【あの一言】
米国・イラン対立・岐路に立つ核合意
解説委員・出川展恒 有志連合構想については、ペルシャ湾などで船の安全を守るというよりも、イランに対する圧力を強化する狙いがあるという見方が国際社会では支配的。現時点で参加を表明しているのは英国、オーストラリア、バーレーンの3か国だけ。イラン政府は、各国に対し有志連合には参加しないよう強く要請しており、先月下旬、日本を訪問したザリーフ外相も日本政府に伝えたとされる。日本にとって今年、国交樹立90年を迎えたイランを敵に回し、ペルシャ湾の緊張をかえって高めてしまうリスクもあるだけに、極めて慎重に判断する必要がある。ただ米国とイランの対立と緊張を背景に、双方が意図せず偶発的に軍事衝突が起きる恐れは依然、消えていない。また今の核合意が崩壊した場合、新たな合意を実現させるのはほぼ不可能で、中東地域で軍事的緊張と核開発競争を拡大させることになる。フランス・マクロン大統領が本気で仲介に乗り出したのも、その危険性を認識しているからであり、ここにきて関係国の姿勢に変化の兆しも生まれている。米国、イランの双方と良好な関係を築いてきた日本としては、緊張緩和に向けた外交努力の一翼を担うとともに、核合意を崩壊させないよう、例えば、イランによる原油輸出の道を確保するなどの具体策を打ち出す必要がある。
2019/09/06 NHK総合[時論公論]
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