欧州で次世代通信規格5G(第5世代)の導入に積極的であったスイス。2019年に商用サービスが始めたが、アンテナに対する国民からの不満の声が殺到し、使用は停止となり、今もなお復活の見通しが立っていない。
『ユーロニュース』によると、世界中の多くの国で5Gの導入競争が繰り広げられているが、この第5世代のモバイルテクノロジーの展開に伴い、人体への電磁放射線の潜在的な影響が懸念を煽り、科学界を分裂させているという。
国際電磁安全委員会のケシュバリ委員長は「5Gなどの無線通信技術が健康に悪影響を及ぼすことの再現可能な科学的証拠はない」と言う。スイス通信事業者であるスイスコムの広報担当者クリスチャン・ノイハウス氏も、「どのような研究からも、健康に危険があると言える科学的コンセンサスは得られていない」と断言している。...
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『ユーロニュース』によると、世界中の多くの国で5Gの導入競争が繰り広げられているが、この第5世代のモバイルテクノロジーの展開に伴い、人体への電磁放射線の潜在的な影響が懸念を煽り、科学界を分裂させているという。
国際電磁安全委員会のケシュバリ委員長は「5Gなどの無線通信技術が健康に悪影響を及ぼすことの再現可能な科学的証拠はない」と言う。スイス通信事業者であるスイスコムの広報担当者クリスチャン・ノイハウス氏も、「どのような研究からも、健康に危険があると言える科学的コンセンサスは得られていない」と断言している。
しかし、スイスの生物学者ダニエル・ファーブルさんは「何十年もの間、電磁波は、人間を含む生物に熱的及び非熱的な影響を及ぼしている動かぬ証拠がある」と訴えている。
そして国民の中には、自身が影響を受けていると感じている人達がいる。スイスでは国民の10%は電磁波過敏症であると推定されており、多くの人がより強い5Gの電磁波の影響に対する不安を抱えている。
レマン湖近くに住むアンナ・フルシャンテさんは、2019年に5Gが導入されて以降、眠れなくなる、動悸がするなどの症状が出始めたという。その後自宅から200メートルほどの場所に5Gアンテナがあることを発見し、電磁波から身を守るために森の中で寝るようになったという。
しかし、スイスでは電磁波過敏症は疾患として認識されておらず、明確な診断を出せないため、病理学の研究を行うことも難しいとされている。過敏症を専門とするフィリップ・トゥルネサック医師は「研究がないということは、患者にとって適切な治療がない、または治療法が開発されていないことを意味する」と述べている。
電気技師のオリビエ・ボーデンマンさんも、「私たちが心配しているのは、電力の増加だ。通信会社は、稼働中の電力を4倍にしたいと考えている。」「現在、スイスでは、1メートルあたり5ボルトまたは6ボルトの制限があるが、通信会社は20に上げようとしている。」と不安の声を上げている。
分子生物物理学を専門とする電子工学エンジニアのエンリコ・ストゥラさんは生体系に対する電磁界の影響を研究している。彼は、「個々の電気通信システムによって生成された電磁波は、妥当な期間使用されると、DNAに実証可能な明白な損傷を引き起こす」と断言している。
『フランス アンフォ』によると、5Gになると電磁波は強くなり、世界保健機関(WHO)では発がん性物質の可能性があるものとして分類されているという。
スイスでは、現在領土の90%が標準的な5Gでカバーされているが、デモや使用制限により、最速バージョン5G+のアンテナ設置は300本で止まってしまっている。スイスは予防原則の立場を選び、目には見えない、あまり知られていないこの新しい技術についての情報を求めようとしているが、国内ではこの電磁波の影響をめぐって激しい議論が展開されている。
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