パリで同時多発テロ、イスラミックステートが犯行声明(第2報)(2015/11/17)
パリ同時多発テロの捜査が進むにつれ、実行犯グループの素顔が徐々に浮かび上がってきた。また、テロ襲撃犯がイスラム難民に紛れて潜入した疑いが浮上し、難民受け入れに対する影響を懸念されている。フランス政府は非常事態を宣言し、各国政府による国境閉鎖が相次ぐなど、テロ事件は欧州社会に深刻な打撃と不安を与えている。
11月15日付
『CBSニュース』は、仏警察が唯一生き残ったテロ実行犯の兄弟のサラ・アブディサラム(26歳)を国際手配し、行方を追っていると報じている。サラは、テロ攻撃に使ったレンタカーをベルギーで借りたことが判明しており、仲間2人と逃亡している。仏警察はテロ襲撃の数時間後、ベルギーとの国境付近でサラの乗った車を職務質問したがそのまま見逃してしまった。
死亡した7人のテロリストのうち3人はフランス国籍、2人はベルギー国籍である。...
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11月15日付
『CBSニュース』は、仏警察が唯一生き残ったテロ実行犯の兄弟のサラ・アブディサラム(26歳)を国際手配し、行方を追っていると報じている。サラは、テロ攻撃に使ったレンタカーをベルギーで借りたことが判明しており、仲間2人と逃亡している。仏警察はテロ襲撃の数時間後、ベルギーとの国境付近でサラの乗った車を職務質問したがそのまま見逃してしまった。
死亡した7人のテロリストのうち3人はフランス国籍、2人はベルギー国籍である。
●オマル・イスマエル・モステファイ(30歳):パリ南部郊外に住むフランス国籍のアルジェリア人で、劇場襲撃の主犯とみられている。2004~2010年に8回の逮捕歴があり、2010年にフランス治安当局の過激派監視リストに入っている。熱心なイスラム教徒であり、2013~14年の間にシリアに渡航した形跡がある。モステファイの家族や仲間7人が拘束されている。
●アマド・アルモハマド(25歳):シリア人。競技場で自爆。但し、傍で見付かったパスポートは偽造とみられる。ギリシャ当局によるとアルモハマドは、10月3日にギリシャに入国、同7日にマケドニア経由でセルビアに入国している。
●イブラヒム・アブデスラム(31歳):ベルギー在住。テロ襲撃に関わったフランス人3人兄弟の1人で自爆死した。
●ヨセフ・サラヘル:27歳のエジプト人
●ビライ・ハドフィ:20歳のフランス国籍
●ベルギー人2名(氏名不詳)
また、仏捜査当局は、テロ襲撃犯が着用していた自爆用ベストには過酸化アセトンという強力であるが不安定な爆薬が使われていることを明らかにした。このベストは、ヨーロッパで爆薬の専門家が作ったものと推定される。
11月16日付
『ロイター通信』は、ベルギーのモーレンベークが、イスラム過激派の欧州での拠点になっていると報じている。モーレンベークは、ベルギーのブリュッセル首都圏地域に位置する19の基礎自治体の一つであり、ベルギー国内の約50万人のイスラム教徒の多くが住む地域にある。ベルギーは地方分権が強く、フランス語圏とオランダ語圏での対立があるため、治安当局の仕事はやりにくい。また、ベルギーは湾岸諸国からイスラム原理主義者の移住を受け入れてきたことに加え、巨大な武器の闇市場がある。このため、イスラム過激派にとっては格好の隠れ場所になっている。
オランダ・レーデン大学テロ・テロ対策センターのエドウィン・バッカー教授は、「ブリュッセルではベルギーに帰属意識を持たず、非常に孤立していて警察の目が届かない地域が幾つかある」と語っている。また政治状況が複雑なため、イスラム教会での憎しみを煽る説教やシリアでの戦闘への勧誘などを取り締まる立法なども立ち遅れている。ベルギーの政治制度は極端な地方分権であるため、小国でありながら銃火器の密売の一斉摘発すら難しい状況であり、ベルギー当局はイスラム過激派の影響拡大を恐れている。
11月15日付
『BBCニュース』は、パリで起きたテロ事件は、EUの難民対策と国境政策に重大な影響を与えると報じている。早くもポーランドのヨーロッパ担当相が、「難民は安全が確認された場合にのみ受け入れる」述べている。EUで決まった難民配分スキームでは、ポーランドは4500人を受け入れることになっているが、それが実行されるかは疑わしい。EU委員会は、日曜日、難民危機に対し“身勝手な行動”を執らないよう加盟各国に警告したが、難民流入ルートがテロリストに利用されたことがはっきりすれば、難民締め出しの動きは加速する。テロ事件は欧州の社会不安を深め、政治的には右翼がこの機会を利用しようとしている。今回のテロ事件によって、難民問題はより複雑で対処が難しくなったことは間違いない。
また、テロ事件は、シエンゲン協定で取り決めたヨーロッパ内での移動の自由に影響を与えている。ドイツを含め多くの国が同協定の履行を一時中断し、フランスは今一時的な国境出入国管理を敷いている。同放送は、欧州統合の重要な枠組みであるシエンゲン協定を守ろうとする強い決意はあったとしても、各国の国境管理が長引けばそれだけ欧州域内での移動の自由は危うくなってくると警鐘している。
