人民元の切り下げがもたらした衝撃(8月23日)
今月5日、為替市場で人民元対USドルのレートは7元を割り込み、市場関係者の間に大きな衝撃が走った。この衝撃は思わぬところまで波及し、台湾人の投資パターンを変えてしまう可能性も出てきた。
昨日付けの台湾「鏡週刊」の報道によると、「僅か3日間で200億元(3000億円に相当)の資産が蒸発してしまった」という。
過去10年余り、人民元資産が台湾の投資家の一番人気の金融商品となっていて、2653億元(約4兆円)の人民元通貨の預金残高を保有している。...
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今月5日、為替市場で人民元対USドルのレートは7元を割り込み、市場関係者の間に大きな衝撃が走った。この衝撃は思わぬところまで波及し、台湾人の投資パターンを変えてしまう可能性も出てきた。
昨日付けの台湾「鏡週刊」の報道によると、「僅か3日間で200億元(3000億円に相当)の資産が蒸発してしまった」という。
過去10年余り、人民元資産が台湾の投資家の一番人気の金融商品となっていて、2653億元(約4兆円)の人民元通貨の預金残高を保有している。11年前の3149億元(約4.73兆円)をピークとして年年々減少しているものの、人気の高さが相対的に維持されていると言える。しかし、8日までの3日間で人民元の資産価値が3000億円も下落し、下げ幅は2%を上回った。この苦い果実を嘗めているのは人民元通貨の定期預金者であるが、定期預金以外に、中国関連ファンドや株、海外人民元債券、人民元ボンドなどを含むと、人民元の為替レートによるリスクが高くなっている。この状況がさらに悪化すると、投資家は為替差損と金利差益のバランスの見直しを容赦なく迫られることになる。
ただし、人民元は米ドルに対しては7元台を割り込んだが、人民元は台湾ドルに対しては、小幅ながら上昇している。それに、現在の人民元預金の利率は依然として高く、2.5~3%で推移している。これについては、外国為替の達人と呼ばれている台湾の経済アナリストの李其展自氏の言葉を借りると、「手元に人民元通貨の定期預金がある者は、台湾ドルも軟調傾向なので、今のところは大きな損はないはずだが、為替差損が利益を食ってしまっては意味がないから、一旦立ち戻ったほうが良く、手元に人民元を持っていない者は、急いで買わないで9月初めの米中貿易戦の最新結果を見て決めた方が良い」という。
一方、中国はこのような人民元不安説の広がりを警戒しているようだ。今朝の環球時報は、「人民元、今の世界で最も安定な通貨の一つ」との記事を掲載した。元中国商務部研究院長の霍建国氏によるこの記事の論点は以下の四つからなっている。
1.中国経済の安定成長は人民元レートの安定を支えている。
2.全面開放の構造改革の加速化により、人民元レートの安定性へと導いている。
3.マクロ経済政策の安定性が人民元レートの安定性を支えている。
4.予想管理の強化により、制御の効いた浮動制為替レートになっている。
中国商務部の元幹部という立場からすれば、人民元の更なる切り下げがないと見るのは当然かもしれないが、世界からは今、厳しい視線が送られている。
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台湾軍VS中国解放軍(8月22日)
米国務省は火曜日、台湾にF-16 V戦闘機66機を含む80億ドルの軍事装備を売却することを正式に発表した。国会で承認手続きを経て実施されることになっている。中国はこれに猛反発し、昨日付けの環球時報の社評で「中米国交樹立40年来の最高額の武器売却で、中米関係及び台湾海峡情勢に新たな衝撃を加えることが必至」と、警告を繰り返している。
社評は、「蔡英文当局は今回の軍備購入を大きな政治的得点として、米国よる軍事保護が期待できることを台湾の人々にアピールし、次の選挙で再選できるように、最大限に利用しようとしているが、強力な解放軍の前で台湾軍は大体軍事上の意義を成さなくなり、はっきり言って、「儀仗隊」のようなものに過ぎない。...
