米南部の保守王国ジョージア州は先月下旬、同州黒人有権者の投票率制限に繋がりかねない選挙関連州法の改正案を成立させた。これに対して、同州でのオールスター・ゲームを予定していたメジャーリーグ・ベースボール(MLB)や同州に本社を置くコカ・コーラら大手企業が批判する行動に出た。そうした中、ドナルド・トランプ前大統領(74歳)が、MLBの試合のボイコット等、相も変わらず傍若無人に理不尽な“口撃”を仕掛けている。なお、ジョー・バイデン大統領(78歳)は同州法改正が発表された際、投票を阻害しかねないとして既に懸念を表明していて、MLBの決定に対しては、バラク・オバマ元大統領(59歳)が勇気ある行動だと賛辞を送っている。
4月3日付
『AP通信』:「トランプ前大統領、“キャンセルカルチャー”と叫んで、ジョージア州選挙法改正に抗議したMLB他大手企業に対するボイコット呼びかけ」
ドナルド・トランプ前大統領は4月3日、先月下旬にジョージア州で成立した選挙関連州法改正に抗議しているMLBや大手企業等に対して、“キャンセルカルチャー(注後記)を目覚めさせよ”と同氏支持者にボイコット行動を訴えた。
この前日、MLB選手会(1965年結成のMLB選手の労働組合)のトニー・クラーク専務理事(48歳)が、当該州法改正が不公正だと批判し、その抗議の意味で、今年7月に同州アトランタで開催予定であったMLBオールスター・ゲームの開催地を変更するとの意向を表明していた。...
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4月3日付
『AP通信』:「トランプ前大統領、“キャンセルカルチャー”と叫んで、ジョージア州選挙法改正に抗議したMLB他大手企業に対するボイコット呼びかけ」
ドナルド・トランプ前大統領は4月3日、先月下旬にジョージア州で成立した選挙関連州法改正に抗議しているMLBや大手企業等に対して、“キャンセルカルチャー(注後記)を目覚めさせよ”と同氏支持者にボイコット行動を訴えた。
この前日、MLB選手会(1965年結成のMLB選手の労働組合)のトニー・クラーク専務理事(48歳)が、当該州法改正が不公正だと批判し、その抗議の意味で、今年7月に同州アトランタで開催予定であったMLBオールスター・ゲームの開催地を変更するとの意向を表明していた。
また、同州に本社を構えるコカ・コーラやデルタ航空の他、IT大手のHP、マイクロソフト、ペイパル、ツイッター、ウーバー、小売業のターゲット、スポーツ用品のアンダーアーマー等200社近くの企業幹部が、同州法改正に懸念を示す共同声明を発表している。
そこで、未だに2020年大統領選で自身の票が盗まれた、と根拠のない主張を繰り返す同前大統領が、大統領時代と同様、自身の敵対者と判断する相手側に対して理不尽な批判を展開しようとしたものである。
前大統領が大規模スポーツ界に矛先を向けたのは今回が初めてではなく、大統領に就任したばかりの2017年、全米プロフットボールリーグ(NFL)の球団オーナーらに対して、試合開始時の国歌斉唱の際、(人種差別反対の意思表示として)片膝をつく非礼を行う選手を即刻解雇するよう要求している。
なお、今回ジョージア州で成立した選挙関連州法改正は、期日前投票を行う有権者に対する身元確認の厳格化、期日前投票期間の短縮、また、投票当日の投票所で並ぶ有権者へのボランティアによる飲食の提供禁止等を規制している。
同州のブライアン・ケンプ知事(57歳、共和党)は、昨年の大統領選時にトランプ前大統領らが同州の投票結果に異議を唱えていたことから、同州の選挙の信頼性を高めるための措置だとし、同法改正を批判している企業幹部らは誤解していると訴えた。
なお、同知事は、トランプ前大統領が言及した“キャンセルカルチャー”の呼びかけを非難している。
同日付『CNNニュース』:「オバマ元大統領、ジョージア州の選挙法改正に“抗議を示した”MLBを称賛」
バラク・オバマ元大統領は4月3日、先月下旬にジョージア州で成立した選挙関連州法改正に抗議して、MLBがアトランタで開催予定のオールスター・ゲームの開催場所を変更する、との発表について、“有権者の投票権を守るための意義ある行動”だと称賛する声明を発表した。
一方、この直前にトランプ前大統領が、“自由で公平な選挙を妨害しようとしている企業”やMLBに対して、ボイコット運動を展開するようツイッターで呼びかけている。
なお、アトランタのある同州コブ郡観光担当職員は、新感染症で大打撃を受けている観光業界にとって、MLBオールスター・ゲーム開催がなくなることに伴う“喪失経済利益”は1億ドル(約110億円)以上に上ると嘆いている。
(注)キャンセルカルチャー:著名人をはじめとした特定の対象の発言や行動を糾弾し、不買運動を起こしたり放送中の番組を中止させたりすることで、その対象を排除しようとする動きのこと。ソーシャルメディアの普及に伴い、米国などを中心に2010年代中頃から見られるようになった現象。
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