マレーシアのマハティール・ビン・モハマド元首相(1981~2003年第4代、2018~2020年第7代首相在任、現在96歳)は親中派で知られ、2010年代にバラク・オバマ政権(2009~2017年)下で進められていた環太平洋経済連携協定(TPP)について、中国を阻害しているとして反対していた。そしてこの程、ジョー・バイデン大統領(79歳)が主導して発足させたインド太平洋経済連携枠組み(IPEF、注後記)についても、同元首相が中国を孤立させるだけでアジアの経済発展を阻害するとして非難している。
5月28日付米
『AP通信』は、「マレーシア元首相、米国主導の経済連携枠組みは中国を孤立させるだけと非難」と題して、マハティール・ビン・モハマド元首相が、先週米国主導で発足させたIPEFに関し、悪戯に中国を孤立させるだけでアジアの経済発展に繋がらないと非難したと報じている。
マレーシアのマハティール・ビン・モハマド元首相は5月27日、米国主導でこの程発足したIPEFに関し、中国を孤立させるだけの目的であり、また、中国なしにはアジアにおける経済発展は望めないと非難した。...
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5月28日付米
『AP通信』は、「マレーシア元首相、米国主導の経済連携枠組みは中国を孤立させるだけと非難」と題して、マハティール・ビン・モハマド元首相が、先週米国主導で発足させたIPEFに関し、悪戯に中国を孤立させるだけでアジアの経済発展に繋がらないと非難したと報じている。
マレーシアのマハティール・ビン・モハマド元首相は5月27日、米国主導でこの程発足したIPEFに関し、中国を孤立させるだけの目的であり、また、中国なしにはアジアにおける経済発展は望めないと非難した。
ジョー・バイデン大統領は5月23日、訪日の機会を捉えて、日本を含めた13ヵ国による新たな経済圏構想IPEFを発足させた。
米国としては、アジアにこれまで以上に密接に関わる枠組みだとして、サプライチェーン、ディジタル貿易、クリーンエネルギー、腐敗防止の4分野における連携強化を目指すとする。
IPEF加盟の13ヵ国合計で、世界の国内総生産(GDP)の40%を占める巨大経済枠組みとなる。
しかし、これに対してマハティール元首相は、“アジア地域の経済発展のためにならない”と強く非難した。
『日本経済新聞』(1876年創刊)主催で東京において開催された、第27回「国際交流会議・アジアの未来」で講演したもので、同元首相は、“中国はマレーシアにとって最大の貿易相手であり、中国なしに将来は考えられない”とし、“アジアにとっても、世界最大レベルの経済規模を誇る中国を除いての発展は望めない”と強調した。
しかし、日本の外務省発表によると、マレーシアのイスマイル・サブリ・ヤアコブ第9代首相(62歳、2021年就任)が同日、岸田文雄首相(64歳)と会談し、IPEF発足を共に歓迎した上で、同枠組みを通じてディジタル変革、サイバーセキュリティ、新技術開発、及びサプライチェーン強靭化で相互協力していくことを確認したという。
なお、マハティール元首相は、長い間の首相在任中も含めて、特に途上国を代弁する事実上の報道官とみられてきていて、しばしば西側先進国を批判してきていた。
同氏は齢96歳であるが、依然マレーシアでは影響力がある人物である。
同日付マレーシア『マレーメール』紙(1896年創刊)は、「ドクター・マハティール、経済発展のためには富裕の中国を怒らせてはならないと各国首脳に苦言」と題して、マハティール元首相(1953年にシンガポール医科大学を卒業して医師免許取得)が、国際会議に出席した各国首脳を前に苦言を呈したと報じている。
マハティール元首相は5月27日、東京で開かれた国際会議の席上、出席した各国首脳の前で、米国主導で発足した13ヵ国のIPEFに関し、地域の経済発展のためには富裕国の中国を除け者にしてはならないと非難した。
同元首相は、“中国はマレーシアにとって重要な貿易相手国であり、彼らと衝突するようなことはあってはならない”とし、“米国は、地政学的にみてもアジアから中国がいなくなることはないということをよく理解すべきだ”とも強調した。
更に同元首相は、“米国はいつも、中国を孤立させるためにこのような枠組み作りを行っている”とした上で、“多くの関係国は、IPEFが経済連携などではなく、政治的枠組みだということを認識する必要がある”とも言及している。
(注)IPEF:中国主導で2020年に成立した「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」に対抗する手段として、RCEPに参加していないインドを巻き込んで発足させた枠組み。米国の他、日本・インド・韓国・豪州・NZ・タイ・インドネシア・シンガポール・フィリピン・ベトナム・マレーシア・ブルネイの計13ヵ国。サプライチェーンの強靭化、クリーンエネルギー・脱炭素、税制・汚職対策、公正で強靭な貿易、の4分野での連携強化を目指す。
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三菱重工業の加藤顕彦原子力事業部長は、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「将来、ロシアから燃料を輸入するのは難しくなるかもしれない。海外から燃料を輸入する限り、常に不安定さが懸念されることに人々は気づいている」と語り、「安定した国産エネルギー源である原子力発電に対する見方を改めた人が多い」と指摘している。
世界第3位の経済大国である日本は、液化天然ガス(LNG)と石油の価格高騰によって悪化した電力危機に陥っている。...