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オバマ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が首脳会談(2015/11/09)
イスラエルのネタニヤフ首相は、11月9日、13ヵ月ぶりにホワイトハウスでオバマ米大統領と会談する。両首脳の関係はかねてから険悪であったが、今年3月、ネタニヤフ首相が訪米して米議会でオバマ大統領が進めたイラン核協議を痛烈に批判したことから、その時の会談が実現しないところまで悪化していた。今回の首脳会談では、イスラエル国内でのパレスチナ人との暴力の応酬による治安悪化や、混迷を深める中東情勢の変化を受けて、米国によるイスラエル支援策が協議されるものと思われる。しかし、両首脳の関係からするとパレスチナ和平に向けての踏み込んだ話し合いは期待できない、との見方が支配的である。
11月6日付
『ロイター通信』は、犬猿の仲で有名なネタニヤフ首相とオバマ大統領が、イランとの核合意後初めてとなる首脳会談をおこなうと報じている。それによると、首脳会談では、パレスチナ人による襲撃攻勢に曝されているイスラエルの治安確保のための、米国の軍事援助について話し合われる。オバマ大統領は、13ヵ月ぶりの首脳会談をおこなうことでイスラエル支援を示し、イスラエルに冷たいとの共和党の批判をかわすことができる。...
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11月6日付
『ロイター通信』は、犬猿の仲で有名なネタニヤフ首相とオバマ大統領が、イランとの核合意後初めてとなる首脳会談をおこなうと報じている。それによると、首脳会談では、パレスチナ人による襲撃攻勢に曝されているイスラエルの治安確保のための、米国の軍事援助について話し合われる。オバマ大統領は、13ヵ月ぶりの首脳会談をおこなうことでイスラエル支援を示し、イスラエルに冷たいとの共和党の批判をかわすことができる。イスラエルは、現在米国から毎年31億ドルの軍事支援を受けているが、これを毎年50億ドルまで増額するよう要請している。米国政府関係筋によると、首脳会談の場では正式な取り決めはおこなわないが、40億ドルから50億ドルの間で実質合意することになりそうである。問題は、オバマ大統領が、首脳会談でネタニヤフ首相にパレスチナ問題についての“二国解決案”へのコミットを再確認するかどうかであるが、長年にわたり仇同士の間柄である2人が、胸襟を開いて話し合いをするとは誰も考えていないと報じている。
11月8日付
『CBSニュース』は、イスラエルのネタニヤフ首相は、オバマ大統領との会談でパレスチナ問題とイスラエルの安全保障の強化を話し合うと述べているが、オバマ大統領を反ユダヤ主義者と呼び、ケリー国務長官を取るに足らない道化師とツイッターしたロン・バラツ氏を同首相が報道官に任命したことが、首脳会談に大きな影を落としていると報じている。
ネタニヤフ首相は、「バラツ氏のインターネット投稿は読んだばかりで、私自身やイスラエル政府とは無関係の個人的な見解であり、勿論反対である。帰国後、本人から直接説明を受ける」と述べている。ネタニヤフ首相の側近任命に関しては、これまで何度も物議をかもしている。ロン・ドーマー駐米大使は米共和党対策担当の経歴があり、今年3月、米議会で共和党と連携して同首相によるイランとの核合意反対の過激な演説を御膳立てし、米政府を激怒させた。国連大使に任命されたダニー・ダノン氏は、ヨルダン川西岸へのユダヤ人入植を強く支持するとともに、パレスチナ国家創設に激しく反対しており、国際社会から浮いた存在である。バラツ氏はツイッターでの発言を謝罪したが、イスラエル政権内部からも不適切な人選ではないかとの声が上がっている。
11月6日付
『FOXニュース』は、ロブ・マレー国家安全保障会議中東部長が、ネタニヤフ首相が訪米しオバマ大統領と会談するに先立ち記者会見をおこない、「現状のパレスチナ紛争は、オバマ大統領の在任期間中に解決するのは現実的に難しい」と述べたと報じている。
首脳会談ではイランとの核合意について話し合われるが、それとともに、2ヵ月前から全土で激しさを増しているイスラエル人とパレスチナ人による暴力紛争問題が重要議題となると予想される。政府関係者によると、両首脳はイスラエルとパレスチナの当事者同士が紛争の停止する方法について協議すると明かしている。ベン・ローデス大統領副国家安全保障アドバイザーは、オバマ大統領は、首脳会談でネタニヤフ首相がどの様な和平ステップを採ろうとしているのか、その意志があるのかを確かめようとしていると話す。
オバマ大統領とネタニヤフ首相の関係はこれまで険悪であったが、イランとの核合意によってそれが更に悪化した。ネタニヤフ首相はイランの核兵器開発はイスラエルにとって存亡にかかわる脅威であり、核合意はイランの核開発を促進させるとして反対している。
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