米司法省は、昨年夏に逮捕した元空軍勤務の女性に関し、米国家安全保障局(NSA、注後記)の機密情報をロシア政府に漏らそうとした罪等で起訴した。先月半ば、ロシア裁判所が、2018年末にスパイ容疑で逮捕した元米海兵隊員に禁固16年の有罪判決を申し渡したばかりであることから、米ロ間の囚人交換を想定しての審理進捗とみられなくもない。なお、10年前には、美しすぎるロシアスパイとして世間を賑わせたアンナ・チャップマン容疑者を含めた10人のロシア人が、ロシアで拘束されていた米国人と囚人交換が行われる等、これまでも何度か両国間で取引されている。
7月7日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「ウェストバージニア州出身の女性、NSA機密情報をロシアに漏洩しようとした罪で起訴」
米司法省は7月6日、ウェストバージニア州出身で、米空軍で執務していた際に、NSAの機密情報をロシア政府に渡そうとした罪で起訴した。
同省のプレスリリースによると、被告人はエリザベス・シャーリー(46歳)で、NSA情報を違法に持ち出した容疑に加えて、子の連れ去り禁止法違反の罪でも起訴されている。...
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7月7日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「ウェストバージニア州出身の女性、NSA機密情報をロシアに漏洩しようとした罪で起訴」
米司法省は7月6日、ウェストバージニア州出身で、米空軍で執務していた際に、NSAの機密情報をロシア政府に渡そうとした罪で起訴した。
同省のプレスリリースによると、被告人はエリザベス・シャーリー(46歳)で、NSA情報を違法に持ち出した容疑に加えて、子の連れ去り禁止法違反の罪でも起訴されている。
米連邦捜査局(FBI)のマイケル・クリスマス特別捜査官は、“同被告は、機密情報秘匿義務を怠り、国防に関わる重要情報をロシア高官に渡そうと企てた”とコメントした。
また、検察官によれば、同被告は2001年から2012年の間に、米海軍情報局、国防総省、エネルギー省、また米国家サイバー事件特殊任務部隊等で執務しており、機密情報取り扱い資格も保有していたという。
更に、同検察官によれば、2019年7月に一時預かった自身の6歳の女児を、親権を持つ父親(同被告と離婚後、別の女性と婚姻)に戻す約束を破り、メキシコシティに女児を連れて逃亡したという。
そして、同年8月にメキシコシティのホテルで逮捕された際、NSA機密情報文書を隠したコインロッカーの鍵(同文書はウェストバージニア州のマーティンズバーグで発見)及びその他機密情報を格納した電子機器を保有していたという。
なお、同被告は、国家機密漏洩罪で最長10年の禁固刑かつ25万ドル(約2,680万円)の罰金、また、子の連れ去り罪で最長3年の禁固刑かつ25万ドルの罰金が科せられる可能性がある。
同日付『エアフォース・タイムズ』紙(1947年創刊の現役・退役空軍兵等向け新聞):「元空軍勤務の女性、ロシアに国防関係機密情報漏洩しようとした罪で起訴」
米司法省検察官によれば、シャーリー被告はメキシコシティで逮捕さる直前、ロシア高官宛に機密情報を“至急便”で送付しようと試み、同時に、“(機密情報提供という)人生を賭けた行いに報いるよう”万一の場合に米国に送還されない国への任務換えをロシア側に要請する書簡を準備していたという。
NSAのジョン・ディマーズ次官補は、“シャーリー被告は、機密情報取り扱い資格を有する立場にありながら、国家安全保障に関わる機密情報を他国に漏洩しようとしたことで、米国民の信頼を裏切った”と糾弾した。
(注)NSA:米国防総省の情報機関。1952年設立。中央情報局(CIA)が主にヒューミントと呼ばれるスパイなどの人間を使った諜報活動を担当するのに対し、NSAはシギントと呼ばれる電子機器を使った情報収集活動とその分析、集積、報告を担当する。現長官はポール・ナカソネ米陸軍大将(56歳、日系三世)。
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