ドイツ政府は21日、東西ドイツの統一直後の1991年に導入され、旧東独地域の復興などを目的としていた連帯税について、2021年から大幅に縮小することを閣議で決定した。政府は今後、連邦議会(独下院)に法案を提出する。
地元メディアのほか
『AP通信』や
『ロイター通信』などが、ドイツ政府がオーラフ・ショルツ財務相の縮小案を承認したことを報じている。今回のショルツ財務相の案では、2021年以降、法人を含む90%の納税者の連帯税を廃止し、それより高額納税者の6.5%については減税し、残る富裕層からは今後も同様に徴税することとしている。
ショルツ氏は声明で、「今日はドイツ統一の完成に向かう道中で重要な日となる。再統一のための費用支払いは、大部分が終了している。」と述べ、旧東独の復興がほぼ達成されたことを説明した。
メルケル政権下のドイツでは、異例なほど長期間にわたって経済の好調さが持続し、2014年以降に新たな負債もなく、同国は記録的な高い雇用率、豊富な税収、低金利などの恩恵を受けてきた。しかし、今年の第2四半期に景気後退の可能性がみられたため、国内外から景気刺激策を求める声が高まっている。また、メルケル氏は2018年に連立政権を樹立するにあたり、中低所得者層の税負担の軽減を約束していた。
今後は高額納税者のみが連帯税を支払うこととなり、同税を完全に廃止すべきとの声もあるが、ショルツ氏は独テレビARDの朝の番組で、完全廃止は時期尚早であり、その決定は議会の次の会期で検討することになるだろうと述べた。
ドイツ政府は1991年、湾岸戦争関係の追加費用や西欧以外の欧州諸国への支援などを目的として連帯税を導入したが、同措置は1年限りのものだった。同税はその後、1995年に東西ドイツの格差を是正し、再統一を図るための費用を賄うものとして復活、恒久化され、現在に至っている。税額は、個人の場合、所得税納税額や貯蓄から得られる利子所得の額などに応じて決められ、法人の場合には法人税額がベースとなる。税率は当初7.5%だったが、1995年以降は5.5%で、旧東独地域の納税者も同税を支払う義務がある。
ドイツ財務省によると、昨年の連帯税収入は189億ユーロ(約2兆2300億円)だった。今年は、194億ユーロ(約2兆2900億円)の税収が見込まれており、2020年は約200億ユーロ(約2兆3600億円)になるという。
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5月8日、滋賀県大津市で、信号待ちしていた保育園児の列に車が突っ込み、園児2人が死亡し、9人が重軽傷を負うという痛ましい事故がまたもや起きた。
またもや、としたのは、4月19日に都内池袋の路上で、高齢者の運転する車が暴走して、母・娘2人が死亡し、8人が重軽傷を負う事故が起きたばかりだからである。
交通事故総合分析センター(ITARDA、注1後記)の国際交通事故データベースによると、調査対象41ヵ国の人口10万人当りの死者数では、2015年実績であるが、日本は全体6位の3.6人と、1位 英国(2.9人)、2位 スウェーデン(3.1人)、3位 ノルウェー(3.2人)と比べて遜色はない。...
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5月8日、滋賀県大津市で、信号待ちしていた保育園児の列に車が突っ込み、園児2人が死亡し、9人が重軽傷を負うという痛ましい事故がまたもや起きた。
またもや、としたのは、4月19日に都内池袋の路上で、高齢者の運転する車が暴走して、母・娘2人が死亡し、8人が重軽傷を負う事故が起きたばかりだからである。
交通事故総合分析センター(ITARDA、注1後記)の国際交通事故データベースによると、調査対象41ヵ国の人口10万人当りの死者数では、2015年実績であるが、日本は全体6位の3.6人と、1位 英国(2.9人)、2位 スウェーデン(3.1人)、3位 ノルウェー(3.2人)と比べて遜色はない。
しかし、状態別交通事故死者数のデータでみると、“乗用車乗車中事故死者数”は、死者数の少ない英国、スウェーデン、ノルウェーで50~56%であるのに対して、日本の場合は、それらの半分以下の22%に過ぎない。
逆のデータをみると、日本において“歩行中での交通事故死”が37%と、上記トップ3の11~23%に対して以上に高いことが判る。
すなわち、日本においては、危険運転の厳罰化や、自動制御装置の搭載等、車を中心にした安全対策が取られてきているものの、それだけでは、歩行者を巻き込んだ痛ましい事故は中々減らせないと言わざるを得ない。
今回の大津市の事故でも、専門家の中には、交通量の激しい交差点の歩道側にポールやフェンスが設置されていれば、かかる悲惨な事故は軽減できたかも知れないと指摘している。
『ニューズウィーク』誌の日本駐在コラムニストの昨年のコメントであるが、「日本の歩道は狭過ぎて、また、混雑し過ぎである。更には、道路を渡るのに、歩行者はわざわざ歩道橋を利用することが求められ、高齢者や身障者に全く不親切である」と書いている。
車道と歩道の棲み分けが良くなされている先進国からの来訪者も、ほとんど同様の感慨を持っていると言われる。
従って、現行の安全対策は引き続き強化していってもらうにしても、改めて思うのは、「歩行者優先」の対策 - 危険な交差点にポール・フェンス設置、歩道の拡幅、また、通学路にハンプ(注2後記)設置によるスピード制限対策等 - が急務と考えられる。
なお、もう一つ、運転者側に望まれるのは、3月6日付Globali「海外からみた日本・・・No.9 首都圏の交通安全事情」で触れたとおり、信号機のない横断歩道において、横断しようとしている歩行者がいた場合、一時停止する義務があることを再認識してもらうことである。
すなわち、昨年に日本自動車連盟(JAF)が発表した「信号機のない横断歩道における車の一時停止率/2018年調査」によると、一時停止した車は、対象1万26台中僅か862台(8.6%)であった。
かかる状況では、日本の事情を良く知らない訪日外国人はもとより、手を挙げて横断歩道を渡れ、と親から教えられた子供らが、悲惨な交通事故に巻き込まれるリスクは非常に高いと言わざるを得ないからである。
(注1)ITARDA:1992年3月に警察庁、運輸省、建設省(当時)の認可により設立。交通事故の調査研究、分析を行う公益財団法人。
(注2)ハンプ:道路の一部を隆起させ、通過する車両に上下の振動を及ぼすことで運転者に減速を促す構造物の総称。機能や形状によって、スピードバンプやスピードクッションなどとも称される。
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