ローマ教皇;長年緊張関係にあったロシア正教トップと今年9月に直接会談【米・アラブ首長国連邦メディア】(2022/04/13)
ローマ教皇庁は4月11日、フランシスコ教皇(85歳、2013年就任)が今年9月、カザフスタン(1991年旧ソ連より独立)で開催される「世界伝統的宗教指導者会議(CLWTR、注1後記)」に出席し、そこで長年緊張関係にあったロシア正教会(モスクワ総主教庁、注2後記)トップのキリル1世(75歳、2009年就任)と直接会談することになったと発表した。
4月12日付米
『カトリック教通信』(CNA、2004年設立、本部コロラド州デンバー)は、「フランシスコ教皇、9月にカザフスタン訪問」と題して、カザフスタンで今年9月に開催されるCLWTRに出席し、そこでキリル1世モスクワ総主教と直接会談すると報じている。
ローマ教皇庁は4月11日、フランシスコ教皇が今年9月にカザフスタンを訪問すると発表した。
9月14~15日に首都ヌルスルタンで開催される第7回CLWTRに出席するもので、カザフスタンのカシム-ジョマルト・トカエフ第2代大統領(68歳、2019年就任)が、4月11日に同教皇とテレビ会議を行った後に公表していた。...
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4月12日付米
『カトリック教通信』(CNA、2004年設立、本部コロラド州デンバー)は、「フランシスコ教皇、9月にカザフスタン訪問」と題して、カザフスタンで今年9月に開催されるCLWTRに出席し、そこでキリル1世モスクワ総主教と直接会談すると報じている。
ローマ教皇庁は4月11日、フランシスコ教皇が今年9月にカザフスタンを訪問すると発表した。
9月14~15日に首都ヌルスルタンで開催される第7回CLWTRに出席するもので、カザフスタンのカシム-ジョマルト・トカエフ第2代大統領(68歳、2019年就任)が、4月11日に同教皇とテレビ会議を行った後に公表していた。
同教皇庁のマッテオ・ブルーニ報道官(45歳、2019年就任)は、“4月11日朝の同大統領とのテレビ会議において、教皇がカザフスタンを訪問することが決まった”と追認した。
更に、CLWTR出席に当たって、同教皇とキリル1世モスクワ総主教との会談を設定することがカザフスタン側に求められている。
同総主教は、ロシアのウクライナ軍事侵攻(ロシアは特別軍事作戦と呼称)を支持すると公表している。
仮に直接会談が実現すると、両トップとして2度目の会談となるが、『ロイター通信』報道によると、両トップの会談は、双方が6月にレバノンを訪問する際に実現する可能性があるという。
同教皇のカザフスタン訪問は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題発生前から準備が進められていて、駐バチカン市国カザフスタン大使が2020年、翌年開催予定とされた第7回CLWTRに出席する可能性が“非常に高い”と発言していた。
COVID-19感染問題で、当該会議が今年に順延されたが、同教皇は元々の計画に沿って今年の会議に出席する運びとなったものである。
カザフスタンは130余りの民族、18もの宗教を抱える多文化社会であるが、その中でイスラム教(スンニ派)が最大(約70%)で、次いでキリスト教(約26%、うちロシア正教約20%)である。
かかる状況下、フランシスコ教皇は2019年、ウクライナ・ギリシア・カトリック教会(正式にはウクライナ東方カトリック教会、1596年設立)の信徒が1万人に達したことから、カラガンダ(首都南東部)にビザンチン・カトリック教会の管理教区を設置することを認めている。
なお、同教皇庁によれば、同教皇は6月にレバノンを訪問した後、7月2~5日にコンゴ民主共和国(中部アフリカ、1960年ベルギーから独立、元ザイール共和国)、7月5~7日に南スーダン(東アフリカ、2011年に東隣りスーダンから分離独立)を訪問する予定である。
