金正恩、金剛山を視察、韓国側施設撤去せよ(10月23日)
金正恩委員長は金剛山を視察し、韓国側施設の撤去を命じた。「観光地を提供して利益を得ようとした先任者の誤った政策」「南に依存した政策」として先任者、即ち父親である金正日総書記を批判した。
金剛山は北朝鮮の景勝地であり、韓国人の金剛山観光は、金正日時代の1998年に海路での、2003年からは陸路での観光が開始された。観光施設は韓国の現代グループが建設したもの。金剛山観光は、韓国の金大中元大統領が行った太陽(包容)政策による南北協力事業の象徴的な事業の一つであった。...
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金正恩委員長は金剛山を視察し、韓国側施設の撤去を命じた。「観光地を提供して利益を得ようとした先任者の誤った政策」「南に依存した政策」として先任者、即ち父親である金正日総書記を批判した。
金剛山は北朝鮮の景勝地であり、韓国人の金剛山観光は、金正日時代の1998年に海路での、2003年からは陸路での観光が開始された。観光施設は韓国の現代グループが建設したもの。金剛山観光は、韓国の金大中元大統領が行った太陽(包容)政策による南北協力事業の象徴的な事業の一つであった。ただし2008年に北朝鮮兵士によって韓国人観光客が射殺される事件が起こり、韓国人の金剛山観光は中断していた。
金正恩委員長は、韓国側施設を撤去した後に、北朝鮮によって現代的施設を建設するようにと指示しており、金剛山観光そのものは否定していない。観光事業は、国連の経済制裁に含まれていないこともあり、北朝鮮が力をいれている分野で、金剛山も北朝鮮独自の観光を行っていきたいと考えているものと思われる。
ただし南北朝鮮の協力事業の象徴的存在であった金剛山の韓国側施設の撤去を進めることは、南北協力を否定していることにもなる。韓国の協力を得なくても、北朝鮮で独自の開発が行えるということを示すことになる。このことは韓国が2018年の南北首脳会談で約束した南北協力事業が進まないことへの苛立ちであると共に、今後は韓国との融和路線を採らないとの宣言にも思われる。
韓国側施設撤去ということ以上に驚かされるのは、先任者批判をしていることである。金正恩委員長としては、「白頭の血統」と呼ばれる金日成、金正日と代々受け継がれてきた一族であることが政権の正統性を示すものの一つであっただけに、父親批判を続ければ、今後自らの正統性をも否定しかねないことになる。父親批判は金剛山観光に留まるのか、あるいは父親批判が金剛山観光以外にも及ぶのか、さらに祖父である金日成批判にも繋がるのかが今後の鍵となる。
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水産庁・漁業取締船と北朝鮮漁船・衝突動画公開(10月19日)
水産庁は能登半島沖の日本海で北朝鮮の漁船と漁業取締船「おおくに」が衝突した際の動画をホームページで一般に公開し広く理解を得たい考えである。
北朝鮮側は船員の生命を脅かしたとして日本側に賠償と再発防止を求めている。
北朝鮮情勢を追う(10月19日)
(金委員長が聖地・白頭山を訪問)
朝鮮中央通信が白馬にまたがって白頭山を訪問する金正恩朝鮮労働党委員長の写真を公開した。カリスマ性を際立たせるための演出という扱いで多くのメディアにはこのイベントが取り扱われているが、金委員長の白頭山訪問にはもっと大きな意味が隠されている。もともと白頭山は金委員長の祖父である金日成主席が抗日パルチザンの拠点を構築していた場所であり、北朝鮮誕生の源と呼んでもよい場所である。...
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(金委員長が聖地・白頭山を訪問)
朝鮮中央通信が白馬にまたがって白頭山を訪問する金正恩朝鮮労働党委員長の写真を公開した。カリスマ性を際立たせるための演出という扱いで多くのメディアにはこのイベントが取り扱われているが、金委員長の白頭山訪問にはもっと大きな意味が隠されている。もともと白頭山は金委員長の祖父である金日成主席が抗日パルチザンの拠点を構築していた場所であり、北朝鮮誕生の源と呼んでもよい場所である。1942年に金正恩の父親である金正日総書記が生まれたことも合わさり北朝鮮の聖地とされている。金正日誕生の直前には偉大なる指導者誕生の予兆として白頭山の空に二重の虹がかかり、光輝く新星が現れたと北朝鮮では言い伝えられている。何か重大な決断を行う直前には必ずといっていいほど金委員長はこの地を訪れており、そのことは歴史を遡ってみてみればよくわかる。2013年、白頭山の登頂直後の12月12日には北朝鮮ナンバー2だった叔父のチャンソンテクに「反党・反革命分子」の罪状で死刑を宣告し、その場で処刑を執行した。2015年、白頭山に行った時には軍のナンバー2を処刑した。さらに2016年11月27日に白頭山を訪問した直後の翌年年頭、金委員長は「ICBMの発射実験が最終段階に達した」と表明し、2017年11月29日に、ついにICBM火星15号の発射実験を成功させた。金委員長は2018年にも白頭山詣でを行い、その際には米朝首脳会談、南北首脳会談が実現している。
(対決モードを湾曲的に表明)
