既報どおり、ドナルド・トランプ前大統領(76歳)は、自身が議事堂襲撃事件扇動容疑や機密文書の無許可持ち出し等で訴追の恐れがあるだけでなく、オーナー企業に対して脱税に伴う罰金刑が科される等、窮地に追い込まれている。しかし、米共和党員は、多少悪でも強いカリスマを求めているのか、直近で行われた世論調査の結果、依然トランプが他候補を圧倒し2024年大統領選の共和党候補筆頭となっている。
1月18日付米
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、「ドナルド・トランプ、2024年大統領選共和党候補予備選で2桁以上のリード」と題して、様々なスキャンダルに見舞われているものの、依然共和党有権者からの支持率が他を圧倒して最も高いと報じている。
直近で共和党有権者に対して行われた世論調査の結果、ドナルド・トランプ前大統領が半分近くの48%の支持を集め、依然2024年大統領選共和党予備選候補の筆頭となっている。
データ収集・分析会社の『モーニング・コンサルト』(2014年設立)が1月14~16日の間、共和党有権者3,763人から得たアンケートの結果、次のように、2位となったロン・デサンティス氏(44歳、フロリダ州知事、2019年初当選)を17%も引き離している。
●ドナルド・トランプ:48%
●ロン・デサンティス:31%
●マイク・ペンス:8%(63歳、前副大統領、2017~2021年在任)
●リズ・チェイニー:3%(56歳、ワイオミング州選出下院議員、2017年初当選、反トランプ急先鋒)
●ニッキー・ヘイリー:2%(50歳、元国連大使、2017~2018年在任)
●テッド・クルーズ:2%(52歳、テキサス州選出上院議員、2013年初当選)
●グレッグ・アボット:1%(65歳、テキサス州知事、2015年初当選)
●クリスティ・ノウム:1%(51歳、サウスダコタ州知事、2019年初当選)
●マイク・ポンペオ:1%(59歳、元国務長官、2018~2021年在任)
●ティム・スコット:1%(55歳、サウスカロライナ州選出上院議員、2013年初当選)
●グレン・ヤンキン:0%(56歳、バージニア州知事、2022年初当選)
上記調査結果は、昨年12月18日時点のものと大差なく、トランプは48%を維持したが、むしろ2位のデサンティスが前回の33%より若干下げている。
ただ、今回トランプを支持した有権者のうち44%は、2番手候補としてデサンティスを支持しており、また、デサンティス支持者のうち37%がトランプを次点としている。
なお、上記のうち、2024年大統領選への出馬を表明しているのはトランプだけで、デサンティスは何も具体的なことを言っていないが、トランプはデサンティスを目の敵にして集中砲火を浴びせている。
すなわち、デサンティスが2019年にフロリダ州知事選で対立する民主党候補に僅か3万3千票差で当選できたのは、トランプ自身が推薦したお陰であって、これなくば敗退していた等々と訴え、“もしデサンティスが自身の対抗馬として大統領選に打って出るというなら、それ相応の覚悟で対応する(叩き潰すというニュアンスの表現)”とコメントしている。
一方、デサンティスは、“(共和党員同士の)内戦”を全否定しただけでなく、同前大統領を批判することも拒んでいる。
1月17日付英国『ザ・テレグラフ』紙(1855年創刊)は、「デサンティスからペンスまで、2024年米大統領選共和党候補の顔ぶれ」として、各々の立候補予定者について詳報している。
ドナルド・トランプ前大統領は昨年11月、他の誰よりも先に2024年大統領選への出馬を正式表明し、他候補の立候補を思い止まらせる作戦に出た。
しかし、正式表明は未だなれど、共和党の著名政治家の多くが立候補するとみられている。
ひとつには、トランプが立候補した場合、2024年時点で78歳の高齢となることから、共和党にとって不利と見る向きがある。
更に、2022年秋の中間選挙で、共和党が上院を牛耳られなかっただけでなく、下院でも辛勝となったことから、多くの一般有権者がトランプに反発した結果だと評価されているからである。
そこで、トランプの対立候補をみていくと、まずフロリダ州知事のロン・デサンティスが最有力候補に挙げられよう。
デサンティスが依然44歳と若く、また、同州知事選挙で競合相手の民主党候補に大差をつけて勝利していることから、特に若い有権者からは、間違いなくトランプより多くの支持を得られると見込まれている。
また、デサンティスが、ヒスパニック(メキシコ系、ラテンアメリカ系米国人)やかつて民主党員だった人からの支持を新たに取り付けていることも大きい。
