中国:四中全会終わる(11月3日)
~党の指導を前面に~
10月28日~31日まで中国で第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が開催された。習近平総書記はそこで「中国の特色のある社会主義制度」を唱えた。鄧小平が語っていた「中国の特色のある社会主義」に「制度」の二文字を付け加えただけだが、この二つは似て非なるものである。中国はあたかも40年以上前に戻ってしまったようだ。...
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~党の指導を前面に~
10月28日~31日まで中国で第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が開催された。習近平総書記はそこで「中国の特色のある社会主義制度」を唱えた。鄧小平が語っていた「中国の特色のある社会主義」に「制度」の二文字を付け加えただけだが、この二つは似て非なるものである。中国はあたかも40年以上前に戻ってしまったようだ。
今回の四中全会の開催は異例尽くしであった。本来党大会の翌年の秋に開催され、経済政策も含めて5年間の中国の政策を議論する三中全会であるが、第19期では2018年2月三中全会が開催され、国家主席の任期を撤廃する憲法改正案が議論され、経済方針が示されることはなかった。このため2018年秋、あるいは全人代の前の2019年2月にも四中全会が開催され、経済政策が議論されるのではないかとみられていたが、結局2019年10月末の開催となり、経済政策は後方においやられた。
重点的に話し合われたのは中国共産党の権威を持ち上げることであった。「党の初心と使命を堅守する」「党中央の権威と集中統一指導をしっかり守る」「党の全面的指導制度を健全化する」「党の執政能力と指導レベルを高める」「全面的で厳格な党内統治制度を整備する」などであった。
経済政策については「社会主義基本経済制度」なる何を示しているのかわからない言葉が使われ、「公有制を主体」にすることが重ねて強調された。1992年の鄧小平の「南巡講話」以降路線として取り入れられ、93年には憲法にも盛り込まれた「社会主義市場経済」は影を潜めてしまった。改革開放政策以来、中国での共産党の正統性は高度成長にあったのだが、かつてのような高度成長を見込めない現在、党に対する新たな権威付けを必要としたのか、あるいは経済成長を犠牲にしてでも党の権威付けを図りたかったのだろうか。
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またも持ち出す「国家安全条約」(11月2日)
「市民の権利」や「自由の享受」が制限される法案だとして2003年に香港で大規模な反対運動が起き、先送りにされてきた背景をもつ悪名高い「国家安全条例」を中国本土がまたしても持ち出した。2003年にはこの法案を廃案に追い込むため50万人の市民が反「国家安全条例」デモに参加した。中国本土は香港に対しこの「国家安全条例」の早期の立法化を迫っている。4中全会が採択したコミュニケの中でこの法案が盛り込まれたことについて、沈全人代常務委員会・香港基本法委員会主任は「中国は香港政府が法の執行能力を強化することを支持する」「中国は一国一制度へのいかなる挑戦も容認しない」と法案への理解を求め、一国一制度に反対する香港市民に対する強硬姿勢を改めて打ち出した。...
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「市民の権利」や「自由の享受」が制限される法案だとして2003年に香港で大規模な反対運動が起き、先送りにされてきた背景をもつ悪名高い「国家安全条例」を中国本土がまたしても持ち出した。2003年にはこの法案を廃案に追い込むため50万人の市民が反「国家安全条例」デモに参加した。中国本土は香港に対しこの「国家安全条例」の早期の立法化を迫っている。4中全会が採択したコミュニケの中でこの法案が盛り込まれたことについて、沈全人代常務委員会・香港基本法委員会主任は「中国は香港政府が法の執行能力を強化することを支持する」「中国は一国一制度へのいかなる挑戦も容認しない」と法案への理解を求め、一国一制度に反対する香港市民に対する強硬姿勢を改めて打ち出した。「国家安全条例」は「反逆、国家分裂、反乱扇動、中央政府転覆、国家機密窃取、海外の政治団体との連携」を禁じる香港基本法23条を具現化するものとされており、今後、民主派からの反発を招くことは必至の情勢であり、香港の混乱はさらに悪化し歯止めが利かなくなる可能性がある。沈主任は「中央政府から与えられた権力を法に基づき行使する」「過激な抗議活動は徹底的に排除する」との考えを示しており、香港当局が中国共産党政府のお墨付きを得て抗議行動をこれまで以上に徹底的に抑え込んでくる可能性がある。
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中国外交部:圧力と制裁だけでは朝鮮半島問題は解決できない(10月29日)
28日の定例記者会見で、中国外交部の耿爽報道官は、「圧力と制裁だけでは朝鮮半島問題は解決できない」と回答した。記者から「27日に北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長が米国に対し、『年末までに朝鮮に対する新しい考え方を示すように』と語り、朝米会談の期限を年末までに区切り、国連の対朝制裁について何度も言及しているが、これに対し、中国はどのように考えているか」という質問への回答であった。
耿爽報道官は、「朝鮮半島問題は政治的対話による平和的解決しかないと中国は考えている。...
