5月29日付
『アジア・ニュース・インターナショナル』(1971年開局のインド最大のテレビ局)は、「中国共産党、経済低迷しても習国家主席の“ゼロコロナ政策”批判は敬遠」と題して、国内から抗議の声が強くなる中、中国共産党指導部は、今秋開催される中国共産党第20回全国大会(5年に一度開催される中国の最高指導機関)において習国家主席の3期目続投が無事承認されるまで、余計な波風を立てないように努めている、と分析している。
中国は今年の10月、中国共産党第20回全国大会(党大会)を開催する予定であるが、それまでは現在の厳しい新型コロナウィルス(COVID-19)政策を踏襲する意向である。
しかし、上海等での都市封鎖措置によって経済が低迷しており、多くの国民が習国家主席の「ゼロコロナ政策」に不満の声を上げているが、中国共産党指導部は同国家主席の批判を避けるという決断を下している。
米独立系メディア『グローバル・ストラット・ビュー(GSV、世界戦略展望)』報道によると、中国共産党はまず退任する管理職に対して、同国家主席の3期目が党大会で承認されるまで、批判めいた話をすることを一切禁止する命令を発信した。
中国共産党中央政治局常務委員会(中国の最高意思決定機関)事務局が出した命令は、「新時代における退任管理職に対する党強化規則」というタイトルで、退任する管理職はもとより現行共産党員も従わなければならないガイドラインを記したものである。
違反した者には、重大な制裁が科される恐れがあるという。
すなわち、同国家主席の「ゼロコロナ政策」に対する不満の声が高まる中、退任する管理職の言論統制を敷こうとするものである。
インドのシンクタンク、オブザーバー・リサーチ財団(1990年設立)は、“(批判の声を力で押さえつけようとする)かかる事態から、習近平は帝王になりつつある”と批評した。
また、米メディアからは、“習近平は中国のナポレオンと称されている”と報じられ、中国国内においても皮肉を込めて、“全てのことを牛耳るトップ”と揶揄されている。
しかし、このような批判をものともせず、中国共産党は習氏の3期目承認が確定するまで、厳しい「ゼロコロナ政策」を踏襲する意向であるが、これによって中国経済は大打撃を受けている。
民主主義がない中国においては、中国共産党の正統性を確実にするため、党が権力を保持することと堅牢な成長を続けることが求められる。
従って、中国共産党の最高指導者は誰もが高い経済成長達成に固執してきた。
ところが、世界の主要国の多くがCOVID-19との共存前提での経済活動再開を選択しているにも拘らず、中国のみが依然「ゼロコロナ政策」に執着するあまり、経済が打撃を受けていることから、中国共産党の正統性が根底から覆されようとしている、と『GSV』は報じている。
同政策に固執する一環からか、当局は5月の第2週に、COVID-19新規感染者数が減少しているにも拘らず、上海市住民に自宅待機を求める命令を再び発出している。
これを受けて、上海西部の浦東地区在住のある事業開発責任者は、都市封鎖措置によって生活費は上昇するばかりで、生活の質が大きく下落してしまっているとコメントした。
また、『GSV』のインタビューに答えたある女性は、“あらゆる仕事が影響を受けている”とし、“いつ都市封鎖措置が解除されるのか全く分からない”と嘆いた。
かかる状況もあって、高圧的な当局に対して抗議の声を上げる市民が増えてきている。
特に、北京大学(1898年創立の国立大学)の卒業生らが5月14日、同大学が金属製薄板でキャンパスを隔離する行為に出たことから、これに反対する抗議行動に出た。
学生らは、食糧を外注することや友人を招き入れることも禁止されたことにも立腹している。
『GSV』報道によると、北京市当局は、拡声器を使って抗議行動をする学生らを戒めたが、5人余りの学生が金属製薄板パネルを破って外に出たという。
しかしながら、中国中央政府は、かかる抗議活動が発生しているにも拘らず沈黙を守っている。
すなわち、直近数ヵ月間でも、政府批判の声が上がる中、中国共産党としては習国家主席の方針を取り消すことができないので、代わりに沈黙を貫いているものとみられる。
とにかく、今秋開催される重要な党大会まで、波風を立たせずに何とかやり過ごすことが最善策と判断しているものとみられる。
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