国連教育科学文化機関(UNESCO、1946年設立)は、世界の無形文化財保護の活動の一環で、各国の音楽から和食等の伝統習慣・工芸まで世界無形文化遺産(注1後記)として登録して、長く継承されるよう努めている。そしでこの程、フランスの食品の代名詞であるバゲット(注2後記)を無形文化遺産に登録することを決定した。
11月30日付フランス
『AFP通信』は、「フランスパン“バゲット”が無形文化遺産に登録」と題して、フランスの食品として名立たるバゲットがUNESCO無形文化遺産に登録されることになったと報じている。
フランスのバゲットが11月30日、UNESCOの無形文化遺産に登録されることが決まった。
UNESCOによると、バゲット作りの伝統とそれをめぐる生活習慣を継承すべき無形文化財だと認めたという。...
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11月30日付フランス
『AFP通信』は、「フランスパン“バゲット”が無形文化遺産に登録」と題して、フランスの食品として名立たるバゲットがUNESCO無形文化遺産に登録されることになったと報じている。
フランスのバゲットが11月30日、UNESCOの無形文化遺産に登録されることが決まった。
UNESCOによると、バゲット作りの伝統とそれをめぐる生活習慣を継承すべき無形文化財だと認めたという。
ただ、フランス全国パン・菓子連合会(CNBPF)によると、同国では年間60億本以上のバゲットが焼かれているが、業界は厳しい時期を迎えているという。
何故なら、地方では業務用のパン製造業者や郊外型スーパーが普及し、都市部ではサワー系のパンを選ぶ消費者が増えたり、これまで同国では一般的だったハムを挟んだバゲットサンドより、ハンバーガーを好む人が増えたりしているからである。
この結果、1970年代以降、パン職人が経営するパン店が年間約400軒のペースで閉店し、現在では全国で約3万5千軒と2万軒余りも減少してしまっている。
今回のUNESCOによる認定について、CNBPFのドミニク・アンラクト会長は、“職人気質のパン職人や菓子職人の伝統技術が認められた”と称賛している。
同日付欧米『ロイター通信』も、「フランスのバゲットが無形文化遺産に登録されてパン職人が歓喜」と詳報している。
UNESCOのオードレ・アズレ事務局長(50歳、2017年就任、元フランス文化相)は、“今回の認定でフランス人の生活様式が認められた”とし、“バゲットは日常当たり前にある食べ物で、食事の一部をなし、また、人々が共有したり分かち合えたりするものと同義となっているからだ”と述べた。
また、同事務局長は、“この伝統技術と食習慣は将来も守っていくことが肝要だ”とも付言した。
一方、バゲットが作られるようになった言い伝えはいくつかあり、そのひとつは、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(1769~1821年、1804~1815年在位)に仕えたパン職人が、兵士が遠征の際に運びやすいようパンを細長くしたことが原型になったというものである。
他には、オーストリア人パン職人のアウグスト・ツァング(1807~1888年)がバゲットを考案したとも言われている。
なお、UNESCOはこれまでに、130ヵ国余りの約600の伝統慣習や工芸品などを無形文化遺産登録している。
(注1)無形文化遺産:民俗文化財、フォークロア、口承伝統などの無形文化財を保護対象とした、UNESCOの事業の一つ。2006年に発効した無形文化遺産の保護に関する条約に基づく。これまでに対象とされた無形文化遺産は、各国の音楽、舞踏、祭り、儀式のほか、フランス料理(2010年)、インドのヨーガ(2016年)、日本の和紙(2014年)、和食(2013年)など伝統習慣、工芸など多岐にわたる。
(注2)バゲット:別名バゲット・ド・パリ、パリジェンヌ(ロレーヌ地方)、フランスパン(ベルギーおよびケベック州で)などとも呼ばれ、各地にさまざまな種類がある。その細長い形状が共通の特徴のフランスパンで、フランスを代表するパンである。
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