「イカゲーム」のような韓国大統領選、フランスメディアの報道(2022/03/09)
今日、大統領選投票日を迎えた韓国。世論調査では、保守派のユン・ソクヨル氏が、進歩系左派のイ・ジェミョン氏よりわずかに優勢である。しかしフランスメディアは、韓国の有権者たちは、本質的な問題には触れることのなかった、誹謗中傷キャンペーンを中心に繰り広げられた選挙戦に悩まされた、と報じている。
仏誌
『レゼコー』は、韓国の大統領選挙は終了直前まで激しかったと伝えている。7日にソウルで行われた与党民主党による最後の遊説で、70歳の男が党の代表の頭をハンマーで殴った。幸い重傷は負わなかった。犯人は取り押さえられる前に反米のスローガンを叫んでいたという。
今回の大統領選は、候補者同士の罵倒合戦、汚職の告発、それぞれの妻にまつわる一連のスキャンダルなどが相次ぎ、有権者を幻滅させた。与党民主党の大統領候補の妻は夫の会社のクレジットカードを悪用したことが報じられ、野党大統領候補者の妻は、霊能者に相談していた過去が報じられた。...
全部読む
仏誌
『レゼコー』は、韓国の大統領選挙は終了直前まで激しかったと伝えている。7日にソウルで行われた与党民主党による最後の遊説で、70歳の男が党の代表の頭をハンマーで殴った。幸い重傷は負わなかった。犯人は取り押さえられる前に反米のスローガンを叫んでいたという。
今回の大統領選は、候補者同士の罵倒合戦、汚職の告発、それぞれの妻にまつわる一連のスキャンダルなどが相次ぎ、有権者を幻滅させた。与党民主党の大統領候補の妻は夫の会社のクレジットカードを悪用したことが報じられ、野党大統領候補者の妻は、霊能者に相談していた過去が報じられた。
『レゼコー』は、脆弱な景気回復、若者の絶望を招いている不動産価格の高騰、北朝鮮との緊張関係など、根本的な問題についての議論はほとんど行われなかったと伝えている。ソーシャルネットワーク上では、一部のネットユーザーが、人々が何としても一攫千金を得るために死闘を繰り広げる韓国のテレビドラマ「イカゲーム」にちなんで、「イカゲーム選挙」と揶揄しているという。
仏ラジオ放送局『RFI』は、「イ・ジェミョン、ユン・ソクヨル両候補の選挙戦は、本人や妻にまつわるスキャンダルに彩られていた。これが、最高権力者の主要な候補者たちの唯一の共通点であろう。」と報じている。
ただし、北朝鮮に対しては、双方が真逆の政策を提案している。左派のイ・ジェミョン氏は、現政権が北朝鮮との対話に意欲的であったその姿勢を継続し、非核化と引き換えに制裁の軽減、また対話の道を追求する方針を明らかにしている。一方、保守のユン・ソクヨル氏は、北朝鮮からの攻撃の危険が差し迫った場合の「予防攻撃」に賛成しており、「断絶」の声を代表している。「力」と「抑止力」によって平和を実現したいと述べている。
北朝鮮だけでなく韓国の主要な経済パートナーである中国に対しても、両陣営は正反対の政策を掲げている。約3万人の兵士を駐留させ、韓国の安全を保証している米国に対して、ユン・ソクヨル氏は、米国との関係改善を望んでいる。一方イ・ジェミョン氏は、中国との友好関係の継続を推奨している。経済関係の発展を継続させるためだけでなく、北朝鮮問題で中国政府から前向きな介入を得ることを願っているためだ。
韓国は、欧米に比べてパンデミックによる死亡者数をうまく抑えることができた反面、国民が規制の影響を受けている。特に、労働者の4分の1を占める自営業者は大きな犠牲を強いられた。レストランやカフェの多くは、感染防止対策で活動が制限され、閉店を余儀なくされた。それに加えて、不動産価格が爆発的に上昇した。ソウルでは、100平方メートルのアパートの価格が5年間でほぼ2倍に跳ね上がった。この問題は、多くの韓国国民にとって繊細な問題であり、候補者たちが衝突している問題でもある。イ・ジェミョン氏は、消費活性化のため、社会住宅建設と最弱者への基本所得の導入を訴えている。しかし、ユン・ソクヨル氏は住宅戸数を増やすことには賛成でありながら、不動産にかかる税金を減らして価格を下げたいと考えている。
今回の選挙戦では、フェミニズム運動に対する姿勢も問われている。韓国の若者のフェミニズム思想への著しい反発(2018年の国民日報の調査によると、20代男性の76%がフェミニズムに反対と回答)に後押しされ、ユン・ソクヨル氏はこの省庁の廃止を望んでいる。ユン氏は、韓国がOECD加盟国で最低の出生率であることの一因としてフェミニズムをあげており、性的暴行の中傷証言に対する罰則を強化することを提案している。これに対して民主党のイ・ジェミョン氏は、性暴力反対集会に参加するなどしてきたものの、フェミニストを支持する姿勢はあまり出してこなかったため、活動家たちの懸念の的となっている。