一方、同日付アラブ首長国連邦『ザ・ナショナル』紙(2008年発刊の英字紙)は、「フランシスコ教皇、今夏にエルサレムでロシア正教総主教と会談」と題して、同教皇が今年6月にイスラエルのエルサレム(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖市)を訪問した際、モスクワ総主教と会談する予定だと報じた。
『ロイター通信』の4月11日付報道によると、フランシスコ教皇が今年6月にエルサレムを訪問し、その際にロシア正教トップのキリル1世モスクワ総主教と直接会談する予定だとする。
ローマ教皇とロシア正教総主教との会談が実現すれば、2016年にキューバで開催されて以来2度目となるが、そもそも2016年会談自体が、1054年の東西協会の分裂(注3後記)以来、双教会のトップの初の会談となっている。
しかし、同総主教は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻(ロシア流特別軍事作戦)を祝福しており、数多の正教会(1ヵ国に一つの教会を具えることが原則、ギリシア正教会・ルーマニア正教会・ブルガリア正教会・ジョージア正教会・日本正教会等)と大きく異なる対応となり、正教会内の分裂を引き起こしている。
なお、匿名条件の情報提供者によると、同教皇は6月12~13日にレバノンを訪問した後、6月14日にヨルダン首都アンマン経由エルサレムにヘリコプターで移動し、キリル1世と会談した後にローマにとんぼ返りする予定であるという。
(注1)ロシア正教会:1448年独立宣言、1589年承認されたロシアのキリスト正教。長らく、ローマ・カトリック教会とは緊張関係にある。なお、2022年4月、ロシアのウクライナ軍事侵攻について「あなたはロシアの戦士です。あなたの義務は、ウクライナの民族主義者から祖国を守ることです。あなたの仕事はウクライナ国民を地球上から一掃することです。あなたの敵は人間の魂に罪深いダメージを与えるイデオロギーです。」という免罪符を発行している。
(注2)CLWTR:2003年、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領(1991~2019年在任、現81歳)が主導して立ち上げ。3年に一度開催。この会議は、諸宗教・文明間のグローバルな対話が開始され、さまざまな国や社会における相互理解と尊重を促進するうえで、大きな役割を果たしている。なお、2021年が開催年だった第7回会議は、COVID-19感染問題で1年延期されている。
(注3)東西教会の分裂:キリスト教教会が、ローマ教皇を首長とするカトリック教会(西方教会)と、東方の正教会(ギリシア正教他)とに二分されたことをいう。「ローマ教皇とコンスタンティノープル総主教の相互破門」と言われる事件を契機とする。この東西教会の分裂は、多くのシスマ(分裂)の中でも史上最大規模だったことから、大シスマとも呼ばれる。
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バチカン市国;宗教弾圧激化の中国と締結した2018年暫定合意更新の動きに対して非難轟々【米メディア】(2020/10/15)
キリスト教ローマ・カトリック教会の法王庁(バチカン市国、1929年国家成立)は2018年、長年対立してきた司教の任命をめぐる協議について中国側と暫定合意した。しかし、それ以降、中国によるキリスト教徒、イスラム教徒、仏教徒への弾圧が益々厳しくなっていて、深刻な人権侵害も報告されていることから、バチカン市国の中国との関係復活への動きに大きな非難の声が上がっている。なお、同国は欧州で唯一台湾と外交関係にある。
10月13日付
『Foxニュース』:「バチカン市国に対して、中国共産党との暫定合意を更新しようとする動きに非難の嵐」
バチカン市国は目下、2年前に締結した中国共産党との暫定合意の更新に入ろうとしている。
しかし、中国はキリスト教徒にとって最も危険な国のひとつであることより、米高官のみならず人権活動家からも非難の声が上がっている。
2018年に締結された暫定合意の詳細な記述内容は明らかにされていないが、ローマ法王が全世界の教区ごとに司教を任命するとの制度の例外として、中国が独自に任命した司教を同法王が追認する内容が盛り込まれていると言われている。...
