規雇用者-パート、契約社員、アルバイト-が労働人口の36.2%を占めるまで増加しているが、4月の実績からも明らかなように、今後も彼らの首切りが更に激しくなると考えられる。
なお、安倍晋三首相は今週、雇用情勢改善並びに失業率上昇抑制のためとして、1兆1千億ドル(117兆円)の追加歳出政策(第2次補正予算案)を閣議決定している。
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