7月16日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、衆議院が「第二次大戦以来初めて、国外での紛争で武力行使を限定的に認める法案を承認した」と報じた。同紙によると、法案は、第二次大戦以来何十年も日本が維持してきた、直接攻撃された場合にのみ武力を行使するとする、厳格に防衛的なスタンスを放棄するものである。日本国憲法の専門家を含め法案の反対者は、この法案は戦争を放棄した憲法に違反すると主張している。安倍首相は法案成立に政治生命を賭けている。世論調査によれば、有権者は約2対1で反対しており、かつて高かった政府支持率も今月は約40%にまで落ち込んでいる。
中国はこの法案の通過を、アジアの平和への脅威であり、日本の戦時中の侵略の記憶を想起させるものだとして批判し、「中国は、日本側が厳しい歴史の教訓を学び、平和的発展の道を歩み、アジア近隣諸国の重大な安全への憂慮を尊重し、中国の主権や安全保障を危殆させることや、地域の平和や安定を損なう行動を慎むよう、真摯に勧告する」と発表した。参議院では60日の審議期間を予定しており、その間、この問題が世論の注目を集め、ますます反対を増幅させる可能性がある。しかし、「米国政府は、日本の世論が緊密な同盟関係について、大きく割れることを望んでいない」とワシントン外交委員会日本研究のシーラ・スミス上席研究員はいう。立法化への残された障害を乗り越えたとしても、裁判により法廷の場で争うことになる可能性があり、その先どうなるか定かではない。
7月16日付
『ロイター通信』も、同法案が衆議院で可決した」ことを伝える一方、法案は激しい抗議を受けており、55年前、安倍首相の祖父岸信介(当時首相)が日米安全保障条約の更改を巡り議会で激突した後、辞任したことを想起させると報じている。安倍首相の支持率は急落しているが、自民党内外の状況からすれば、次期も党首に再選され、あと3年間は首相を務めるだろうとの観測もある。「安倍首相は、非常に尊大で傲慢であるが、それは自分にはね返ってくる。彼は鉄壁の宰相ではない」と、テンプル大学日本校アジア研究所長のジェフリー・キングストン氏はいう。
7月16日付
『シカゴトリビューン』紙は、この法案は、安倍首相によって押し進められ、第二次大戦後米国が起草した平和憲法を採用している日本が、「集団的自衛」によって、同盟国である米国を助けることが必要だとの考えに基づいている、と論評している。安倍首相は、中国が軍事力を増強し、南シナ海や東シナ海での権利拡大を主張している状況で立法化に動いたが、日本の大多数の世論は反対しており、憲法学者はこの法案は違憲であると異議を唱えていると報じる。
7月16日付
『AP通信』は、この問題がこれほど紛糾している理由として、「憲法学者がこの法案は違憲であると反対していることもあるが、日本人の多くは、戦後70年にわたり平和と繁栄をもたらしてきたこの国の平和主義を少しでも変えることが嫌なのだ」と解説している。ある者は、この法案によって過激な反米主義者から狙われ、米国主導の紛争に巻き込まれるリスクが増大するのではないかと懸念し、また、ある者は徴兵制につながるのではないかと心配している、と報じている。
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香港の次期行政長官選挙に対し、中国政府は民主派候補を除外する動きに出るなど、関与を強めている。こうした中国の関与を受け入れた香港自治政府に対し香港の学生は反発。およそ13000人もの学生が決起集会に集結し、1週間にわたる授業のボイコットを始めた。学生グループは、10月1日前後には金融街を占拠して、抗議活動を行うものとみられている。こうした動きに関して、各国メディアは以下のように伝えた。
9月23日付
『AFP通信』(フランス)は、「香港の学生が政府に対しボイコット」との見出しで、「我々は、2017年の次期行政長官選挙を厳密に行うよう政府に求めている」との学生リーダーの発言を引用しつつ、「香港は、1997年に英国から中国に返還された後、中国本土にはない1国2制度の独自の行政自治区としての道を歩んできたが、中国政府の政治的干渉によって、これまでにない緊張に香港中が包まれている」と報じた。
9月23日付
『シカゴトリビューン』(米国)は、「何千人もの香港の学生が、民主主義の未来のために立ち上がった」との見出しで、「我々は1国2制度を維持していく。この香港の基本的な制度は、(中国の)国益に適うものであり、香港の人々の利益にもなる、さらには、外国人投資家にも利益を提供するものだ」との香港特別行政区の初代行政長官だった董建華(トウケンカ)氏の発言や、大学3年生ホンユエンの「8月31日の議会の(民主派候補を除外するという)決断は、過去30年間民主主義のために戦ってきた香港の人々の夢を粉砕した」との発言を紹介し、「香港は、この夏の選挙制度改革の問題で揺れており、中国の大学が行った意識調査によると、香港の住民の5分の1以上もの人々が、将来の政治的懸念により、香港を離れることを検討している」と報じた。
9月22日付
『ガーディアン』(英国)は、「香港の学生が民主主義のための抗議を開始した」との見出しで、「香港を代表する著名な大学教授らは、学生の授業ボイコットに支持を表明し、授業に参加できない一部の生徒のために、オンラインで授業をフォローできるようサポートを表明している」と伝えた。
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