スウェーデンメディアがみる米大統領選(2016/03/24)
社会福祉大国、男女平等のイメージを持つスウェーデン。「ダーゲンス・ニュヘテル紙」がローべン首相を含むスウェーデン議員を対象に調査を実施して100名から回答を得た。
『ダーゲンス・ニュヘテル紙』は「ほぼ半数がクリントン候補が望ましいと回答した」事を報じる。この調査では、与党の社会民主労働党や緑の党から右派まで議会の全8党の議員を対象する。内訳をみると、
*クリントン氏が49票で次にサンダース候補が30票
*クリントン氏がスウェーデン民主党の組織票に支えられたのに対し、サンダース候補は与党の社会民主党を含む左派か中道左派の政党から支持を得た。...
全部読む
『ダーゲンス・ニュヘテル紙』は「ほぼ半数がクリントン候補が望ましいと回答した」事を報じる。この調査では、与党の社会民主労働党や緑の党から右派まで議会の全8党の議員を対象する。内訳をみると、
*クリントン氏が49票で次にサンダース候補が30票
*クリントン氏がスウェーデン民主党の組織票に支えられたのに対し、サンダース候補は与党の社会民主党を含む左派か中道左派の政党から支持を得た。
*ローベン首相は民主党が大統領になる事を望み、共和党側の政治討論の論調を懸念し「ぞっとする」とコメント。クリントンとサンダース両候補のどちらかを選ぶ事は拒否。
『ザ・ローカル紙』が「右派もしくは中道右派とされる穏健党やキリスト教民主党を含めても、スウェーデンの政治は米国よりも左派より」と評する通り、左派社会スウェーデンを色濃く反映した。それでも3名の民主党議員がトランプ氏を支持する。「起業家としての実績と、勇敢で率直でメディアに迎合しない」点を評価する点では、米国のトランプ支持はと共通する。「米大統領選はクリントンとトランプの対決」との見方を示す。
米民主党には“デモクラッツ・アブロード/ Democrats Abroad”という民主党海外機関があり、世界各国に支部を持つ。この機関は2008年から世界中の在外米国人向けの大統領選の直接投票を実施し、その結果は1つの州と同等に扱われ、民主党指名候補選びに反映される。指名候補の党大会にデモクラッツ・アブロードから13名の議員と8名のスーパー議員を派遣する。18名の代表を派遣できるワイオミング州よりも多い。
「ザ・ローカル紙」によると、スウェーデン在留の米国人投票者の72%にあたる712名がサンダース候補を選んだ。全世界の在外米国人でも69%以上の絶対多数を獲得し、米国内との逆転現象が起きた。また在外米国人の得票率も前代未聞の高さで、論議をよぶ今回の大統領選の関心の高さが伺える。
『ラジオスウェーデン』も、米大統領選の関心の高さを報じ、前述のデモクラッツ・アブロードが組織する投票イベントに、これまでになく多くの米国人が投票に行った事を報じる。米共和党も海外支部をもつが比較的新しく小規模なため、民主党のような投票イベントをまだ始めていない。
閉じる
北欧メディアがみる難民財産押収(2016/02/05)
難民問題に苦慮する欧州では、受け入れ制限を強化する動きがみられる。中でも1月に、一定額以上の所持金や貴重品を没収する法案をデンマークが通過させた事は物議をかもし国際的な非難をよんだ。またスウェーデンも8万人の難民を国外強制送還する決定をした。
デンマークの
『ザ・ローカル紙』では「法律が誤解されている」と「恥ずべき」と賛否が分かれる。反移民や反イスラムを掲げるデンマーク国民党が現在の連立与党を構成するが、既に2005年当時の内閣に閣外協力を行い、デンマークはその時から移民規制へと向かった。
今回の資産押収の法律はその政治状況を反映するとも理解できるが、難民受入れに積極的だったスウェーデンを含む他国でも似た法律が存在する事をスウェーデンの
『ザ・ローカル紙』は伝える。...
全部読む
デンマークの
『ザ・ローカル紙』では「法律が誤解されている」と「恥ずべき」と賛否が分かれる。反移民や反イスラムを掲げるデンマーク国民党が現在の連立与党を構成するが、既に2005年当時の内閣に閣外協力を行い、デンマークはその時から移民規制へと向かった。
今回の資産押収の法律はその政治状況を反映するとも理解できるが、難民受入れに積極的だったスウェーデンを含む他国でも似た法律が存在する事をスウェーデンの
『ザ・ローカル紙』は伝える。
スウェーデン「ザ・ローカル紙」は「スウェーデンには不名誉なデンマークの法案と似た法律がある」と見出しをつけて「デンマークは、難民の貴重品を没収する事を認める容赦のない法律で、国民は赤っ恥に苦しむ」と批判的な見方を示すと同時に、スウェーデンでも同様の規則が20年以上存在する事には驚きをもって報じる。
スウェーデン版「ザ・ローカル紙」によると、スウェーデンの場合、1994年以来資産や収入があるとみられる難民には、食費や宿泊費を負担するよう求める。亡命受入れ法の下で、スウェーデン移民局は「難民滞在費用の妥当な支払い」を求める権限を付与され、雇用収入や資産がある者は誰でも妥当な額を支払う。また、移民局の広報担当によると「難民の収入の下限が明記されていない点でスウェーデンの法律の方がデンマークより厳しい」が、「没収の条項は殆ど適用されておらず、支払った人は皆無」で、「所持金なしと申告すれば、移民局が海外で調査する術はない」と広報担当は明かす。形骸化した法律だったため、世間を騒がす事がなかったようだ。
また、中道右派移民受入れ擁護のシンクタンク「ミグロ」のレビンダー氏が「スウェーデンとの最大の違い」として、「デンマークの法律は警察に難民を捜査させ、見返りなしの完全没収を行う」点と、「完全に任意で、滞在費を全額支払っている場合でも資産や所持金を押収させる」点を挙げ、問題点である事を示す。
またスウェーデン「ザ・ローカル紙」によると、スウェーデン以外にノルウェー、ドイツ、英国、スイスなどでも似た法律がある。昨年大量の移民が押し寄せたドイツのバイエルン地方では、現金と貴重品を一律750ユーロと引き換えに没収する。バイエルン社会省の広報担当は「難民は到着時に書類、貴重品、所持品の検査を受け、検査を拒否すれば警察がよばれる」事を確認した。ノルウェーでは、5000ノルウェークローネ以上の所持金をもつ亡命申請者は社会福祉を得る権利を失う場合もあるという決まりがあり、この部分に限れば「ノルウェーの法律はデンマークより厳しい」と弁護士の見解を引用し、スイスでも亡命申請受入れ費用を支払う事が求められる。
難民に冷たい事を敢えて示そうとしたデンマーク。イスラム社会に排斥的なサインを送り状況を悪化させるのか、破綻を避けるためのやむを得ない措置なのか。難民受け入れをプラスとするのに必要な法整備は何か。具体的に考えさせられる問題でもある。
閉じる
その他の最新記事