もし未来を垣間見たいならば、日本を見てみるといい。
日本は人口減少に直面している。全人口に占める高齢者の比率は高まり、年金と医療費関連の財政支出を押し上げている。また景気を刺激するための公共投資などもあり、財政赤字は急増している。
はっきりと言えば、日本という国はゆっくりと衰亡しつつある。人口は減る一方で、移民には消極的だからだ。これではもたない。
重要なのは、多かれ少なかれ世界の先進国の大半が同じような状況にあることだ。...
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もし未来を垣間見たいならば、日本を見てみるといい。
日本は人口減少に直面している。全人口に占める高齢者の比率は高まり、年金と医療費関連の財政支出を押し上げている。また景気を刺激するための公共投資などもあり、財政赤字は急増している。
はっきりと言えば、日本という国はゆっくりと衰亡しつつある。人口は減る一方で、移民には消極的だからだ。これではもたない。
重要なのは、多かれ少なかれ世界の先進国の大半が同じような状況にあることだ。出生率は低く、成長率も低く、現在の負債がでさえ十分に大きいうえに、国によっては今もなお負債の拡大が止まらない。
読者は覚えているだろうか。1980年代後半には、日本は世界経済No.1の地位を米国から奪うだろうと考えられていた。電機産業のようなハイテク産業はもちろん、鉄鋼、自動車といった産業においても日本企業の競争力は強くなる一方だった。
たかだか三十年ほどでこんなにも変わってしまうなんて! 日本は、今でも米国、中国に続く世界第三位の経済大国ではあるものの、世界はもはや日本をうらやんでいない。1980年代に称賛されていた日本のやり方は、もはやほとんど誰からも見向きもされない。
最大の問題は高齢化だ。OECDが作成した日本についての最新の報告書は、驚くべき事実を示している。2007年に生まれた日本の子供たちは107歳まで生きるだろうというのだ。
その一方で、日本の出生率は低位にとどまっている。合計特殊出生率(The total fertility rate 一人の女性が生涯に産むとされる子供の数の平均)は、2016年は1.4人でしかなかった。OECD各国の平均は1.7人だ。人口を維持するためには約2.1人が必要とされる。2007年以降、死亡数は出生数を上回っており、2030年代には日本の人口は820万人減少すると考えられている。これは東京の人口分が失われてしまうと言っても過言ではない数字だ。
当然ながら、影響はこれにとどまらない。現在の傾向が続けば、労働力は2050年までに25%減少する。そして20歳から64歳の労働年齢の人口数と65歳以上の人口数との比率は大きく悪化する。現在は65歳以上の日本人1人を、20歳から64歳までの日本人2人が支えているが、2050までには、65歳以上の日本人1人を、20歳から64歳までの日本人1.3人で支えなければならなくなると考えられている。
これは経済的な破滅のメカニズムとも言える。高齢者はますます増え、政府予算に大きな重荷となっている。主に年金、医療費、介護費用などで構成される社会保障費がGDPに占める比率は1991年の11%から2018年の22%に倍増した。
財政赤字は拡大し続け、その結果国債及び借入金現在高はGDPの226%まで膨らんだ。これはOECD加盟国が過去も含めて記録した数値の中でもっとも大きく、米国のほぼ倍の水準となっている。しかし支出削減か増税により赤字を減らそうとすると、それは若い世代からお金を搾りあげることを意味し、子供を産み育てる気力を失わせてしまうかもしれない。
もちろん、総人口の減少に対しては移民の受け入れが有効かもしれない。しかし日本人は自らのアイデンティティーの意識が強く、移民政策が受け入れられる雰囲気はこれまでのところ皆無だ。確かに、外国人労働者数は2013年の70万人から2018年の146万人に倍増した。しかしそれでも、日本の労働力人口の2%でしかない。2017年の外国人居住者の比率は全人口のわずか1.9%で、これはOECDの平均13%の足元にも及ばない。
このような日本の問題に対する処方箋は明らかだ。女性がより多くの子供を産むこと、もっと働くこと、経済成長を加速すること、だ。小さな改善は見られた。しかしどの点も達成できていない。
日本がこの隘路からの出口を見つけられるか、まだわからない。政治的には、何もしないという選択をするほうが合理的で、何か手を打つ合理性はあまりない。米国も含めた多くの先進国が、日本ほどのひどい状況ではないが、同じ問題に直面している。
OECDは「世界は見ている」としている。
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