ここ数日の世論調査では、どちらの候補者を選ぶかという質問に対して、「どちらともいえない」という回答が異常に多いことが指摘されており、両候補者は拮抗している。成均館大学の政治学者、イ・スクジョン氏は「極めて異例な雰囲気の選挙戦だ」と指摘している。政治アナリストのパク・スンミン氏は「希望をもたらすような選挙ではない大統領選は初めてであり、憂鬱な有権者による投票になる」と述べている。
閉じる
欧州諸国、労働力不足に直面(2022/02/17)
新型コロナウイルスのパンデミックから経済回復の兆しを見せ始めているEUでは、失業率が6.4%まで低下しており、多くの企業が採用難に直面している。
仏紙
『ルモンド』によると、欧州連合(EU)では、労働力不足が叫ばれている。長年高い失業率に苦しんできた南部諸国でも、2021年12月時点でユーロ圏の労働力人口の7%と、少なくとも単一通貨誕生以来の最も低い水準となった。EU全体では6.4%となっている。
こうした背景には、ロックダウン政策による不況を緩和するための政府の支援のおかげで、パンデミックが当初心配されたような深刻な打撃をもたらさなかったことがあげられる。...
全部読む
仏紙
『ルモンド』によると、欧州連合(EU)では、労働力不足が叫ばれている。長年高い失業率に苦しんできた南部諸国でも、2021年12月時点でユーロ圏の労働力人口の7%と、少なくとも単一通貨誕生以来の最も低い水準となった。EU全体では6.4%となっている。
こうした背景には、ロックダウン政策による不況を緩和するための政府の支援のおかげで、パンデミックが当初心配されたような深刻な打撃をもたらさなかったことがあげられる。経済が回復するにつれ、2021年第3四半期の求人倍率は2.4%に達し、過去10年間の平均のほぼ2倍になった。ベルギー、オランダ、チェコでは、さらにその2倍を記録している。チェコは今、ウクライナやスペイン、さらにはフィリピンから労働者を呼び寄せ、人手不足を補おうとしている。
当初、労働力不足は、キャリアアップの見込みが立たない人々が、失望して労働市場から撤退したと思われていたが、そうではなかったことが分かってきた。欧州では、米国で見られたような「大量辞職」現象は起こっていない。実際、欧州の雇用率は2021年第3四半期に69.3%と、米国の62%に比べて、パンデミック前の水準に戻ってきている。欧州の労働市場は確実に良くなってきている。
ただし、国によってその様相は大きく異なっている。欧州北部の国々は完全雇用に近づいているのに対し、南部の諸国はまだ遠い。雇用率はドイツが77%であるのに対し、フランスは68%、スペインは64%、イタリアとギリシャは60%にとどまっている。このような状況に対処するため、企業も政府も、従業員、特に有能な人材を集めるための戦略を次々と打ち出している。
仏公共ラジオ放送局『RFI』は、EUでの労働力不足は長期的な問題であると指摘している。最新の研究によると、2050年までにヨーロッパでは労働者が9500万人減少し、大幅な人手不足に陥ることが予想されているという。特に情報技術や通信など、一部の分野ではすでに人手不足が顕著になり始めている。この人手不足に対応するため、アフリカ大陸で採用活動を行う取り組みが盛んに行われ始めているという。例えばリトアニアでは、ナイジェリアからの人材を採用するためのプログラムが実施されている。
IT系のスペシャリストが不足しているリトアニアでは、技術系の人材が豊富なナイジェリアからの優秀な社員を呼び寄せている。コンピューターソフトウェア開発会社「テレソフタス」の人事部長を務めるガビヤ・サルキテ氏は、「プログラミングは経験が必要なものであり、需要に対して供給が伸びていない。ナイジェリアには、優秀な人材を選ぶことができる巨大な人材プールがあり、採用することで、企業が大きく成長した。」と話している。
OECD開発センターの移民・技能部門の責任者であるジェイソン・ギャニオン氏は、ヨーロッパへの外国人労働者の助けは必要不可欠だと断言している。「労働力不足は予測されている。欧州委員会が作成した報告書では、欧州で不足する主な28の職業が明らかになった。アフリカは需要のある分野で最新技術を教えることに力を入れている。アフリカからの人材の供給が期待できる」と述べている。
閉じる
その他の最新記事