中国の傍若無人振りがまた明らかになった。中国の国連代表次席が、定年退官するドイツ国連大使に対して、よりによって“厄介払いができる”と暴言を吐いた。同大使は以前から、国連安全保障理事会の席上で、中国政府が不当にカナダ人を逮捕・拘留していると非難しており、今回最後の出席となった安保理事会でも同様の発言をしたことから、中国代表の逆鱗に触れたものと思われるが、それでも安保理常任理事国代表の口から発せられたことに驕りがみてとれる。ただ、10月中旬に実施された国連人権理事会選挙(注後記)において、中国マネーが奏功してか、中国がアフリカ・中南米諸国の支持を得て理事国に当選していることから、トランプ政権が憤るとおり、国連もいよいよ中国に牛耳られていると言わざるを得ない。
12月23日付米
『ニューズウィーク』誌:「中国、退任するドイツ国連大使に“厄介払いができる”と暴言」
中国の国連代表次席が12月22日、国連安全保障理事会において中国に対する人権批判を繰り広げた動きをけん制すべく、退任間際で最後の出席となったドイツ国連大使に対して、これで“厄介払いができる”と暴言を吐いた。
ドイツのクリストフ・ウースゲン国連大使(65歳)が本国規定で定年退官となるため、同理事会で退官前の最後の挨拶に臨んだ際、昨年来主張している、中国で不当に逮捕・拘留されているカナダ人2名の釈放を改めて訴えた。...
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12月23日付米
『ニューズウィーク』誌:「中国、退任するドイツ国連大使に“厄介払いができる”と暴言」
中国の国連代表次席が12月22日、国連安全保障理事会において中国に対する人権批判を繰り広げた動きをけん制すべく、退任間際で最後の出席となったドイツ国連大使に対して、これで“厄介払いができる”と暴言を吐いた。
ドイツのクリストフ・ウースゲン国連大使(65歳)が本国規定で定年退官となるため、同理事会で退官前の最後の挨拶に臨んだ際、昨年来主張している、中国で不当に逮捕・拘留されているカナダ人2名の釈放を改めて訴えた。
これに対して、中国の耿爽次席代表(ガァン・シゥアン、47歳、今年6月まで外交部報道局副局長)は、同大使の発言を“悪意に満ちた攻撃”だとした上で、“ウースゲン大使の退官
で厄介払いができる、と心の底から思っている“と発言した。
同大使は、自身の退官に加えて、安保理事会の非常任理事国としてのドイツの任期が切れることもあって、改めて、“カナダが制裁違反で拘束している華為技術(ファーウェイ、1987年設立の通信機器大手メーカー)幹部の孟晩舟(マン・ワンチョウ、48歳)がバンクーバー郊外の7部屋もある豪奢な邸宅で自宅軟禁となっているのに対し、その報復とばかりに逮捕・拘留されているカナダ人は狭い独房に押し込められている”として、“早期解放を要求する”と訴えた。
カナダ人実務家のマイケル・コブリグ(元外交官)及びマイケル・スパボー(コンサルタント)両氏は、中国滞在中の2018年12月中旬にスパイ活動容疑で逮捕・拘留されているが、同月初めにカナダ当局が孟氏を拘束していることから、中国による対カナダ報復措置だと捉えられている。
同大使はまた、“個人の運命、その人権擁護や安全確保、その健康や自由、またその希望までも不当に制限されている問題に対して関心を持たないとせば、当安保理事会の正当性は失われてしまう”とも訴えた。
しかし、耿次席代表は、同大使が安保理事会で予め合意していた議題のイラン核不拡散問題から逸脱しての意見陳述を糾弾した上で、“安保理事会の他メンバー国に対して不当に悪意に満ちた批判を行った”と抵抗する発言を行った。
その上で耿次席代表は、“2021年には同大使がメンバーとして加わることはないので、当安保理事会の使命である世界平和と安全保障の維持に向けて実りある協議ができるだろう”との悪態もついた。
なお、同大使は今年10月、国連総会において、米・英国等39ヵ国が提起した“中国の新疆ウィグル自治区やチベットでの人権蹂躙問題に関わる重大な懸念表明”を代表して陳述した。
同大使はまた、中国政府に国連代表の同地域への立ち入り調査を受け入れるよう訴えただけでなく、“香港の自治権・権利・自由を維持すること”を求めるとも付言した。
しかし、この共同表明については、中国が主導し、ロシア、キューバ、北朝鮮等ほぼ70ヵ国が提起した拒絶動議によって否決されてしまっている。
なおまた、その1週間後には、ロシアと共に中国が、国連人権理事会の理事国に選出されてしまっている。
一方、同日付中国『新華社通信』:「中国国連代表、ドイツ大使のマイケル・コブリグ容疑者
に関わる陳述に反論」
耿国連次席代表は12月22日、国連安保理事会でイラン核問題を協議している最中、ウースゲン独大使が中国で拘留されているマイケル・コブリグ容疑者の解放を訴えたことに対して明確に反論した。
同次席代表は、“年内最後の当安保理事会で、最も重要なイラン核問題の協議を行って方向性が見出せると期待している中、当理事会の精神である協調と統一を無視して、主題と無関係、かつ事実にも反している事項について陳述することに不快感を覚える”と強調した。
なお同次席代表は、国家の安全を脅かしかねない犯罪を犯した容疑者を、法律に基づいて裁いていることに何ら責めを負う謂れはないとも付言している。
(注)国連人権理事会選挙:10月13日に国連総会で実施された選挙で、同理事会47理事国のうち15理事国を改選するもの。任期は3年間で、連続任期は2期に制限。新たな任期は2021年1月開始。なお、ロシアと同様、中国も139票を得て当選したが、サウジアラビアは落選。
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