台湾海峡危機・日本は中国にどう向き合うべきか(1月8日)
中国が急成長し始めたのは天安門事件を経た90年代から2010年ぐらいにかけてである。中国は世界の力を借りてWTOなどに加盟することによって着々と力を伸ばしてきた。そんな中国に対し、日本も積極的に援助してきた。現在中国が世界第二位のGDPを持つ国となり、2030年にも米国を抜いて世界第一位の経済大国となろうとしている。その一方で軍事的にも力をつけてきた中国の攻勢が国際社会の脅威になってきている。
こうした状況に対し今後の10年間、日本は、日米関係を基軸としつつ、中国との関係を決めていくべきだという声が日本国内でどんどん大きくなってきており、この流れの延長線上に中国脅威論が位置している。...
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中国が急成長し始めたのは天安門事件を経た90年代から2010年ぐらいにかけてである。中国は世界の力を借りてWTOなどに加盟することによって着々と力を伸ばしてきた。そんな中国に対し、日本も積極的に援助してきた。現在中国が世界第二位のGDPを持つ国となり、2030年にも米国を抜いて世界第一位の経済大国となろうとしている。その一方で軍事的にも力をつけてきた中国の攻勢が国際社会の脅威になってきている。
こうした状況に対し今後の10年間、日本は、日米関係を基軸としつつ、中国との関係を決めていくべきだという声が日本国内でどんどん大きくなってきており、この流れの延長線上に中国脅威論が位置している。米国の国力が低下する一方で軍事的にどんどん膨張していく中国軍に対峙するためにも、日本はこれまで以上の軍事的負担をせざるを得なくなっている。
7日にテレビ会議形式で行われた2プラス2外務防衛閣僚会議で、日米は対中抑止に大きく踏み出した。同会議で日本は「敵基地攻撃能力」を念頭にかなり踏み込んだ形で日米同盟の役割や任務を進化させる方針を打ち出した。
2024年には台湾総統選挙が行われるが、中国が擁立した候補者が蔡英文再選を阻止できなかった場合は、台湾への軍事侵攻もありうるのではないかと今、米国のシンクタンクでは真剣に考えられている。
台湾海峡危機が生じた場合、地理的に近い日本が真っ先に中国との矢面に立たされる可能性が出てくるが、常識的に考えれば現時点で日本の3倍のGDPを持ち、日本の軍事費の5.5倍の中国に日本は勝てるはずもなく、このシナリオは日本にとって避けるべきシナリオといえる。
台湾海峡危機の際に日本が力を発揮できるシナリオは米中の間を取り持つことである。日本は中国と同じ東洋の国である一方、歴史的にも付き合いが米国より長く、中国のことを少なくとも米国よりはよく知っているはずである。こうした歴史的知見を活用して日本が中国と交渉し台湾海峡危機を防ぐことは決して不可能ではないかも知れない。
現実的な展開は、台湾を向こう10年間ほど、かつての香港のような1国2制度に持っていくことかも知れない。その際に1989年の天安門事件で各国が中国に対し制裁をかけた時に、日本だけが制裁を解除し、中国に手を差し伸べたという事例がひとつの解となるかも知れない。歴史的大局観を持ち、「中国という存在」に真摯に向き合えば難敵とも上手く付き合えるかも知れない。
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オミクロン禍における北京五輪(1月8日)
北京五輪まであと27日を切った。氷をイメージした宇宙服を着ているパンダ「ビンドゥンドゥン」が大会イメージキャラクターとしてお披露目され、2008年北京五輪開会式を担当したチャンイーモウが今回の開会式も演出することが発表された。
しかし、未だにチケットの販売方法さえ決まっておらず、中国国内でも北京五輪が盛り上がっているようには全くみえない。外交的ボイコットによって世界の要人が来ないことや、北米プロアイスホッケーリーグがオミクロン株の拡大を受け、選手の参加を取りやめた影響も大きい。...