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三菱重工業の加藤顕彦原子力事業部長は、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「将来、ロシアから燃料を輸入するのは難しくなるかもしれない。海外から燃料を輸入する限り、常に不安定さが懸念されることに人々は気づいている」と語り、「安定した国産エネルギー源である原子力発電に対する見方を改めた人が多い」と指摘している。
世界第3位の経済大国である日本は、液化天然ガス(LNG)と石油の価格高騰によって悪化した電力危機に陥っている。日本はLNGの約9%をロシアから輸入しており、西側諸国がモスクワに制裁を加える中、難しい外交的立場に立たされている。ライスタッド・エナジーの電力市場アナリストであるライアン・クロンク氏によれば、加工ウランの4分の1近くをロシアから調達している米国とは対照的に、日本は加工ウランの約55%を西ヨーロッパ諸国から輸入しているという。
『ファイナンシャル・タイムズ』は、三菱重工業の原子力事業部長の発言のように、福島原発事故以来後退してきた日本の原子力産業が今になって発言する勇気を得たことは、日本の原子力談義が変化したことを示している、と伝えている。加藤顕彦原子力事業部長の発言は、岸田首相が今月初めロンドンで、日本は原子力を使って「世界の脱原発の実現に貢献する」と投資家に語った後に出たものである。加藤氏は「政府の姿勢が変わってきている」と述べ、政府が原発の再稼働をさらに強く支持するよう求めた。日本ではすでに2023年までにいくつかの原発が再稼働する計画があり、島根県と宮城県にある原発は、安全検査に合格しているので再稼働の準備が出来ている。
しかし日本は2009年以来、新しい原子力発電所を建設しておらず、代わりに既存の原子炉のメンテナンスとサポートに注力している。三菱重工業にとって重要な収益源の1つは、テロ攻撃やその他の自然災害によって原子炉が破壊された場合に備えて、プラントを安全に停止させるための緊急施設を設置することである。東京に拠点を置くエネルギー・防衛分野のコンサルティング会社Mathyos Advisoryのトム・オサリバン氏は、「日本はエネルギー自給率の向上を切実に必要としている。原子力発電所はサンク・コストであり、2011年以降、十分に活用されていない資産である。原子力発電所がなければ、おそらく電気料金は一気に上昇し、大きな経済的ダメージを受けるだろう。」と指摘している。
一方、日本国民は依然として原子力発電に慎重である。しかし、日本経済新聞社が最近行った世論調査では、安全性が確保されれば原子炉の再稼働を支持するとの回答が53%に達し、福島原発事故以降最も高い割合になった。
米『ブルームバーグ』によると、日本において電炉メーカー最大手の東京製鐵株式会社も、国内の製造業の競争力を復活させるには、さらなる原子力発電が必要不可欠であると述べていると伝えている。東京製鐵の今村清志常務取締役は取材に対し、商品価格の上昇と石炭の段階的な廃止によって、十分な電力を確保することが難しくなっていると述べた。「これは深刻な問題だ」とし「原子力発電の問題をもう一度議論することが重要だ」と述べた。
日本鉄鋼連盟も、経団連と同様に、原子炉の早期再稼働を要求している。岸田首相は先月、エネルギーのほとんどを輸入している日本が燃料価格の上昇と円安に苦しんでいるため、もっと原子力発電の利用を検討する必要があると述べた。
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