【あの一言】
存在感増す中国の途上国支援・日本はどうつきあうか
神子田章博解説委員 アジア各国には膨大なインフラ整備需要がある。途上国側は日本と中国が情報共有を図りながら効率的な支援を行えばアジア経済の安定した発展につながると期待する声も高まっている。日本には中国の経済支援の行方を見ながら、着かず離れずのしたたかな付き合い方が求められている。
2017/06/20 NHK総合[時論公論]
神子田章博解説委員 AIIBの組織運営面について言えば、実際の融資を決める会議では、議決権の約20%を持つヨーロッパ各国が影響力を発揮し、中国による恣意的な融資先決定は今のところ行われていない。日本企業からは“日本もAIIBに加盟したほうが良い”との声も出ており、加盟しなければ有望な投資案件の情報が入らない恐れもありビジネスチャンスを失うとの懸念がある。
2017/06/20 NHK総合[時論公論]
神子田章博解説委員 安倍首相が一帯一路構想に協力する意思を示した背景には、日中関係改善に向けた思惑がある。今年は日中国交正常化45周年で来年は日中平和友好条約締結40周年。日本政府はアジアの途上国支援で協力する姿勢を中国側に見せることで、日中関係を改善に向かわせたいと考えている。前提条件となるのは中国の途上国支援が国際ルールに沿った形で実現されること。プロジェクトに経済性がありお金を借りた国が返済可能であること、作られたインフラを万人が利用できるよう開かれていることを強調した。その背景には中国への警戒感が残っていることがある。
2017/06/20 NHK総合[時論公論]
神子田章博解説委員 中国のAIIBが実質的に活動を始めてから1年半だが、実際に融資が承認された案件は16件。パキスタンでの高速道路建設や、オマーンの港湾インフラ整備などに融資が行われることになり、途上国側から歓迎されている。しかしこのうちAIIB単独による融資は4件だけ。大半がアジア開発銀行や世界銀行との協調融資となっている。背景には融資のノウハウが不足していることがある。職員数もADBを下回る100人足らずにとどまっていて、融資承諾額も10分の1に過ぎない。しかしAIIBの資本金はADBの3分の2に匹敵する。途上国の間では今後AIIBの融資拡大への期待が高まってくるだろう。
2017/06/20 NHK総合[時論公論]
神子田章博解説委員 中国の一帯一路構想は中国からヨーロッパに向けた交通インフラを陸路と海路で整備し、中国との経済交流を活発にしようというものだが、その際、設備を整備するのに必要な資金を融資するのがAIIB。AIIBの金総裁は「一帯一路はAIIBと同じものではない」としているが、「一帯一路のプロジェクトが一定の基準を満たしたら喜んで支援したい」との考えを示した。背景には中国で過剰となった鉄鋼やセメントをアジアのインフラ整備に回せばうまく輸出できるという経済的思惑がある。しかしそれ以上に中国が80を超える国と地域の加盟を誇る国際機関を主導し、アジア一帯に中国の勢力圏を拡大しようという政治的狙いがある。
2017/06/20 NHK総合[時論公論]
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