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10月13日付
『Foxニュース』:「バチカン市国に対して、中国共産党との暫定合意を更新しようとする動きに非難の嵐」
バチカン市国は目下、2年前に締結した中国共産党との暫定合意の更新に入ろうとしている。
しかし、中国はキリスト教徒にとって最も危険な国のひとつであることより、米高官のみならず人権活動家からも非難の声が上がっている。
2018年に締結された暫定合意の詳細な記述内容は明らかにされていないが、ローマ法王が全世界の教区ごとに司教を任命するとの制度の例外として、中国が独自に任命した司教を同法王が追認する内容が盛り込まれていると言われている。
宗教団体オープン・ドアーズ(注後記)米国支部のデビッド・カリー代表は『Foxニュース』のインタビューに答えて、“2018年の合意は暫定的なものであったが、悲惨な結果をもたらした”とし、“それ以降の2年間で、中国政府のキリスト教弾圧は強硬となり、不意に教会の礼拝が禁止され、当局の命令に従わない司教は拘束され、また、教会から十字架を撤去させられている”と訴えた。
そもそもバチカン市国は1950年代初め、当時の毛沢東(マオ・ツォートン、1893~1976年)主席時代に、教会が破壊されて宣教師も国外追放されたことから、中国との国交を断絶していた。
そして長い間、司教の任命について、バチカン市国の制度を無視して中国独自の方式を採用してきた。
カリー代表は、“バチカン市国は中国におけるキリスト教布教への関与を強めたいとの意向で暫定合意を締結したのかも知れないが、むしろ中国共産党の独自方針を追認する形になってしまった”とした上で、“何故なら、中国政府は司教任命に当たって中国共産党を礼賛することを条件付け、更に、国家監視機関が礼拝に誰が参加したか監視するようになったから”だと非難した。
また、米『カトリック教通信社』(2004年設立)の解説者は『Foxニュース』に対して、“ローマ法王庁は、中国との合意更新によって、中国の極端な宗教政策に異議を申し立てる機会を得ようとしているのかも知れないが、むしろそれ以上に中国側にメリットとなるのは、バチカン市国との連携強化によって、国際社会での中国の名声を向上させるという意図があるから”だと批評している。
とにもかくにも、トランプ政権が人権侵害や宗教弾圧等を理由に対中国強硬政策を展開している現状下、フランシスコ法王(83歳、アルゼンチン出身、2013年就任)の後ろ盾を得ることは、中国にとって願ってもない機会だと考えられる。
しかしながら、バチカン市国は9月下旬、マイク・ポンペオ国務長官の表敬訪問を拒絶した。
理由は、米大統領選直前であるため、政治的中立を保つために避ける必要があった、とされているが、中国にとって思う壺にはまったとほくそ笑んでいる。
一方、習近平(シー・チンピン)政権下で、宗教家らに対して、中国共産党のイデオロギーや共産主義の価値を礼賛することが義務化され、益々宗教弾圧が強まっている。
当局の命令に背いた信徒らは、深夜に突然“消息不明”になったり(当局による拘束)、暗い地下牢に閉じ込められて超法規的に死に追いやられたりしている。
米国在のジョセフ・グリーボスキ司教は、“中国におけるキリスト教徒迫害と人権侵害は想像を絶するもの”だと嘆いた。
なお、中国において迫害を受けているのはキリスト教徒に留まらず、100万人余りに及ぶウィグ族のイスラム教徒は強制的に収容所に押し込められて思想教育を受けさせられるだけでなく、女性は中絶や不妊治療を強いられている。
また、仏教を中心とした法輪功(ファールン・ゴン)の信徒は、恣意的に拘束され、ある者は強制的に臓器摘出され、またある者は拷問されたりしている。
そこで、カリー代表は改めて、“バチカン市国は中国とのこれ以上の連携は止め、教会は政治的介入を許さない神聖な場所であることを強くアピールすべき”だと強調している。
(注)オープン・ドアーズ:キリスト教徒が社会的及び法的に迫害されていると考えられている60以上の国家において、迫害されているキリスト教徒を支援する超教派の宣教団体。1955年設立。本部はオランダ。聖書・キリスト教文学作品の配布、音声録音、キリスト教放送及び信徒訓練の実施などにも関わっている。
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