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28日の定例記者会見で、中国外交部の耿爽報道官は、「圧力と制裁だけでは朝鮮半島問題は解決できない」と回答した。記者から「27日に北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長が米国に対し、『年末までに朝鮮に対する新しい考え方を示すように』と語り、朝米会談の期限を年末までに区切り、国連の対朝制裁について何度も言及しているが、これに対し、中国はどのように考えているか」という質問への回答であった。
耿爽報道官は、「朝鮮半島問題は政治的対話による平和的解決しかないと中国は考えている。米朝双方が常に接触を保ち、有効な解決方法を探し出すことを願っている。また圧力と制裁では問題は解決できず、安保理は半島問題の進展に伴って、タイミングを逃さずに討論を行うべきである。中国は朝鮮半島情勢のために今後も建設的な役割を果たして行く」とも述べた。
北朝鮮の非核化についてはまだ道筋は見えていないし、年内の米朝対話も難しそうな状況である。今回の耿爽報道官の回答には目新しいものはあまりなかったが、約1カ月ぶりに北朝鮮情勢にふれたところを見ると、中国が北朝鮮問題にこれまでと異なるアプローチ、例えば段階的非核化を北朝鮮並びに国際社会に働きかけていく、ことを決意したのかもしれない。
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ペンス演説:昨年の焼き直しだが、少し変化(10月25日)
24日に米国のペンス副大統領が、不公正な貿易慣行、人権・宗教弾圧を正すように中国に対して引き続き包括的な圧力を加えて行くとの演説を行ったことに対し、「環球時報」(電子版)は25日に、「ペンス演説は昨年の演説の焼き直しだが、変化もあった」とする社説を掲載した。
昨年10月4日のペンス副大統領の演説では、「中国が知的財産権を窃盗」「南シナ海を軍事基地化」しているなどと強く非難していたことから、「新冷戦」の始まりを告げるものではないかとも見られていた。...
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24日に米国のペンス副大統領が、不公正な貿易慣行、人権・宗教弾圧を正すように中国に対して引き続き包括的な圧力を加えて行くとの演説を行ったことに対し、「環球時報」(電子版)は25日に、「ペンス演説は昨年の演説の焼き直しだが、変化もあった」とする社説を掲載した。
昨年10月4日のペンス副大統領の演説では、「中国が知的財産権を窃盗」「南シナ海を軍事基地化」しているなどと強く非難していたことから、「新冷戦」の始まりを告げるものではないかとも見られていた。
25日の社説では、ペンス副大統領の演説の中国に対する描写は昨年とほとんど同じであったが、副大統領が米中関係を改善させようとする積極的な態度も見られ、米国は中国に対しデカップリングをせずに、両国関係の明るい未来を希望していることを強調しているようだ、と述べている。
またペンス演説の主題は米国の現在の政策の賛美であり、中国への強硬政策が偉大であると強調しているが、これは昨年と同じ論調であり、昨年は中間選挙の前の選挙対策用の論調であり、今年もまた来年の大統領選挙を控えての票集めのためだろうと、理解を示している。
ペンス演説によって、11月に行われるAPECでの米中首脳会談に影響が出るのではないかとの懸念も聞かれるが、中国側もようやく合意に達した貿易協議をご破算にはしたくないようで、ペンス演説ショックをやわらげようとしている。
社説は最後に「我々は、米国が中国や世界各国と共に有意義な行動を起こすことを拒絶せず、平和な21世紀を創造するための米国の力量と知恵に期待している」と述べてさえいるのである。
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中国大型代表団、サモア訪問(10月22日)
20日にサモアで開催された中国・太平洋島嶼国経済開発協力フォーラムに参加するため、胡春副総理を代表とする政財界人250名で構成される大型代表団がサモアを訪問している。
胡春副総理は開幕式での講演で、中国の島嶼国に対する貿易、農業、漁業、観光業、インフラ建設や気候変動問題での協力を語っていた。これまで太平洋島嶼国に対する最大の援助国であったオーストラリアは、中国の影響力が一段と強まるのではないかと警戒している。...
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20日にサモアで開催された中国・太平洋島嶼国経済開発協力フォーラムに参加するため、胡春副総理を代表とする政財界人250名で構成される大型代表団がサモアを訪問している。
胡春副総理は開幕式での講演で、中国の島嶼国に対する貿易、農業、漁業、観光業、インフラ建設や気候変動問題での協力を語っていた。これまで太平洋島嶼国に対する最大の援助国であったオーストラリアは、中国の影響力が一段と強まるのではないかと警戒している。
また今年9月にはソロモンとキリバスが相次いで台湾と断交し、中国と国交を樹立したことから、台湾も今後の中国と太平洋島嶼国との関係の推移に警戒を寄せている。両国との断交により、台湾と国交を有している太平洋島嶼国はツバル、マーシャル諸島、パラオ、ナウルの4か国となり、全世界ではこの4か国を含め14か国となっている。
なお中国・太平洋島嶼国経済開発協力フォーラムの第1回はフィジーで開催され、中国が3億元の融資を約束、第2回は広州で開催され、10億㌦の融資を約束した。
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