【あの一言】
南シナ海・軍事拠点化は止められるか
解説委員・津屋尚 最も懸念されるのが、米国の作戦をきっかけに米中が現場で衝突する事態。南シナ海は中国にとっても重要なシーレーンで、米国との軍事衝突は望んでいないだろう。米国もイージス艦をスビ礁の近くにあるベトナムやフィリピンが領有権を主張する岩礁周辺にも航行させることで、領有権争いについては中立の立場であることを示し、作戦が中国だけに向けられているのではないというメッセージを送ろうとしている。ただ、米国が派遣する船の種類や数などによっては、中国が過剰に反応したり、偶発的な事故をきっかけに緊張が高まったりする可能性も否定できない。中国はまた、弱腰と受け止められる対応は国内向けには見せられないという事情も抱えている。
2015/10/30 NHK総合[時論公論]
解説委員・津屋尚 南シナ海は中東の石油をはじめ、世界の貿易の半分以上が通過する重要なシーレーン。日本や米国の経済にとっても死活的に重要。このうち、米国が航行の自由作戦を実施した南沙諸島では、中国が少なくとも7ヶ所で浅瀬を埋め立て、人工島を造成している。滑走路、港湾施設も出現。領有権の主張のためだけではなく、人工島を実際に軍事基地として使おうとしているのではないかという疑念が強まった。滑走路は戦闘機や爆撃機が発着可能な3000mの長さがあり、一部ではレーダーや対空砲などの存在も確認されている。ここを中国の戦闘機が飛ぶようになれば、南シナ海は洋上だけでなく、その周辺の上空も中国の軍事的な影響力が格段に大きくなる。中国が意図すれば、船舶の通行や航空機の飛行をコントロールできる状況が生まれる可能性がある。
2015/10/30 NHK総合[時論公論]
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