曖昧戦略が限界を迎える日本の立場(11月20日)
18日、バイデン大統領は2022年北京五輪に政治関係者らを派遣しないなどの外交的ボイコットの可能性を示唆した。バイデン大統領は今月末にも正式な判断を下すとしている。今回の発言の背景には中国人女子テニス選手をめぐる一連の問題や、ウイグル族への人権弾圧、台湾問題への中国の向き合い方に対し不信感を持っている米議会の圧力がある。
この流れに歩調を合わせるかのように19日、カートキャンベル・インド太平洋調整官が日米豪印4か国首脳によるクアッド首脳会談を来年に日本で開催する意向を示した。...
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18日、バイデン大統領は2022年北京五輪に政治関係者らを派遣しないなどの外交的ボイコットの可能性を示唆した。バイデン大統領は今月末にも正式な判断を下すとしている。今回の発言の背景には中国人女子テニス選手をめぐる一連の問題や、ウイグル族への人権弾圧、台湾問題への中国の向き合い方に対し不信感を持っている米議会の圧力がある。
この流れに歩調を合わせるかのように19日、カートキャンベル・インド太平洋調整官が日米豪印4か国首脳によるクアッド首脳会談を来年に日本で開催する意向を示した。実現すればバイデン氏の大統領としての初めての訪日となる。
バイデン大統領が五輪の外交的ボイコットに言及したことに対し、中国外務省は猛反発したが、その直後、鹿児島県沖の日本の領海に中国軍艦が侵入した。
中国軍艦による領海への侵入は7年ぶりとなる。さらに、中国海軍とロシア海軍の駆逐艦など計3隻が対馬海峡を南下した。同じ19日に今度は中国とロシアの爆撃機4機が日本海、東シナ海、太平洋を合同飛行した。日本に対する嫌がらせとも受け取れるが、これらの動きは何を意味しているのか。
引き金になっていると見られるのは、18日のバイデン大統領の北京五輪への外交的ボイコットに対し、岸田総理が「日本は日本の立場で物事を考えていきたい」と述べ、はっきりとした態度を示さなかったことにある。
中国・ロシアによる軍事的威嚇は米中の挟間で曖昧戦略をとる日本に対する当てつけであることは間違いない。さらに米国がクアッド首脳会談の開催を岸田総理でなく、キャンベル調整官が発表することは米国が日本に対して感じているもどかしさの表れであるかも知れない。前駐日大使の共和党・ハガティ上院議員も水面下で外交的ボイコットを行うよう日本に圧力をかけてきているという。
岸田総理は米国陣営、中国陣営双方から「旗幟鮮明にせよ」と迫られている格好となっている。月末に米国の北京五輪外交的ボイコットが正式決定すれば、同盟国や友好国の判断にも大きな影響が出ることは間違いない。
例えばクアッドのメンバー国である豪州、インドが米国の決定に同調した場合、日本だけ異なる判断をするというわけにはいかなくなる。日本としての立ち位置をはっきりさせなければならない時期が迫ってきているのかもしれない。
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米国中国・記者の取材ビザなど制限緩和で合意(11月18日)
米国と中国の両政府は、相手国の記者に対し取材ビザなどの制限をそれぞれ緩和することで合意したと明らかにした。
米中両国は、去年、メディアへの対応をめぐっても対立を深め、米国・トランプ前政権が中国人記者の取材ビザの有効期間に制限を設けた一方、中国は米国の一部の有力紙の記者に記者証の返却を求め、中国での取材活動を認めないなど激しい応酬となった。
中国外務省・趙立堅報道官は「合意は、苦労して得られた成果だ」とコメントした。
米中首脳会談のねらい「利害一致の分野で協力」(11月16日)
最も重視しているのは気候変動対策と新型コロナ対策である。特に気候変動対策では温室効果ガスの世界最大の排出国の中国の協力は不可欠だとしていて、共同宣言を出して協力して取り組むことにした。
バイデン政権は中国と利益が一致すれば協力するという姿勢で向き合っていきたい考えである。また中国とは政治体制の違いから対立ばかりが目立つが、中国・習近平国家主席としては米国との関係をうまくコントロールするきっかけにしたいと考えている。...
