チェコ共和国の南東部にある町キョフでは、地元企業を支援するための特別な通貨の実験的導入を始めようとしている。この試験的試みは、新型コロナウイルスの流行で大打撃を受けた地元企業を支援するためのもので、キョフの人々は新しい通貨を地元のお店やレストラン、映画館で使うことができるようになる。
仏日刊紙
『ルモンド』や金融紙
『ラ・トリビューヌ』によると、このプロジェクトの起案者ペペ・ラファージは1月5日、「コロナ」と「カレンシー(通貨)」の言葉を融合した「コレント」という特別通貨をチェコの町キヨフで導入し、町中で独自の通貨として使用できるようにすると発表した。
新型コロナウイルスによる規制の影響を受けた地元企業を支援するための通貨は、地元の企業やレストラン、映画館で使用できる。ラファージ氏は、「資金繰りに窮する経済を助ける必要性からこのプロジェクトは生まれた」と説明しており、昨年3月の自主隔離中にこのプロジェクトを思いついたという。プロジェクトは、地元の人々がお金を使うことで、地元の企業が収益を増やし、国の税収も増やしていくことを意図している。
試験的導入の期間中、2000人のボランティアに、それぞれ2000円相当の400コレントが支給され、プロジェクトに加入している店舗で使用することができる。1回の使用ごとに、客は金額の半分をコレントで、半分をチェコ通貨コルナで支払う。ラファージ氏は、「すべてのボランティアが電子マネーを持つことになる。店主はウェブサイトを利用して国民識別番号を入力し、コレントで金額を差し引く」と説明している。
フランスの中央・東ヨーロッパニュースサイト『PECO』によると、このプロジェクトは国内のコロナ規制が緩和され次第開始される予定となっている。当面の間は、80万クラウン(約385万円)を支払うことに同意してくれた匿名の個人献金者のおかげで、試験的に運用される。しかし、ラファージ氏は「このプロジェクトは、将来的には国や欧州の資金で賄われる可能性もある」と述べている。
このプロジェクトは、アメリカの経済学者ミルトン・フリードマンが1969年に打ち出した危機の時の救済策として提唱されている「ヘリコプターマネー」の原理に基づいている。一方で経済学者やNGOらは、公的債務の負担を抑制しつつ、景気回復を促進するために、市民への直接送金を実施することを提唱している。NGOのポジティブマネー・ヨーロッパ協会などは、ユーロ圏の全市民に1000ユーロ(約13万円)を配ればGDPが1.2%上がると主張している。
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