既に報じられているとおり、米国がトルコを、F-35最新鋭ステルス戦闘機の供給先からはずすことを決定した。トルコが、ロシア製対空ミサイル防衛システムを導入することを決定したことがその理由とされる。しかし、国境・領空問題で対峙するギリシャがF-35を導入することから、トルコとしては、その代替品の手当てが必須となる。ただ、ロシア製の最新鋭戦闘機を導入するとなる場合、トルコにとっては単に戦闘機の手当ての問題ではなく、米国はもとより北大西洋条約機構(NATO)との関係も断たれる恐れがある。
7月17日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「トランプ大統領によるF-35戦闘機供給撤回に遭ったトルコ、代替品をロシアに求める可能性」
ドナルド・トランプ大統領は、トルコがロシア製S-400対空ミサイル防衛システムの第1基を受け入れたことから、同国向けのF-35最新鋭ステルス戦闘機の供給計画を撤回する決定をした。
米国は以前から、同システムの最新鋭レーダーによって、F-35ステルス性能情報が危険に曝されるとして、トルコに対して同システムの導入を思い止まるよう警告していた。...
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7月17日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「トランプ大統領によるF-35戦闘機供給撤回に遭ったトルコ、代替品をロシアに求める可能性」
ドナルド・トランプ大統領は、トルコがロシア製S-400対空ミサイル防衛システムの第1基を受け入れたことから、同国向けのF-35最新鋭ステルス戦闘機の供給計画を撤回する決定をした。
米国は以前から、同システムの最新鋭レーダーによって、F-35ステルス性能情報が危険に曝されるとして、トルコに対して同システムの導入を思い止まるよう警告していた。
しかし、第1基の配備が現実的になったことから、トランプ大統領が大統領権限で、トルコ向け供給計画を撤回したものである。
ただ、この決定にタイイップ・エルドアン大統領は驚愕した。
何故なら、6月末に主要20ヵ国首脳会議(G-20大阪サミット)で会談した際、トランプ大統領がウラジーミル・プーチン大統領やエルドアン大統領を前にして、貿易関係継続は問題がないと発言していたからである。
トランプ大統領の決定を受けて、トルコ外務省は7月17日晩、同決定は間違いであり、米国防総省の懸念(ステルス技術の漏えいリスク)を否定し、また、米・トルコ間関係に悪影響をもたらすと警告した。
トルコは、当初F-35戦闘機を100機も大量成約していたが、背景には、国境・領空問題で対峙するギリシャもF-35を導入することになっていることが挙げられる。
すなわち、両国とも現行のF-16戦闘機保有で留まっていれば、力関係は拮抗するが、一方のみが最新鋭戦闘機を導入するとなると、他方は明らかに不利となるからである。
トルコ中東工業大学の国際関係論のフセイン・バグチ教授は、トルコがF-35の代替品を中国かロシアに求めることになるかも知れないが、これによってトルコは西側から東側に近づくことを意味することになるとする。
特にロシアはかねてより、Su-57最新鋭戦闘機の売り込みに注力しており、ロシア側としても、S-400システムと同様、Su-57をトルコ向けに供給する絶好の機会とみているはずである。
しかし、軍事専門家は、S-400システムのみならず、Su-57戦闘機までトルコが導入するとなると、ロシアを仮想敵としているNATOの加盟国であるトルコの立場は非常に悪くなると指摘する。
すなわち、トルコは1946年にソ連(共産圏)と対峙することとし、1949年に正式に西側諸国によって結成されたNATO加盟を決定しているが、そのときと同じくらいに重要な岐路に立つことになるからである。
7月18日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「トルコ軍事関係者、エルドアン大統領がロシア製Su-35戦闘機導入を検討中と証言」
ロシア重工企業のロステック社のセルゲイ・ケメゾフ最高経営責任者は7月18日朝、もしトルコが望むなら、同社はSu-35戦闘機を供給する用意があると表明した。
トルコ軍事関係者によると、米国のF-35最新鋭戦闘機供給の撤回措置に遭ったエルドアン大統領が、代替品としてロシア製Su-35戦闘機の導入を検討しているという。
なお、ロシアとトルコは2017年12月、ロシア製S-400対空ミサイル防衛システム2基を25億ドル(約2,700億円)で売買する契約を締結していた。
この決定に対して米国は、NATO加盟国による防衛システムと相容れないとして、トルコ側決定を非難していた。
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