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米国務省は火曜日、台湾にF-16 V戦闘機66機を含む80億ドルの軍事装備を売却することを正式に発表した。国会で承認手続きを経て実施されることになっている。中国はこれに猛反発し、昨日付けの環球時報の社評で「中米国交樹立40年来の最高額の武器売却で、中米関係及び台湾海峡情勢に新たな衝撃を加えることが必至」と、警告を繰り返している。
社評は、「蔡英文当局は今回の軍備購入を大きな政治的得点として、米国よる軍事保護が期待できることを台湾の人々にアピールし、次の選挙で再選できるように、最大限に利用しようとしているが、強力な解放軍の前で台湾軍は大体軍事上の意義を成さなくなり、はっきり言って、「儀仗隊」のようなものに過ぎない。多くの軍事分析では、大陸側が武力攻撃に踏み切れば、解放軍が台湾を占領するのは「時間」の問題だと指摘するように、どんな武器を買おうが、もう関係ない。台湾にとっての安全は、むやみに振る舞ったり、間違った道を選んだりすることによって、解放軍に決定的な行動を取らせる極端な条件を作り出さないことだ」と、トーンを一方的に上げている。
また、社評は、「台湾は二つの大きなトラップに陥ってはいけない」と、中国が一番我慢できないとされる二つの禁断点について「トラップ」という表現で言及した。「一つは法理台独。なし崩すように台湾独立の方向に行くことは自分へのリスクの積み上げとなる。もう一つは、米国の中国抑止戦略の駒となること。台湾がそうなれば、絶対に死の道に向かう。米国は台湾を保護できないし、大陸側は必ず目の前のこのくさびを抜くことになるから」と主張した。
さらに、社評は、台湾軍に対する警告と思わせる文言を盛り込み、「台湾当局が米国の対中戦略に協力することによって、台湾海峡の平和維持のコストが大幅に増加すると、大陸は平和統一政策を見直し、他の選択肢を真剣に考慮することになる。台湾のように、今の米中貿易戦のハードな時期に米国から大量の戦闘機を買ったなら、米国の攻めにアシストをすることになる。このアシストの悪質さは、これらの軍用機が台湾海峡地域に新たな複雑さを加えることになる。台湾当局はこの武器売却契約書をもらって喜んでいるようだが、中米戦略のゲームに巻き込まれる警戒心と恐怖心がなければ、台湾がアメリカ戦略の捨て石になって深いトラップに陥ってしまいかねない。台湾当局が自分勝手に行動すれば、大陸は台湾に対して軍事行動を取ることがあり得る。軍事行動の目標は、台湾解放だったり、台湾独立の勢力に対する抑止と警告だったりする。解放軍は台湾軍に対して強力な軍事的懲罰を行う可能性も高くなる」とも指摘する。
「解放軍」という言葉が頻繁に出ているこの社評だが、考えてみると、1世紀近く前に中国国内戦争で戦った二つの軍隊は昔の名前を残したまま存在していることが不思議で仕方がない。台湾の軍隊は、「国軍」といって70年前に内戦に敗けた為、海に渡り、西側の武器提供を受けて、狭い島を守っている。一方、先の内戦に勝利した大陸の軍隊は、「解放軍」といって、下剋上を果たした後も軍事近代化を掲げて軍事力を強化し続けている。
この国軍VS解放軍の構図は人々の記憶から消え掛けているが、再び浮き彫りになる日が来るのだろうか。
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英国総領事館職員が拘束・中国警察に解放求める(8月22日)
拘束されたのは香港にある英国総領事館の職員で香港の市民権を持つ男性だが、今月8日、隣接する中国本土の深センに出張して戻る途中、連絡が取れなくなった。
中国外務省はきのう警察が男性を治安に関する法律違反で拘束したと明らかにした。
香港ではきのう男性の友人やSNS上の呼びかけで集まった若者など数十人が総領事館の前に集まり英国政府に対して男性の解放に向けて行動を起こすよう求める宣言を読み上げ、総領事館に入り担当者に請願書を渡した。
あれから22年、7割の香港若者が「中国人」と自認しないその訳(8月21日)
台湾メディアのTVBSは昨日、2か月以上続いている香港での抗議活動を「香港若者による反抗」とし、18日に170万人が抗議集会に参加したことや、参加者は20代、30代の若者がほとんどであることを、現場で取材した生の声を交えながら、次のように報じた。
香港大学が今年6月に行った調査によると、18歳から29歳の回答者のうち69.7%が「香港人」と回答し、香港が1997年に中国に返還されて以来の記録を更新した。...
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台湾メディアのTVBSは昨日、2か月以上続いている香港での抗議活動を「香港若者による反抗」とし、18日に170万人が抗議集会に参加したことや、参加者は20代、30代の若者がほとんどであることを、現場で取材した生の声を交えながら、次のように報じた。
香港大学が今年6月に行った調査によると、18歳から29歳の回答者のうち69.7%が「香港人」と回答し、香港が1997年に中国に返還されて以来の記録を更新した。中国人と自認する若者の比率は僅か0.3%で、1997年以来の最低水準となった。
中学生の一人は、「林鄭長官は売国奴だ」と言った。もう一人の中学生は、「香港の未来のために、自分の未来を賭けた」とも述べた。また、11年生の中学生は、「学校の期末試験があっても、街に出て、友達とグループを組んで、抗争活動に参加しなくちゃ」という。また、別の中学生は、「デモが許可されれば、すぐ仲間に伝え、デモ行進のグループを作るようにする」と言った。
逃亡犯条例は香港の若者の強い憤りを引き起こした。「一国二制度、50年間変らぬ」と言った筈なのに、どこへと消えてしまったのか?