いくつかの世論調査の結果では、2024年大統領選共和党候補予備選が最初に実施されるアイオワ州及びニューハンプシャー州では、デサンティスがトランプをリードしている。
次に、マイク・ペンス前副大統領。
彼の場合、2021年1月6日の議会で2022年大統領選の結果を承認する手続きの際、トランプの命令に反して任務を全うしたことから、穏健派から称賛されていることが大きい。
特に彼の回想録の中で、議事堂に乱入した急進的なトランプ支持者らから追われた際、何とか逃げおおせた経緯を述べているが、当該蛮行を止めようとしなかったトランプを“無謀”だと非難している。
ペンス自身、大統領選で共和党候補を有利に導くのはトランプよりも自分だと述べているが、一方で、トランプ時代の副大統領であったことから、一般有権者からの支持は高くない。
次は、かつてのトランプ派を任じていたニッキー・ヘイリー元国連大使。
彼女は元サウスカロライナ州知事(2011~2017年在任)であったが、トランプから国連大使に任命されてからは、国連の舞台で一貫してトランプの“MEGA(米国を再び偉大に)”政策を認知させるべく奮闘してきた。
ただ、2021年1月6日の議事堂乱入事件発生以降は公にトランプを非難するようになっていて、(自身の立候補は別にして)共和党は“トランプ方針に従うべきではない”と主張していた。
しかし、間もなく前言を翻し、“共和党にはトランプが必要だ”と言い出しており、大統領選立候補の可能性を含めて、彼女の話には一貫性がない。
次はテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)。
共和党の重鎮のひとりであるクルーズは、党内穏健派から強い支持を受けている。
ただ、2024年選挙時には、上院議員の改選時期に重なるため、まだ態度を決めかねている。
同氏は、上院議員3期目を狙うと表明しているものの、大統領選共和党予備選に打って出る可能性を否定していない。
同氏はトランプの出馬表明について、“予備選を実施しないで本選に臨もうとしているが、対立候補は出てくる”としながらも、“時期尚早で、まだ様々なことを議論する必要がある”とコメントしている。
次にマイク・ポンペオ元国務長官。
トランプの忠実な部下だったこともあり、トランプから目の敵にされることはないとみられる。
長官退任後、体重を大幅に落としてイメージ戦略を展開し、直近では、新刊を持ってメディア回りをして大統領選共和党予備選への出馬を仄めかしている。
なお、同氏は今春までに出馬するかどうか態度を鮮明にするとしている。
次はラリー・ホーガン前メリーランド州知事(66歳、2014~2022年在任)。
ホーガンは、立候補を取り沙汰されている他の候補者と違って、遠慮なくトランプを強硬に批判している。
そこで、反トランプ運動を展開していく上でも、2024年の予備選に打って出ることを前向きに検討していると公言している。
同氏は、昨秋の中間選挙での共和党苦戦結果を受けて、“自身がこれまでメリーランド州で勝ち取ってきたように、共和党はもっと幅広い人たちに支持を訴えていく必要がある”と『CNN』のインタビューに答えている。
最後に、ブライアン・ケンプ現ジョージア州知事(59歳、2019年初当選)。
ケンプは2020年、トランプから大統領選の同州選挙結果を覆すよう命令されたことに従わなかったことで名を挙げた。
ただ、トランプから敵視され、昨秋の中間選挙では、トランプ推薦候補として送り込まれた刺客と同州知事選共和党予備選を戦う必要に迫られたが、見事勝利し、その勢いを駆って本選でも民主党候補に勝って再選を果たしている。
ケンプの場合、新型コロナウィルス対策や、他州に先駆けての行動制限解除等の政策について、多くのジョージア市民から支持を得ていたことが勝因と言える。
特に、昨今の二党対立が顕著の中、民主党員からも支持を取り付けていたことが大きい。
そこでケンプは、“(反トランプ風が吹き荒れる中)もしタフな知事選で勝利できなかったならば、2024年大統領選での共和党候補勝利の可能性が断たれただろう”とし、“しかし、勝利できたことから、2024年への道は続いている”と公言している。
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1月13日付米
