新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行で、新しい生活様式が求められている。そこで俄然注目されつつあるのが、進化したロボットである。それはかつての人に代わって単純作業をすることに留まらず、離れた場所間でのコミュニケーションを助けたり、人に代わって安全点検やモノの配達、更には高齢者等の移動の補助を行ったりと多岐にわたる。米メディアが日本の先端技術について詳報している。
7月9日付
『ワシントン・ポスト』紙:「マスク不要で咳もしない、ソーシャルディスタンシングを保って医師の診察を補助するのはロボット」
長い間、ロボットは人に代わっての単純作業等に深く関わってきた。
その中でも日本は、アンドロイドのアシスタントやロボットの受付け等、便利さを向上させてきている。
そうした中、COVID-19感染流行問題で、ソーシャルディスタンシングを保つ等の新しい生活様式が求められる時代となり、人との接触を伴わずにこれまで通りのサービスを提供するべく、ロボットのバーテンダー、ガードマン、配達人が登場し始めている。
<アバターロボット>
年老いた両親に会いたいが、COVID-19感染リスクより逡巡している人は、アバター(注後記)ロボットの使用をお勧めする。
全日空傘下のアバターイン(2020年4月設立)が商品化している“ニューミー”というアバターロボット。
移動用車輪の付いたスタンド(伸縮可能)にタブレット・コンピューターが装着されており、利用者は離れた場所から相手方と会話したり移動したりの操作が可能で、タブレット・スクリーンに利用者が映し出され、相手方が顔を見られるという。
アバターイン創業者の深堀昂代表取締役CEOは、“あたかも相手方と至近距離で会話している感覚が持てる”としていて、“オンライン会議に利用されているウェベックス(米シスコ社製)やズーム(米ズーム社製)より、もっと利便性も親しみ易さもあるはず”だと強調している。
同CEOによれば、同社の梶谷ケビンCOOの両親はシアトル(米ワシントン州)在住のため、頻繁にお互いが行き来することができないため、“ニューミー”で家族同士がしばしば会話しているという。
特に梶谷氏の幼児も、祖父母との会話を楽しんでいるようで、“会話中に(実際祖父母と会ったときにしているように)ニューミーに抱き着く程”だという。
なお、“ニューミー”はその他、医師がCOVID-19感染疑いの患者を(直接会うことなく)診察したり、大学卒業生が自宅から卒業式に“出席”したり、また、無観客で行われているプロ野球読売ジャイアンツのファンが試合後に好きな選手のプレーについて感想を述べたりする等々、様々な場面で利用されている。
また、同社は、病院や高齢者施設、小売店、美術館、動物園、水族館等での利用を狙っていて、更に、来年開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、およそ1千台活用されることを望んでいる。
<代行ロボット>
人型ロボット開発のZMP(2001年1月設立)が商品化しようとしているのは、倉庫から消費者宅まで注文の品物を届ける配達ロボット、6台のカメラを装着したガードマン役のパトロールロボット、また、利用者の高齢者等が介護ヘルパー不要で行きたいところに連れて行ってくれる自走式車椅子である。
パトロールロボットについては、東京メトロ等が興味を示しており、配達ロボットは、今年5月に安倍晋三首相が、安全が確認されれば、年末までに車道や歩道での使用試験ができるように検討すると発言している。
また、自走式車椅子についても、介護ヘルパーを頼む必要がなく、かつ、そのためCOVID-19感染を心配することなく、高齢者等が自由に移動することが可能となり、正に新しい生活様式に相応しいツールだという。
同社の谷口恒代表取締役社長は、“COVID-19以前、顧客は人員削減のためのツールを求めていたが、COVID-19問題発生後の現在は劇的に変化し、ヒトが介在しないサービス提供ツールを強く求めている”とコメントしている。
<バーテンダーロボット>
バーテンダーロボットを開発しているのは、森トラストグループ傘下のQビット・ロボティクス(2018年1月設立)で、カフェで注文品のコーヒーをテーブルに届けたり、バーで好みのカクテル等をサービスしたりする。
同社の中野浩也代表取締役社長は、完全にヒトの代わりはできないが、コーヒーを届ける際に顧客を“フレンドリー”に楽しませることが可能だとする。
同社長は、“COVID-19時代になって、ヒトと接触せずに、しかし同様のサービスが受けられることが重要であり、ロボットに対する期待が益々高まっている”と付言した。
<韓国/見張りロボット>
韓国の学校で活躍しているのは、中国広東省深センの優必選(UBテック、2012年設立のロボット開発会社)製の“クルーザー”である。
ソウル南部の瑞草区(ソチョグ)役所が6月、区内の51の公立校に導入したもので、オーバーワーク気味の教員に代わって、毎朝校舎入り口に立ち、登校してくる生徒1人1人の体温を瞬時に測り、(COVID-19感染の恐れがある)発熱した生徒がいるとアラームで知らせる役目を果たしている。
また、(COVID-19感染防止に有効な)マスク着用していても鼻を覆っていない生徒がいた場合、“マスクを正しく着けてください”と注意を促している。
最初は戸惑っていた生徒も、“クルーザー”が簡易なダンスを披露したりするため、最近は“クルーザー”に手を振って挨拶するほど親近感を示しているという。
ただ、マスクがずれていた生徒に対し、先生だったら、注意した後に優しく微笑んでくれるのに、“クルーザー”は全然微笑まずに注意するだけであることにガッカリしている生徒もいる。
(注)アバター:(インド神話上の)化身、(思想などの)人間権化の意で、インターネットなどの仮想空間における、人間を具現化した3次元の動くキャラクター。アバター利用者であるユーザーに模した姿にされることがある一方、現実の自分と違う性別にしたり、カスタマイズした姿に合わせて性格を変えるなどして別の人間に「なりきる」など、ある種の遊びとしても機能する。
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