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北京五輪まであと27日を切った。氷をイメージした宇宙服を着ているパンダ「ビンドゥンドゥン」が大会イメージキャラクターとしてお披露目され、2008年北京五輪開会式を担当したチャンイーモウが今回の開会式も演出することが発表された。
しかし、未だにチケットの販売方法さえ決まっておらず、中国国内でも北京五輪が盛り上がっているようには全くみえない。外交的ボイコットによって世界の要人が来ないことや、北米プロアイスホッケーリーグがオミクロン株の拡大を受け、選手の参加を取りやめた影響も大きい。
しかし、最大の要因は大会に向けて売り物にする予定であったゼロコロナがオミクロン株の出現によって失敗し、ウイズコロナになってしまったことである。
イアンブレマー率いる米国の調査会社・ユーラシアグループは今年の世界の最大のリスクとして「中国のゼロコロナ政策の失敗」を挙げているが、オミクロン株さえ出てこなければ中国は中国式のゼロコロナ政策で感染を抑え込んだというメッセージを北京五輪で大々的に打ち出す予定であった。不運にもここで中国はつまずいてしまった。
WHOの緊急対応責任者マイク・ライアン氏は「競技のため講じられている対策はとても厳しく強力で、現時点で感染のリスクは高まらないと考えている」と中国に助け船を出した。
中国当局は「バブル方式」を徹底する方針を打ち出してうまく抑え込んでいるように必死に見せているが、中国式の徹底的なゼロコロナ政策は選手や関係者の士気を削いでいるように見える。
感染者が1900人を超えるなど感染が急拡大している西安では約1300万人の全市民を対象に原則外出の禁止措置を出した。
この措置を破り、無断外出した市民を見せしめのため市中を引き回しにしている映像が流されたが、ウイグル族の人権弾圧を彷彿させものである。
こうした強い抑え込みの映像を発信されること自身が世界に対し中国の悪いイメージを拡散していることに中国は気づいていない。
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中国・企業の国外株式上場に規則(1月5日)
中国政府が発表した新たな規制は、今後の中国企業の資金調達にも影響を与えそう。
中国政府は4日、中国企業が国外の株式市場に上場する際の新たな規制を来月15日に施行すると発表した。
この中では、100万人を超えるユーザーの個人情報を保有するIT企業などに対して、保有する大量のデータが外国政府に利用されるなど国家の安全に影響が出ないか、当局の審査を義務づけるとしている。
背景には、米中の対立が続く中、中国企業が保有するデータが米国などに流出することへの警戒感があると指摘されている。...
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中国政府が発表した新たな規制は、今後の中国企業の資金調達にも影響を与えそう。
中国政府は4日、中国企業が国外の株式市場に上場する際の新たな規制を来月15日に施行すると発表した。
この中では、100万人を超えるユーザーの個人情報を保有するIT企業などに対して、保有する大量のデータが外国政府に利用されるなど国家の安全に影響が出ないか、当局の審査を義務づけるとしている。
背景には、米中の対立が続く中、中国企業が保有するデータが米国などに流出することへの警戒感があると指摘されている。
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RCEPの裏に隠された中国の作戦(1月3日)
中国共産党政権が対外的に公表している公式文書に通商の国際ルール形成へ積極的に中国が関与していくという文言が増えてきている。習近平国家主席自身が通商ルール策定に関し並々ならぬ意欲を抱いていることは間違いない。そのうちの最も大きなものが1日に発効したRCEP(東アジア地域包括的経済連携)である。
RCEPは世界のGDPのおよそ3割を占める巨大貿易圏で、日本や中国、韓国、ASEANなど15か国が参加している。...