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最も重視しているのは気候変動対策と新型コロナ対策である。特に気候変動対策では温室効果ガスの世界最大の排出国の中国の協力は不可欠だとしていて、共同宣言を出して協力して取り組むことにした。
バイデン政権は中国と利益が一致すれば協力するという姿勢で向き合っていきたい考えである。また中国とは政治体制の違いから対立ばかりが目立つが、中国・習近平国家主席としては米国との関係をうまくコントロールするきっかけにしたいと考えている。外交関係は安定させておきたいのが本音である。
米中関係が冷え込んでいる中で行われる会談であるが、米国・バイデン政権の高官は米国にとって3つの狙いがあるとしている。衝突を防ぐガードレール形成、人権問題などの懸念を直接伝える、利害一致の分野で協力の模索である。
「ガードレール」とはどのようなものなのか。懸念されるのは互いの意図の読み誤りによる偶発的な衝突である。
バイデン政権は世界中に影響が及ぶ台湾海峡有事などの事態を防ぐため台湾のチャンネルを開いておくことを「ガードレール」という言葉で表現している。
米国オバマ政権で東アジア政策を担当したダニエルラッセル元国務次官補は双方のチャンネルを開いておくためにはトップ同士の会談が必要だと指摘する。
中国は大半についてはこれまでの方針を変えることはなく、バイデン政権発足後、米国は台湾への関与を強めているとして神経をとがらせている。
台湾が設定する防空識別圏の中国軍機の侵入など、軍事的圧力を強めている背景にはバイデン政権に対するいらだちもあるとみられる。
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2022年にTPP入りを目指す中国(11月13日)
12日、APEC・アジア太平洋経済協力機構のオンライン首脳会議が開幕した。この中で中国・習近平国家主席は「開放はアジア太平洋協力の生命線だ」とTPPへの加入を熱望した。
これに対し岸田首相は「TPPは不公正な貿易慣行・経済的威圧とは相いれない21世紀型のルールを規定する協定だ」とけん制するなど、TPPをめぐって日中のバトルが展開された。
TPPに加入申請する中国の狙いは何なのかといえば、圧倒的な経済力を武器にTPPの主導権を握り、環太平洋地域で経済的影響力を増大化させ、米国に圧力をかけることで米中覇権争いで優位に立つためと考えられる。...
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12日、APEC・アジア太平洋経済協力機構のオンライン首脳会議が開幕した。この中で中国・習近平国家主席は「開放はアジア太平洋協力の生命線だ」とTPPへの加入を熱望した。
これに対し岸田首相は「TPPは不公正な貿易慣行・経済的威圧とは相いれない21世紀型のルールを規定する協定だ」とけん制するなど、TPPをめぐって日中のバトルが展開された。
TPPに加入申請する中国の狙いは何なのかといえば、圧倒的な経済力を武器にTPPの主導権を握り、環太平洋地域で経済的影響力を増大化させ、米国に圧力をかけることで米中覇権争いで優位に立つためと考えられる。
中国はGDP世界第2位であり、2030年には米国を抜き世界1位になる見込みである。その中国が入ればTPPにとっては本来歓迎すべきことであるはずである。日本や豪州はTPPには原則があり、その原則を踏み外してはならないと考えている。その原則とは、TPPというものが米国が中心となって、対中包囲網のために作られた経済協定であるということであり、政治的色彩が強いものということである。
そうしたTPPの本来の理念を忠実に守っているのが日本と豪州であり、その一方で純粋な経済協定として中国のTPP入りを歓迎しているのは来年議長国となるシンガポールである。
TPPは全会一致でないと加入できないため、日本、シンガポール、豪州、ブルネイ、ニュージーランド、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、チリ、ペルーの賛成が必要となるが、水面下で中国はそれぞれの国にロビイング活動を展開している模様である。
北京五輪の実施、有人宇宙ステーションの完成などと並んでTPPの加入達成というのが2022年の中国の大目標となっている。
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関係修復へ・米中首脳会談開催へ・初のオンライン形式で(11月13日)
米国・ホワイトハウス・サキ報道官は12日声明を発表し“バイデン大統領と中国・習近平国家主席によるオンラインでの首脳会談が米国東部時間の15日(日本時間の16日)に行われる”と発表した。
両首脳がオンラインで顔を合わせる形式の会談は初めてとなる。
米国は“最大の競合国”と位置づけ向き合う上で“新たな冷戦は望まない”とし”衝突ではなく競争を望む”とする姿勢だが安全保障や先端技術などをめぐり両国の緊張が高まる中で関係修復に向けたきっかけとなるかが焦点となる。
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