仏メディアが見る生前退位:天皇のお気持ち表明(2016/08/09)
明仁天皇の生前退位とお気持ちの表明にフランスでも先週から行方を見守る。特にフランスメディアでは以前より明仁天皇への尊敬と人気は高く、「常に国民に寄り添う」、「平和主義を人々の心に刻み込む」、「控えめな暗示を巧みにおりまぜた高度な表現や造詣の深いお言葉」と、フランスのメディアは常に敬意と賛辞とともに報じてきた。
『ルモンド紙』は生前退位のご意向を「常に公務を重視される明仁天皇の責任感の深さ」と
報じる。健康状態は良好に見えても現在82歳のご高齢であること、ここ数年のご病気のため公務を減らされた事と、体力的に公務を続けられる事への懸念を側近に表明されたと報じる。また平和と和解への強いお気持ちをお持ちで、日本の平和主義のイメージを回復したと敬意を示す。
『フィガロ紙』は生前退位は制定時に想定しておらず皇室典範に記載がないため改正を伴うが、与野党総じてお気持ちを尊重する方向性に進む事を伝える。...
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『ルモンド紙』は生前退位のご意向を「常に公務を重視される明仁天皇の責任感の深さ」と
報じる。健康状態は良好に見えても現在82歳のご高齢であること、ここ数年のご病気のため公務を減らされた事と、体力的に公務を続けられる事への懸念を側近に表明されたと報じる。また平和と和解への強いお気持ちをお持ちで、日本の平和主義のイメージを回復したと敬意を示す。
『フィガロ紙』は生前退位は制定時に想定しておらず皇室典範に記載がないため改正を伴うが、与野党総じてお気持ちを尊重する方向性に進む事を伝える。「ルモンド紙」とともに2020年までの生前退位は実現可能とみている。
『リベラシオン紙』によると、日本の長寿化と高齢化が進むなかで、生前退位や定年制などの議論がここ数年なされていた。宮内庁長官や侍従長など皇室関係の中心人物4名が検討を重ねるために定期的に会を開き、この時点では皇室典範の改正の方向性に進んだという。皇太子殿下が2011年に既に年齢制限を設ける事を検討すべきと述べられた事にも触れる。
また「日本国と国民の象徴で政治的権限を持たないにも関わらず、日本の国民は明仁天皇に深い敬意を持ち」、「明仁天皇は現代の天皇像を具現化されようとした」「平和主義の象徴として多くの日本国民が慕う」と報じる。
また
『ルモンド紙』は、ビデオメッセージが象徴天皇のお言葉が政治力を持たないようすり合わせたのは、天皇の政治的権限が禁じられているためだけではないと示唆する。安倍政権は天皇が安倍首相の選択を承認しないように見えてしまう事を懸念する。2012年に起草された憲法改正の基本法案によると天皇の地位が変わり、日本と日本国民統合の象徴から国家元首に近い位置づけになる。生前退位の報道がこの直後だった事や、昨年戦後70周年の折に天皇は「深い反省」を表明された事からも、無用な憶測をよばぬように安倍政権は細心の注意を払う必要があったとの見方を示す。
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仏メディアが見るCEO報酬:カルロス・ゴーン氏報酬減額(2016/08/01)
以前からカルロス・ゴーン氏の報酬額は度々批判の的となったが、ついにゴーン氏はルノーの報酬減額を決定した。ゴーン氏の報酬は、ルノーから約9億円、日産から10億円といわれる。フランスメディアはこの報酬論争が示す二つの問題を報じる。
『ルモンド紙』は社説で「大口筆頭株主である仏政府と、ルノーCEOの権力闘争」の側面を報じる。5月に前哨戦があった。ゴーン氏の2015年の報酬総額725万ユーロがルノー株主総会54%で否決されたにも関わらず、ルノー取締役会は報酬を即刻承認しただけでなく2016年の増額検討すら示唆した。これに激怒した仏政府は報酬関連の労働法可決という「脅しとも言える最終手段にでた」。これまで民間企業のCEO報酬上限は自主規制だったが、今後株主総会の決定が不可欠となる。...
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『ルモンド紙』は社説で「大口筆頭株主である仏政府と、ルノーCEOの権力闘争」の側面を報じる。5月に前哨戦があった。ゴーン氏の2015年の報酬総額725万ユーロがルノー株主総会54%で否決されたにも関わらず、ルノー取締役会は報酬を即刻承認しただけでなく2016年の増額検討すら示唆した。これに激怒した仏政府は報酬関連の労働法可決という「脅しとも言える最終手段にでた」。これまで民間企業のCEO報酬上限は自主規制だったが、今後株主総会の決定が不可欠となる。この法案は今後上院で審議される。
『レゼコー紙』によると、この確執はオランド政権発足以来続く。大企業役員報酬の中でも特にストックオプションと賞与規制による枠組み作りは2012年大統領選の公約だった。5月の株主総会も仏政府が主導した。日産への影響力増大を目論むとされる仏政府は、長期株主に二倍議決権をめぐって、日産の独立性を維持するゴーン氏と昨年激しく対立した経緯がある。「レゼコー紙」は「ゴーン氏は批判へ答えるべく報酬減額」と報じるが、「減額発表をルノーの中間報告発表前夜を選んだ」のは「抗議行動」であるという。中間報告は株主総会で否決された2015年度の報酬に該当する昨年四月まで遡る」からだ。今後ゴーン氏が反撃に出る可能性もある。
しかし「ルモンド紙」も「レゼコー紙」も「この件は本来企業のCEOの報酬規制と報酬額の問題」とみるべきと指摘する。「CEO報酬額の妥当性」と「企業ガバナンスの透明性」である。
『ルモンド紙』は金額自体を評価しなかったが、「この一件で政府が上限を定めるという明快な法整備につながった」は評価する。しかし「報酬に関して立法が介入するのはリスクをもたらす」と警告する。「マクロン経済大臣はそのリスクを知る」と報じ、100万ユーロ以上の給与の初年度に75%課税する事には、当時大統領顧問だったマクロン大臣は批判的だった。また多くの経営者が海外移転を進めるという結果となった。
『レゼコー紙』によると2016年のゴーン氏の報酬の成功報酬部分のみ20%減額されるが、目玉のストックオプションは変化なく今年は10万株が支給された。「レゼコー紙」は、MEDEF(日本の経団連)が加盟企業の指針を定めるが、「MEDEFのガバナンス高等委員会が作る抜け道」と「日産とルノーのCEOを兼務するという特殊な状況からくる曖昧さ」を問題視する。
仏人の6割が属する給与帯の平均的手取りは月26~30万で賞与は年に1か月分。25%近い若者の構造的な失業と不正規雇用。偉大な業績があてもゴーン氏の報酬には賛否が分かれる。この格差をインドの貧富の差になぞらえる評論家もいる程だ。実際
『リベラシオン紙』は「CEOの最大報酬を最低賃金の100倍までと設定する」事を呼びかける嘆願書を紙面で公開した。一方「フランス人の伝統的価値観にも関わる微妙な問題」と評する。
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