なお、今年8月のYouGov社の世論調査によると、60%以上の英国人がEU離脱は失敗だったと評価している。
「我々はEUに戻りたい。」と怒りと希望の入り混じった声で叫びながら、数千人の親EU派がロンドンでデモ行進した。各デモ隊はパーラメント・スクエアに集結し、大弾幕には‘我々の星を取り戻したい’と書かれ、EUと各加盟国の国旗がその場所に掲げられ、EUのテーマ曲、ベートーベン作曲の喜びの歌がバグパイプで演奏された。...
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なお、今年8月のYouGov社の世論調査によると、60%以上の英国人がEU離脱は失敗だったと評価している。
「我々はEUに戻りたい。」と怒りと希望の入り混じった声で叫びながら、数千人の親EU派がロンドンでデモ行進した。各デモ隊はパーラメント・スクエアに集結し、大弾幕には‘我々の星を取り戻したい’と書かれ、EUと各加盟国の国旗がその場所に掲げられ、EUのテーマ曲、ベートーベン作曲の喜びの歌がバグパイプで演奏された。デモ隊のプラカードには、「トーリー(保守)党は出ていけ、EUに再度加入しよう、EU離脱なんてクソくらえ。」などと書かれていた。
現在のところ、どの主要政党も、英国のEU復帰を提案していないが、EUへ復帰運動の地域責任者、ラッシェル・アシレイ氏は、政界がひとたび動き始めれば、全てがEU復帰に傾いていくと楽観視している。
68才の年金受給者は、「EU離脱で英国人からヨーロッパ人であったのを取り上げたことは、我々に対してだけでなく子供たちや孫たちにも残酷なことだ。子供たちや孫たちは多分、フランスやイタリアに夢中になったのに、その機会が少なくなる。ヨーロッパのような広大な市場を離れて何千キロも遠くにあるオーストラリアなどの市場を求めるのか? 全くばかげている。地産地消の見地からも地球環境に良くない。」と憤慨して語った。
元フランス語教師の64才の女性は、「EU連合にもどりたい。我々はヨーロッパ人で、小さな島国に隔離された状態は英国の若者たちにとっても悲しいことだ。」と訴えた。さらに、「人々は、徐々にEU離脱が全国民に対して悲痛なことであることが、親EU派以外の人たちも含めて理解され始めている。」と付け加えた。
YouGov社の世論調査によると、回答者の59%は、今年中でのEU復帰に関する国民投票の実施には反対しているが、46%は10年内での国民投票には賛成しているという。
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オランダ国王が同国の「奴隷記念日(SRD、注1後記)」に、17~19世紀後半における同国の違法な奴隷貿易の仕業について初めて公に謝罪した。ただ、市民の中には“やり過ぎ”という声が上がる一方、国際人権団体は被植民地の被害の重さを十分認識した上で賠償していく責任があると主張している。
7月3日付
『ワシントン・ポスト』紙、
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース、7月2日付英国
『BBCニュース』、
『ジ・エクスプレス』紙等は、オランダ国王が過去の奴隷貿易の仕業について、初めて公に謝罪したと報じている。
第7代オランダ国王のウィレム=アレクサンダー(56歳、2013年即位)は7月1日、同国のSRD式典において、過去の違法な奴隷貿易の仕業について初めて公に謝罪すると表明した。
同日は、オランダが正式に南米スリナム(1975年オランダから独立)、カリブ海オランダ領(アルバ島、クラサオ島、ボネール島等)に対する奴隷貿易を、1863年7月1日に廃止する旨表明したことを記念する日である。
同国王は、“奴隷制は人の自由を奪い、尊厳を傷つける最も非人間的な仕業だ”とした上で、“国王として、また政府の一員として、心から詫びたい”と沈痛に語った。
オランダの植民地政策は、南米スリナムから南アフリカ、そして東インド(現在のインドネシア)まで及んでおり、政府は、過去300年余りの間、植民地のプランテーション(注2後記)での労役のために60万人余りの奴隷をアフリカから送り込んだことを認めている。
航海途上で約7万5千人の奴隷が死亡していて、また、植民地の先住民も奴隷に駆り出されていた。
スリナム出身の第二院(下院に相当)シルバナ・シモンズ議員(52歳、2021年就任、左派反人種主義政党党首)は、国王自らの謝罪表明を“歴史的なこと”として歓迎するとした上で、潮目は変わりつつあるとツイートした。
マーク・ルッテ首相(56歳、2010年就任)も政府を代表して陳謝しており、奴隷制度の実態を国民に理解してもらうためのカルチャー施設用に2億1,800万ドル(約316億円)を投じることを決定している。
ただ、国民の意識は少々違っていて、国王自身も、1世紀以上も前のことを謝罪することは“行き過ぎだ”と考える人がいることを承知している旨付言した。
英国のデータ収集・分析専門のYouGov(2000年設立、本部ロンドン)が2019年に実施した、欧州列強や日本が行った帝国主義政策についてのアンケートによると、オランダ市民の回答者のうち半分以上が、恥じることではなくむしろ誇り高いことだったとコメントしており、他のどの国より支持する声が多かった。
過去の帝国主義や奴隷制度に対して謝罪すべきかどうかは、他の欧州諸国にとっても悩ましい問題で、ベルギーのフィリップ国王(63歳、2013年即位)は2020年、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール、1960年にベルギーから独立)への植民地政策に“深い悔恨”の意を表明したが、謝罪の言葉は控えた。
英国のチャールズ三世国王(74歳、2022年即位)は昨年、奴隷制について“個人としての哀悼の意”を明らかにしていて、5月の戴冠式時にも英国の帝国主義について謝罪するよう求める声が上がっていた。
しかし、リシ・スナク首相(43歳、2022年就任)は、上記の求めにも、また、英国議員の一部からの奴隷制被害者に対する賠償の支払いの要求に対しても同意していない。
なお、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(1978年設立、本部ニューヨーク)は昨年12月、“奴隷制や搾取等の植民地主義の罪を心から悔い改めるとするなら、植民地主義がもたらした被害の重さと責任を十分認識した上で、賠償金を支払うことが必要である”との声明を発表している。
(注1)SRD:奴隷貿易とその廃止を記念する日。国連教育科学文化機関(ユネスコ、1945年設立)がSRD国際デーと定めたのは8月23日。なお、オランダが奴隷貿易廃止を決定したのは1863年で、米国でエイブラハム・リンカーン大統領(1809~1865年、1861~1865年在任)が南北戦争勝利を受けて発信した奴隷解放宣言と同年。その他、英国は1833年、フランスは1848年、ポルトガル及びスペインは1860年。
(注2)プランテーション:熱帯、亜熱帯地域の広大な農地に大量の資本を投入し、国際的に取引価値の高い単一作物を大量に栽培する大規模農園。植民地主義によって推進され、歴史的には先住民や黒人奴隷などの熱帯地域に耐えうる安価な労働力が使われてきた。
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