「経済学者」の北京駐在局長の任大偉氏は、「2047年はいずれはやって来るが、しかし、今ではない。香港の人々はこのことを我々に教えてくれた」と述べた。
ある反中抗議者は、「怒りを感じる。思い無力感もある。何も達成できなかった。催涙ガスの弾を食らった以外は」と嘆いた。
18日は同じく百万人規模の人が集まったが、流血事件にならなくて、逮捕者もいない週末となった。主催者側の統計では170万人の参加となっているが、6月の2百万人という記録には及ばなかった。とはいえ、反中エネルギーが退いてはいないことが実証された。
香港の林鄭長官は、「これが社会安定の回復と暴力との決別の始まりとなることを心から願っている」と、自ら18日の集会に一定の評価を示した。同時に、市民と対話するプラットフォームを新たに設立すると発表した林鄭長官は、「すぐに行動し、対話のプラットフォームを作り、今日の香港のために活路を見出す」と約束した。
どのようにして早く市民の不満を静めることができるか、林鄭長官とその政府の能力が今問われている。今年は中国の国慶節70周年に当たり、百万人規模の香港人が街頭に出ていることが容認できなくなるかもしれない。親中派議員の田北辰氏は、「会話はいいが、どうやって話すか、彼女の腕次第だが、とにかく8月31日になってもこのように多くの人が出てきて、その後暴力が現れれば、9月にも中央政府による介入があると思う」と不気味に語った。
さらに、TVBSは、伝聞として「北京当局は10.1国慶節の1ヶ月前を、「逃亡犯条例」改正論争の解決の最終期限として定めていること」を示唆する一方、締めくくりに「香港がんばれ」という香港の群衆の声及びある大学生の「我々は香港が引き続き自由を享受できることを望んでいる。毎日びくびくして暮らすことのないように」という言葉を引用して香港市民にエールを送っている。
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中国:貿易戦争と香港問題を関連させたとして米国を非難(8月20日)
トランプ大統領が18日、香港での抗議活動に「中国が天安門事件のときのように武力を行使するならば、取引はできなくなる」と述べたことに対し、19日の「環球時報」は社説で、貿易戦争と香港問題を関連させるのは、米国の思い込みであるとして、米国を非難した。
今や香港問題は習近平主席にとって、貿易戦争よりも頭が痛い問題になっている。中国の武警を投入すれば、ネット上でそのニュースはたちまち全世界をかけ回ってしまうので、うかつには武警を動員することはできない。...
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トランプ大統領が18日、香港での抗議活動に「中国が天安門事件のときのように武力を行使するならば、取引はできなくなる」と述べたことに対し、19日の「環球時報」は社説で、貿易戦争と香港問題を関連させるのは、米国の思い込みであるとして、米国を非難した。
今や香港問題は習近平主席にとって、貿易戦争よりも頭が痛い問題になっている。中国の武警を投入すれば、ネット上でそのニュースはたちまち全世界をかけ回ってしまうので、うかつには武警を動員することはできない。せいぜい深圳でデモ鎮圧の訓練をして、いつでも介入できる体制を香港に見せつけることができるだけである。最悪の場合はデモの暴徒化を扇動させ、武警の介入を図ろうとするかもしれない。さりとて「逃亡犯条例」を策定した責任をとらせて長官を辞任においこめば、選挙をしなければならない。いまや運動は「逃亡犯条例」撤回から人権や普通選挙を要求する運動にもなっている。当然長官選挙も普通選挙で行うようにとの運動が激しくなることが予想される。
また香港の「一国二制度」が有名無実化すれば、台湾との統一にも影響を与える。「一国二制度」があったならば、統一でもよいかと考えていた人々も、「一国二制度」が維持できなければ、中国との統一を願わないだろう。
台湾の統一は歴代の中国主席の悲願であり、建国100周年を見据えてその道筋をつけたいと思っていた習近平主席の思惑は風前の灯になっている。
中国は、米国が香港住民に対し、ネット上に偽情報を流したと非難し、一方米ツィッターは中国が国家ぐるみで情報を操作したとして、不正アカウントを凍結したという。
中国にとって抜き差しならない香港問題であるが、香港問題がからめば、中国としては貿易戦争でますます米国に譲歩できなくなる。
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