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立)は、「世界最大の貿易国の中国、対ロシア貿易で史上最大の入超」と題して、世界的エネルギー価格高騰もあって、昨年の中国の対ロシア貿易が一昨年比3倍と史上最大の入超となったと報じている。
中国の昨年の対ロシア貿易高が、一昨年比3倍増となる史上最大の入超となっていることが分かった。
この背景には、世界的なエネルギー価格高騰の最中、欧米諸国による対ロシア制裁によって、ロシア産原油・天然ガスが低く抑えられていることから、中国側の輸入が促進されたことがある。
2022年中国の対ロシア輸出額は760億ドル(約9兆7,280億円)と13%増えたが、輸入額は1,140億ドル(約14兆5,920億円)と44%も上昇し、2021年の赤字額の3倍にも膨れ上がっている。
この大きな要因は、中国のロシア産原油輸入高が41.4%も増えたことにあるが、輸入量自身は、中国のゼロコロナ政策に伴う都市封鎖措置等による景気後退に遭って減少しているものの、ロシア産原油価格が欧米諸国による制裁によって低く抑えられているとは言え、世界的なエネルギー価格高騰を受けて同価格自体も大幅に上昇しているからである。
『ブルームバーグ』オンラインニュースの1月13日報道によると、“中国は、欧米諸国にみられる急激なエネルギー価格高騰を避けるべく、大量の石炭生産を行って凌ごうとしている”とし、“この結果、エネルギー価格上昇率を3%弱に抑えられたため、中国のインフレ率は2%台となっている”という。
中国国家発展改革委員会(1954年前身設立)は、石炭生産を大幅に増やしたことで、欧米諸国が“エネルギー価格暴騰で苦しんでいるのとは対照的”に価格上昇を緩やかに抑えられたと自画自賛している。
ただ、インフレ抑制のための石炭火力発電増強も、2023年では効果が薄れるとみられる。
何故なら、ゼロコロナ政策緩和で中国の経済活動が活発化し、資源エネルギー需要も高まることから、中国としてもエネルギー価格暴騰の影響を更に受けることになるからである。
この結果、中国の需要増によって世界的な物価上昇に拍車がかかることが懸念される。
中国は、ウクライナ軍事侵攻に伴う対ロシア制裁に加担せず、ロシア産原油等の輸入を続ける数少ない国である。
しかも、主要7ヵ国(G-7)及び欧州連合(EU)が昨年12月、ロシアが原油輸出に伴う利益をウクライナ戦争に投じられないよう、ロシア産原油に価格上限方式を採用することを決定しているが、中国はこれに同意していない。
習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)は昨年11月、“ロシアとは、エネルギー政策でより緊密に連携していく”と表明している。
これを受けてロシア側も、G-7やEU方式を拒否する国には更に多くの原油を提供すると宣言している。
なお、ロシア産原油の多くは、中国・インド含めたアジア向けに供給されている。
ロシアは更に、バルト海で取り進めている液化天然ガス開発プロジェクトへの参画を中国にはたらきかけているだけでなく、中国向けの天然ガス輸送パイプライン建設計画を推進すべく、通過ルートとなる隣国カザフスタン及びウズベキスタンとの契約交渉に取り組んでいる。
同日付ロシア『RTニュース(旧ロシア・トゥデイ)』(2005年開局のニュース専門メディア)は、「中ロ貿易高、当初目標の2024年より早く達成見込み」と詳報している。
中国海関総署(1949年設立の貿易管理機関)が1月13日にリリースしたデータによると、中ロ間の2022年総貿易高が1,900億ドル(約24兆3,200億円)と一昨年比33%近くも増えている。
内訳は、ロシア向けの輸出額761億ドル(約9兆7,308億円)と前年比+12.8%、中国向け輸出額が1,141億ドル(約14兆6,048億円)と同+43.4%の大幅増となっている。
この結果、ロシアは中国にとって主要20ヵ国において最大の貿易相手国となっている。
更に、中ロ両国はかつて、2024年までに総貿易高を2,000億ドル(約25兆6千億円)まで増やすとの目標を立てていたが、それよりも早く達成する見通しとなっている。
ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)は昨年12月に習国家主席とオンライン会談した際、“西側諸国から不当な制約を受けているが、ロシアと中国の関係は強固で、特にエネルギー分野において協力関係がより強化されていることを称賛する”と述べている。
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