10月13日付Globali「お騒がせドゥテルテ大統領、今度はEU政治家らと麻薬撲滅運動のあり方で衝突」で触れたとおり、(かつてフィリピンのトランプと揶揄された)ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、欧州連合(EU)所属の政治家からの非難に対して、在フィリピンEU外交官の24時間内の退去を宣言するに至り、そのお騒がせ振りは収まりそうもない。そしてこの度、本家米国のドナルド・トランプ大統領が訪比してドゥテルテ大統領と会談するに当り、トランプ氏自らが人権問題を論じる資格はないとの思惑からか、両首脳会談では麻薬撲滅運動での超法規的殺人問題については触れられない模様である。
10月16日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「トランプ大統領、初のアジア歴訪時に、超法規的殺人許容で非難されているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と会談予定」
ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は10月16日、ドナルド・トランプ大統領の初のアジア歴訪の詳細日程(11月3~14日)を発表した。その際、同大統領は、長年の同盟及びパートナーシップ関係を確認するとともに、インド及び太平洋地域での自由でかつ開かれた関係を促進することを目的とするとした。...
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10月16日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「トランプ大統領、初のアジア歴訪時に、超法規的殺人許容で非難されているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と会談予定」
ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は10月16日、ドナルド・トランプ大統領の初のアジア歴訪の詳細日程(11月3~14日)を発表した。その際、同大統領は、長年の同盟及びパートナーシップ関係を確認するとともに、インド及び太平洋地域での自由でかつ開かれた関係を促進することを目的とするとした。
フィリピンの訪問は最後の11月12~13日で、主要目的は東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットへの出席である。そして今回、初めてトランプ大統領とドゥテルテ大統領との会談予定が発表された。しかし、その会談においてトランプ大統領は、目下国際社会が問題視しているドゥテルテ大統領の麻薬撲滅運動に伴う超法規的殺人について、話題にしないとみられる。
トランプ大統領は今年5月、ドゥテルテ大統領と電話会談した際、当該人権問題で直接非難するどころか、“友好的な協議”ができたとして、ホワイトハウスへ招待するとも告げていた。ただ、今現在は、ホワイトハウスへの招待の話は具体化していない。
同日付フランス『フランス24』オンラインニュース(『AFP通信』配信):「トランプ大統領、北朝鮮問題が主題となるアジア歴訪の際にドゥテルテ大統領とも会談」
米国はアジア諸国との通商で大きな役割を演じているが、今回のトランプ大統領のアジア歴訪に当っては、北朝鮮問題に全く進展がないことから、通商問題の協議は隅に追いやられることになろう。
そして、トランプ大統領にとって、今最も物議を醸す存在となっているドゥテルテ大統領との会談が注目される。両大統領とも、度々棘のある発言をすることが共通している。ただ、ドゥテルテ大統領は、麻薬撲滅運動を通じての人権蹂躙問題が、多くの首脳や国際人権団体他から非難を浴びている。しかし、かつてトランプ大統領は、ドゥテルテ大統領を評価して、“麻薬犯罪撲滅政策で素晴らしいはたらき”をしていると述べていたことから、首脳会談でどれだけ本件に踏み込むか疑問視されている。
10月17日付フィリピン『フィリピン・タイムズ』紙:「トランプ大統領、来月アジア5ヵ国を訪問」
トランプ大統領は5ヵ国目として、11月12日にフィリピンを訪問する。主目的は、ASEAN創立50周年レセプションへの参加である。そしてまた、11月13日には、米国がASEANサミットに参加して40周年になることから、基調演説を行う予定である。
更に、同大統領はドゥテルテ大統領とも会談する予定であるが、率先する麻薬撲滅運動が国際社会から非難されているドゥテルテ氏と、果たしてどこまで協議することになるのか注目される。
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9月13日付米
『ワシントン・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、米国との同盟関係に否定的発言」
「●フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は9月13日、僅か数ヵ月前にアキノ前大統領が米国との間で合意した、南シナ海における合同パトロールの取り決めについて、今後フィリピン海軍を参加させないことにしたと表明。
●同大統領は9月12日、テロ対策で南部ミンダナオ島に巡回駐留している米軍部隊に出て行ってもらうと発言したばかり。...
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9月13日付米
『ワシントン・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、米国との同盟関係に否定的発言」
「●フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は9月13日、僅か数ヵ月前にアキノ前大統領が米国との間で合意した、南シナ海における合同パトロールの取り決めについて、今後フィリピン海軍を参加させないことにしたと表明。
●同大統領は9月12日、テロ対策で南部ミンダナオ島に巡回駐留している米軍部隊に出て行ってもらうと発言したばかり。
●アキノ前大統領時代、米国との交渉の結果、2014年以降フィリピン基地に米軍が再駐留する軍事協定を締結しているが、新大統領はこれにも異なる判断を下す恐れ。」
9月14日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)』テレビニュース:「フィリピン大統領、米国から離れて中ロから武器調達を模索」
「●ドゥテルテ大統領は、中国との軋轢を避けるため、米国との外交・防衛協定から距離を置くこととし、南シナ海における米軍との合同パトロールへの参加も取り止めると表明。
●更に同大統領は、最新の武器調達先として、25年分割返済条件を提示している中ロを対象に検討する模様。
●軍事専門筋によると、1950年代以降、フィリピンの武器輸入額の約75%が米国。
●なお、米国務省のジョン・カービー報道官は、ドゥテルテ大統領のコメントは承知しているが、何ら公式の話は出ていないとし、また、国防総省のゲーリー・ロス報道官は、新政権と緊密に協議していくとコメント。」
同日付フィリピン
『フィリピン・タイムズ』紙:「フィリピン大統領、米国との合同パトロールを拒んで中国からの武器調達に方針変更」
「●ドゥテルテ大統領は9月13日、今後、フィリピン沖12海里(約22キロメーター)の領海内を自軍だけでパトロールすることとし、それ以外の海域で米軍と合同パトロールをすることは止めると決めたと発言。
●米大統領府のジョシュ・アーネスト報道官は、フィリピン側から公式に米駐留部隊の撤退の話は聞いていないとし、ドゥテルテ大統領は共和党のドナルド・トランプ候補に似て、“いろいろ勝手なコメント”をする傾向にある人物だと理解していると表明。
●なお、フィリピン軍高官は、米軍との連携は強固で、今後も合同演習やテロ対策支援は継続するとコメント。」
一方、同日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、フィリピン訪問団に両国間連携の“新しい分岐点”にあると伝達」
「●中国外交部の劉振民(リゥ・チェンミン)副部長(副大臣に相当)は9月14日、フィリピンからの訪中団(16人の元外交官ら)に対して、両国関係は“新しい分岐点”に差し掛かっており、フィリピン側が領有権問題を“適切に”扱い、対話と相互協力によって中国との関係修復に努めるよう要請。
●同副部長は、両国の友好関係が崩れたのは前政権の様々な対応(常設仲裁裁判所への一方的提訴含めて)によるもので、新政権には中国側への歩み寄りを期待するとも発言。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「中国外交部高官、中・フィリピン連携は“分岐点”に差し掛かっているとフィリピン代表団に説明」
「●ドゥテルテ大統領が、フィリピン海軍に米軍との合同パトロールに参加させないと表明したのは9月13日だが、その直前の9月12日、中国とベトナムが、意見の相違は別にして、領有権問題で平和裏な解決に向け努力することで合意と発表。」
日本としても、対中政策を適時に、かつ勢いを持って進めようとしている最中、暴言や失言の多いフィリピン新大統領の扱いには、よほど慎重になる必要があろう。
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