習国家主席;世界経済フォーラムで”冷戦思考”放棄の必要性をアピール【米・インドメディア】(2022/01/19)
世界経済フォーラム(WEF、注1後記)年次総会が1月17~21日の間、オンライン形式で開催されている。そこで基調演説を行った習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)は、(自国のことを棚に上げて)世界各国は今こそ“冷戦思考”を捨て去り、かつ、敵対、覇権主義及び弱い者いじめを止める必要があるとアピールした。
1月17日付米
『タイム』誌(1923年発刊の世界初のニュース誌):「習近平国家主席、WEF年次総会において“冷戦思考”を止めて協力体制構築を強調」
習近平国家主席は1月17日、オンライン形式で開催されているWEF年次総会において、
米国を暗に批判する形で、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題等に打ち勝つため、“冷戦思考”を止めて世界は一致協力すべきだと強調した。
同国家主席は、その一環で中国は世界の国々向けにCOVID-19ワクチン10億回分を追加で配布するとも言及した。...
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1月17日付米
『タイム』誌(1923年発刊の世界初のニュース誌):「習近平国家主席、WEF年次総会において“冷戦思考”を止めて協力体制構築を強調」
習近平国家主席は1月17日、オンライン形式で開催されているWEF年次総会において、
米国を暗に批判する形で、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題等に打ち勝つため、“冷戦思考”を止めて世界は一致協力すべきだと強調した。
同国家主席は、その一環で中国は世界の国々向けにCOVID-19ワクチン10億回分を追加で配布するとも言及した。
更に、気候変動対策、経済発展等にも努力していくとも付言した。
同国家主席は、COVID-19感染問題が勃発した2020年初め以降海外渡航をしていないが、これまで中国は、世界120ヵ国以上に20億回分余りのCOVID-19ワクチンを提供したとした上で、今後、アフリカ向けに6億回分、また、東南アジア向けに追加の1億5千万回分の無償提供を含めて、世界に10億回分を提供するという。
これに対して、国連主体のCOVAXファシリティ(注2後記)がこれまでに途上国に配布できたCOVID-19ワクチンは10億回分に留まっている。
習国家主席の冒頭の発言は、台湾、知的財産、国際貿易、人権及び南シナ海領有権問題で、米国との緊張関係が高まっている状況を踏まえてなされたものである。
そこで同国家主席は、“世界は今こそ冷戦思考を放棄して平和共存の道を選ぶべきだ”とした上で、“覇権主義や弱い者いじめ等からは何も生まれない”とした。
更に、“他国を犠牲にして自国のみの繁栄を追及することは止め、平和的発展及び相互利益の享受こそが人類が取るべき正道だ”とも強調した。
一方、インドのナレンドラ・モディ首相(71歳)は、今後25年間の経済成長を“環境を重視し、かつ長期持続可能で信頼性のあるものにする”とした上で、太陽光発電への大規模投資を踏まえて2070年までにネットゼロ・エミッション(温室効果ガス排出を正味ゼロとすること)を達成すると表明した。
しかし、国連のアントニオ・グテーレス事務総長(72歳、元ポルトガル首相)は、中国及びインドが最大の石炭消費国であるとの懸念を表明した。
同事務総長は、“温室効果ガス排出量は絶対減少させなければならないのに、依然増え続けている”とし、例えば米国のクリーンエネルギー技術を中国に提供する等の“連携”が必須だと強調した。
なお、ドイツ、コロンビア、日本の首脳も、1月21日までのWEF総会開催期間中に基調演説を行う予定である。
1月18日付インド『アジア・ニュース・インターナショナル』(1971年設立の通信社):「習国家主席、敵対や“覇権主義及び弱い者いじめ”に反対し、“冷戦思考”も放棄すべきだと発言」
習国家主席は、今週オンライン形式で開催されているWEF年次総会で、“今、国際社会では憎しみと偏見に満ち溢れている”とした上で、“冷戦思考を捨て去り、平和的共存や相互利益の追求に注力する必要がある”と発言した。
また、“敵対するだけでは何ら問題解決に繋がらないことは歴史が証明している”とし、“異なる国もその市民もお互いに違いがあることを尊重し、その上で共通の認識の下で互恵・ウィンウィンの関係を実現することが肝要である”と強調した。
更に、“対立ではなく対話を、除外ではなく包括(一体)を、そして一国主義・保護貿易・覇権主義・権力政治に断固対抗していく道を選択すべきである”とも付言した。
(注1)WEF:経済、政治、学究、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界、地域、産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組むことを目的とした国際機関。1971年に経済学者クラウス・シュワブにより設立。スイスのコロニーに本部を置き、同国の非営利財団の形態を有している。スイスのダボスで開催される年次総会「ダボス会議」が特によく知られており、約2,500名の選ばれた知識人やジャーナリスト、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し、健康や環境等を含めた世界が直面する重大な問題について議論する。
(注2)COVAXファシリティ:COVID-19ワクチンへの公平なアクセスを目的としたグローバルな取り組み。ワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVIアライアンス)、世界保健機関(WHO)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)などが主導して2020年4月立ち上げ。
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ロシア;北方領土沖のロシア太平洋艦隊軍事演習非難の岸田新首相声明を一蹴【米・ロシアメディア】(2021/10/13)
ロシア軍所属の太平洋艦隊が10月11日、北方領土沖の日本海で軍事演習を実施した。これに対して、岸田文雄新首相(64歳)が、北方領土は日本固有の領土だとして当該演習を非難する声明を発信した。しかし、ロシア連邦国防・安全保障委員会代表は、日本側の主張は歴史の歪曲であり、両国間に領土問題など存在しないとして首相声明を一蹴している。また、ロシア大統領府も正式に反論声明を発信している。
10月12日付米
『アメリカン・ミリタリー・ニュース』(2015年創刊の軍事・外交専門ニュース):「ロシア艦船、日本海沖でミサイル発射訓練実施」
ロシア軍所属の太平洋艦隊が10月11日、日本海沖で対空ミサイル発射訓練を実施した。
ロシア『タス通信』が報道した同艦隊の声明文によると、“ミサイル巡洋艦「バリャーク」(1989年就役)及び対潜駆逐艦「アドミラル・トリーブツ」(1983年就役)が、夏季軍事演習計画の一環で、日本海において高速飛行体を標的としたミサイル発射訓練を実施した”という。...