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中国共産党政権が対外的に公表している公式文書に通商の国際ルール形成へ積極的に中国が関与していくという文言が増えてきている。習近平国家主席自身が通商ルール策定に関し並々ならぬ意欲を抱いていることは間違いない。そのうちの最も大きなものが1日に発効したRCEP(東アジア地域包括的経済連携)である。
RCEPは世界のGDPのおよそ3割を占める巨大貿易圏で、日本や中国、韓国、ASEANなど15か国が参加している。中国がRCEPを通じて東南アジアなどへの影響力の拡大を図ろうとしている戦略なのは間違いない。
表向きには域内においてインフラやIT関連、製造業などさまざまな業種の自国企業の進出を促し成長につなげていくと謳っているが、実はRCEPの取り決めはザル法で抜け穴だらけと言われており、中国の提唱する自由貿易に限界があることを図らずも示すものとなっている。
TPPは電子商取引のルールを厳格に定めていて、例えば「ソフトウエアのソースコードの開示を要求してはならない」と規定されているが、RCEPではこの部分が「今後の対話の対象とする」としか書かれていない。
そのため、中国が外国の企業にソースコードの開示を迫ることなども理論上可能となっている。その一方で外国企業が中国国内で集めたデータは中国の外に持ち出すことができないなど、中国のやりたい放題になる可能性が高い。
中国は自分達にとって都合のよいルール「中国標準」を「国際ルール」にしようとしている。RCEPで加盟国に「中国標準」を「国際標準」として押し付けていくことによって同じルールをこれから参加しようと目論むTPPにも適用していくという青写真を描いているのだろうか。
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北京五輪での中国メッセージは?(12月25日)
北京五輪開催まであと5週間を切った。人権問題で躓いたかのように見える北京五輪だが、中国はどのように立て直しを図るのか。
まずアングロサクソン系の国々による外交的ボイコットの影響だが、大会は粛々と執り行われることになるとみられる。2007年の北京五輪の際も直前にチベット問題でボイコットが叫ばれたが、何事もなく開催された。
中国は「未来をシェアしよう」をスローガンに、アスリートや中国の国民的芸能人などを前面に立てることによって、政治色を薄め、何も問題はなかったかのよう振舞うと考えられる。...
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北京五輪開催まであと5週間を切った。人権問題で躓いたかのように見える北京五輪だが、中国はどのように立て直しを図るのか。
まずアングロサクソン系の国々による外交的ボイコットの影響だが、大会は粛々と執り行われることになるとみられる。2007年の北京五輪の際も直前にチベット問題でボイコットが叫ばれたが、何事もなく開催された。
中国は「未来をシェアしよう」をスローガンに、アスリートや中国の国民的芸能人などを前面に立てることによって、政治色を薄め、何も問題はなかったかのよう振舞うと考えられる。
大規模PCR検査、AIを活用し国内の新型コロナウイルスの感染を科学と医学、テクノロジーの力を使いいち早く抑え、経済的回復をどの国よりも早く実現したことをアピールするだろう。
より良い明日に向けて世界が協力し合うことの必要性を訴え、ウイグル族やチベット族、モンゴル族が手をつなぎながら笑顔で登場する場面さえ演出するかもしれない。
北京五輪の基本的な価値観とビジョン、世界の結束、平和、進歩を追求するという荘厳なメッセージを宇宙やドローン、大画面の映像など、ハイテク技術を見せつつイメージアップを図ることであろう。
さりげなくデジタル人民元の使い方、アプリからのダウンロード方法などが大画面に流れ、デジタル人民元のお披露目を図ることも予想される。中国版宇宙ステーションに滞在する中国人女性宇宙飛行士からの映像がリアルタイムで会場に配信され女性が活躍する国・中国というイメージを強調するかも知れない。
最後に「中国に皆さんぜひ観光に来てください」とパンダのキャラクターが呼びかけるという演出も忘れずに行うだろう。人権問題で中国批判をしてきた人々にとってはある意味、納得のいかない大会となるかもしれない。
ともあれ、注目の「北京冬季オリンピック」は年が明ければ、すぐに開催される。
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