では今回の白頭山訪問はどんな狙いがあり、どのような結果をもたらすのだろうか。白頭山訪問の狙いはまず金委員長が主張するように年内に米朝首脳会談を開くよう米国に圧力をかける狙いがある。米朝首脳会談を開く場合には、北朝鮮への経済制裁を緩和させることが絶対条件だとしている。年内にそれができない場合にはICBM発射実験を再開するというメッセージが金委員長の白頭山訪問には込められている。朝鮮中央通信で公開された金委員長の写真とともに添えられた「米国をはじめとする敵対勢力が我が人民に強いてきた苦痛はもはや怒りに変わった」というメッセージが何よりもその如実な裏付けとなっている。さらに同行した党幹部による「世界が驚く雄大な作戦が繰り広げられるものと確信している」とのメッセージも米国への圧力を補強するものと受け取っていい。おりしも日本も日本の水産庁漁業取締船と北朝鮮漁船との衝突事件に関し、賠償を請求する北朝鮮の訴えを退け日本側が全面的に正しいことを証明する動画を公開し北朝鮮側の反発が必至な情勢となっている。ICBM発射実験が行われば2020年大統領選挙を控えたトランプ大統領にとっては痛手に違いないが、国内問題で追い込まれているトランプ大統領に見切りをつけ北朝鮮はもはや柔軟路線から米国・日本に対する戦闘モードに入ったことを湾曲的な形で発表した可能性がある。ここ数週間のうちに潜水艦からのSLBM発射実験や人工衛星発射なども行うのではないかという予測が出ており、北朝鮮の動きに警戒が必要だ。
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金正恩の白頭山登頂が意味することは?(10月18日)
16日の「朝鮮中央通信」は金正恩委員長が白馬に騎乗して白頭山に登頂し、その後三池淵郡に視察に行ったことを伝えていたが、17日の「朝鮮中央通信」は社説で、金正恩委員長の白頭山登頂を「朝鮮革命史で歴史的な出来事になる」としたうえで、「社会主義建設の新しい勝利に向かって総突撃しよう」と強調した。
金正恩委員長がこれまで三池淵郡の経済建設に力を注いできたことからすれば、国際社会からの経済制裁をものともせずに、経済強国になることを宣言しているようにも見えるが、一方で金正恩委員長は三池淵郡で次のように語っている。...
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16日の「朝鮮中央通信」は金正恩委員長が白馬に騎乗して白頭山に登頂し、その後三池淵郡に視察に行ったことを伝えていたが、17日の「朝鮮中央通信」は社説で、金正恩委員長の白頭山登頂を「朝鮮革命史で歴史的な出来事になる」としたうえで、「社会主義建設の新しい勝利に向かって総突撃しよう」と強調した。
金正恩委員長がこれまで三池淵郡の経済建設に力を注いできたことからすれば、国際社会からの経済制裁をものともせずに、経済強国になることを宣言しているようにも見えるが、一方で金正恩委員長は三池淵郡で次のように語っている。
「国の状況は敵対勢力たちの執拗な制裁と圧殺で依然として厳しく」「米国を中心とする反共和国敵対勢力が我が人民に強要してきた苦痛は・・・そのまま我が人民の憤怒に変わった」というのである。
米朝実務者協議が物別れに終わった後であることを考えれば、経済制裁が当分続くので、人民に改めて覚悟を要請したともとれる。一方で金正恩委員長が白頭山に登頂するのはなんらかの路線変更の決意の示唆であり、また「革命史で歴史的な出来事」とされる事態であるならば、これまで凍結していたICBMの発射や核実験の再開など、軍事優先路線の復活を意味している可能性もある。
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無観客、無中継、無得点のサッカー南北戦(10月17日)
15日平壌で、2022年にカタールで開催されるサッカー・ワールドカップの2次予選の韓国対北朝鮮の試合が開催されたが、韓国側の応援団だけでなく、北朝鮮側の応援団もいない無観客試合となった。この試合は生中継もなく、韓国からの取材陣の入国も許可されず、試合は0-0のスコアレスドローに終わった。韓国の取材陣のみならず、北朝鮮駐在の他の外国メディアの取材も許可されなかった模様。
北朝鮮ではサッカーを重視しているために絶対に勝つ自信がなかったことが招いた事態であったのかもしれないが、2019年になってから、北朝鮮が韓国、とくに文在寅大統領に対する非難を強くしていることからすれば、北朝鮮の韓国に対する圧力ともとれる。...
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15日平壌で、2022年にカタールで開催されるサッカー・ワールドカップの2次予選の韓国対北朝鮮の試合が開催されたが、韓国側の応援団だけでなく、北朝鮮側の応援団もいない無観客試合となった。この試合は生中継もなく、韓国からの取材陣の入国も許可されず、試合は0-0のスコアレスドローに終わった。韓国の取材陣のみならず、北朝鮮駐在の他の外国メディアの取材も許可されなかった模様。
北朝鮮ではサッカーを重視しているために絶対に勝つ自信がなかったことが招いた事態であったのかもしれないが、2019年になってから、北朝鮮が韓国、とくに文在寅大統領に対する非難を強くしていることからすれば、北朝鮮の韓国に対する圧力ともとれる。
一方文在寅大統領は2032年のオリンピックのソウル・平壌共同開催を唱えているが、韓国国内ですら、この案が非現実的だとの非難が強くなっている。2032年どころか、2020年の東京オリンピックの際の南北合同チームの結成についても、北朝鮮からの回答がよせられていない。自身の支持率の下落に悩む文在寅大統領にとってみれば、「平昌オリンピックの夢よ、もう一度」ということかもしれないが、夢は儚く散ってしまいそうである。
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