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10月12日付米
『アメリカン・ミリタリー・ニュース』(2015年創刊の軍事・外交専門ニュース):「ロシア艦船、日本海沖でミサイル発射訓練実施」
ロシア軍所属の太平洋艦隊が10月11日、日本海沖で対空ミサイル発射訓練を実施した。
ロシア『タス通信』が報道した同艦隊の声明文によると、“ミサイル巡洋艦「バリャーク」(1989年就役)及び対潜駆逐艦「アドミラル・トリーブツ」(1983年就役)が、夏季軍事演習計画の一環で、日本海において高速飛行体を標的としたミサイル発射訓練を実施した”という。
同報道によると、“実施されたのは10月11日で、計10発のミサイルを発射した”という。
ロシア軍は極東国防の一環で、定期的に海上演習を行っているが、今回の軍事訓練は、岸田文雄新首相が誕生して間もなくの実施となる。
日本とロシア両国は戦争状態にないが、第二次大戦終結以降何十年もの間、クリル諸島(日本呼称千島列島)の帰属問題が未解決のままとなっている。
日本がかつて領有していたクリル諸島は、戦後すぐに旧ソ連が収奪し、以降旧ソ連及びロシアが実効支配してきている。
そしてこの問題が未解決なこともあって、両国間で未だ平和条約が締結されていない。
岸田新首相は10月12日、クリル諸島南部(日本呼称北方領土)は日本固有の領土だと主張して、北方領土沖の日本海でのロシア軍演習を非難した。
インドの『アジア・ニュース・インターナショナル』(1971年設立)によると、同新首相は、“領土問題は次世代に先送りすべきではなく、可及的速やかに解決する必要がある”とし、“その上で正式な平和条約を締結したい”と述べたとする。
しかし、この発言に対してロシア高官がすぐさま、歴史の歪曲だと非難する声明を出した。
ロシア連邦国防・安全保障委員会のビクトル・ボンダレフ委員長(61歳、元ロシア空軍上級大将)が『タス通信』のインタビューに答えて、“岸田首相の大衆迎合主義的な発言は、日本国内の支持を得ようとしただけでなく、ロシアを批判したり攻撃したりする友好国を歓迎する米国政府におもねるものだ”と非難した。
同委員長は更に、“日本の首相がクリル諸島南部の領有権を何度主張しようとも、現状は全く変更されることはない”とし、“かかる発言は歴史の歪曲と解釈される”と強調した。
その上で、“何故なら、同領有権は戦勝国側帰属に変更されたからであり、従って、第二次大戦後の結果に基づく現状は、討議する必要も、また変更の余地も全くない”と断言した。
同日付ロシア『タス通信』:「ロシア政府、クリル諸島南部はロシア領土だと強調」
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官(53歳)は10月12日、岸田首相がクリル諸島南部の領有権問題に言及した声明に対して、同諸島は全てロシアに帰属する領土である、と強調した。
同報道官は、“明らかにロシア領土であるので、首相のかかる発言は全く同意できない”と付言した。
その上で同報道官は、“ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)が、かねてより両国間の懸案事項について、ひとつひとつ関係閣僚間で協議し、政治的解決を図る用意があると表明してきた”と言及した。
しかしながら、同首相は10月12日、衆議院本会議場において、クリル諸島南部の領有権を主張し、“将来世代に先送りせずに速やかに解決すべきだ”と唐突に発言していた。
なお、ロシア外務省はこれまで幾度となく、国際法に基づいて同島は正式にロシアに帰属することになっており、疑問を差し挟む余地はないと発信してきている。
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