8月4日付「米国家安全保障局(NSA)による日本へのスパイ活動が表面化」の中で、“米国が同盟国日本に対しスパイ活動を行い、情報を豪州、ニュージーランド、カナダ、英国に渡していたと発表したウィキリークス(注1後記)は、これまで米国のスパイ活動を暴露し、ブラジル、ドイツ及びフランスなどの同盟国と米国との信頼関係を失墜させたが、今度はアジアに焦点を当てている”と報じた。このスパイ行為に対して日本側は、週末は静かにしていたが、週が明けて厳しい抗議に出てきたと米メディアが伝えた。
8月3日付
『アル・ジャジーラ・アメリカ(注2後記)』(
『AFP通信』記事引用)は、「日本側、米国のスパイ行為に遺憾の意」との見出しで、「ウィキリークスが暴露した、米NSAのスパイ活動に対して、菅義偉官房長官は8月3日、仮に真実とすれば大変遺憾なことだと表明した。そして、現在クラッパー米国家情報長官に真偽を質しているところだと付け加えた。暴露された文書によると、安倍首相はNSAの諜報活動の対象となっていなかったが、宮沢経済産業相、黒田日銀総裁やその他省庁、大手企業の電話が盗聴されていたという。」と報じた。
8月4日付
『ディスパッチ・タイムズ』オンラインニュースは、「日本側、米側にスパイ行為について釈明を要求」との見出しで、「ウィキリークスが暴露したある機密文書には、“5ヵ国共有情報”と書かれており、同文書が米国、豪州、カナダ、英国、ニュージーランド内で共有されていたことが明らかとなっている。なお、国務省のトナー副報道官は、内容は秘匿したが、日本と本件について協議していることを認めた。」とし、新潟県立大学国際政治学の山本吉宣教授のコメントを引用して、「日本側は説明を求めるだろうが、本件を大袈裟な問題にして二国間関係を危うくするようなことはないだろう。何故なら、情報収集上ルールなどないということが明らかになったが、仮に日本側の情報が完全に保護されていたとしても、日本企業や気候変動対策上の方針が現在と異なるものになっていたとは思われないからである。」と伝えた。
一方、8月3日付
『ザ・ディプロマット』オンライン国際ニュースは、「日本へのスパイ活動で仲違い」との見出しで、「川村泰久外務報道官は、NSAのスパイ活動に関し、米国側と協議していることは認めたが、詳細については明らかにしなかった。米国側としては、本件を穏便に済ませようと画策している模様だが、日本側にとっては国内問題がやっかいである。何故なら、米国との同盟関係強化の一環で安保法政を固めようとしている最中の出来事であるため、安倍政権への不信感を高めるのみならず、米国との同盟関係を疑問視する反対派を勢い付かせることになるからである。」と報じた。
なお、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を担当する甘利利明TPP相は8月4日の記者会見で、TPP交渉に関しては、そういう事態(盗聴)も想定して取り組んでいる、と強気の発言をしている。
(注1)ウィキリークス:各国政府機関の機密文書や企業の内部情報を独自に入手し、暴露する独立系ウェブサイト。匿名を保証した情報提供窓口を持ち、世界に1,200人以上いるとされるボランティアが情報を分析、編集し、公表する。
(注2)アル・ジャジーラ・アメリカ:カタールのアル・ジャジーラ・メディア・ネットワークの子会社。CNNニュース、Foxニュースなどに対抗して、2013年8月にニューヨークに拠点が設けられたTVニュース会社。
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