サーモスフィア(熱圏)のビジネスが熱い(10月23日)
地球表面から80キロから800キロほど離れた身近な宇宙ともいうべきサーモスフィア(熱圏)で、最近民間による宇宙ビジネスが盛りを見せている。
米国のアクシオム・スペース社は2024年までに高度320キロのサーモスフィア(熱圏)に商業用宇宙ステーションホテル「オーロラステーション」の打ち上げを計画している。1人1泊約370万円で、ロケット代(往復)は約60億円だという。
サーモスフィア(熱圏)では、宇宙観光を活発に展開するイーロンマスクやジェフベゾスの活動ばかりに目が行きがちだが、ここ最近、宇宙ビジネスが盛り上がっている背景には実は別な理由もある。...
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地球表面から80キロから800キロほど離れた身近な宇宙ともいうべきサーモスフィア(熱圏)で、最近民間による宇宙ビジネスが盛りを見せている。
米国のアクシオム・スペース社は2024年までに高度320キロのサーモスフィア(熱圏)に商業用宇宙ステーションホテル「オーロラステーション」の打ち上げを計画している。1人1泊約370万円で、ロケット代(往復)は約60億円だという。
サーモスフィア(熱圏)では、宇宙観光を活発に展開するイーロンマスクやジェフベゾスの活動ばかりに目が行きがちだが、ここ最近、宇宙ビジネスが盛り上がっている背景には実は別な理由もある。
国際宇宙ステーション(高度400キロ)のインフラが老朽化してきたことや、維持費が困難になってきた為、これを民間に開放し少しでも維持費を賄おうとする各国の切実な思いがその根底にある。
例えばロシアの映画クルーがISSに乗り込んで宇宙初の映画撮影を行ったのも、ロシアの実験棟を有効活用するためにロシアが民間に貸し出したものである。今後予定されているトムクルーズの宇宙ロケも米国がISSの米国実験棟をレンタルするということである。
日本のJAXAもは国際宇宙ステーションの実験棟である「きぼう」の有償利用を2008年から始めている。使っていない間にも維持費がかかる「きぼう」を様々な用途に民間に有効活用してもらおうとしている。
2020年に開局し、宇宙と地球をライブ配信で結び、ポケモンの登場などで話題となった「KIBO宇宙放送局」も、宇宙から地球の俯瞰映像を配信する「宇宙ライブカメラ」も、更に宇宙で植物を育てる実験「ロボット実験室」も「きぼう」を利用したものである。
JAXAは民間企業と連携し、宇宙関連事業を創出していくことに前向きで、宇宙ビジネスが活気づけば維持費だけでなく、開発・研究費もねん出できるようになると考えている。
このように最近、サーモスフィアでの活動がビジネス化してきている。
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現在のGAFAの起点は1995年頃にある(10月23日)
CASEというIT革命を迎えるにあたって、我々の参考になるのは1995年前後、つまり1993年から1998年あたりの時代の流れが参考になるのではないだろうか。
1993年から1998年を見ると、いかにして現在の状況が生まれてきたかがわかってくる。アルゴアの「情報スーパーハイウェイ構想」が存在しなければ、インターネットは普及しなかった。また携帯電話やノートパソコンの存在がなければ現在のスマートフォンは生まれなかった。...
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CASEというIT革命を迎えるにあたって、我々の参考になるのは1995年前後、つまり1993年から1998年あたりの時代の流れが参考になるのではないだろうか。
1993年から1998年を見ると、いかにして現在の状況が生まれてきたかがわかってくる。アルゴアの「情報スーパーハイウェイ構想」が存在しなければ、インターネットは普及しなかった。また携帯電話やノートパソコンの存在がなければ現在のスマートフォンは生まれなかった。
1993年、クリントン政権にいたアルゴア副大統領が、全米の全てのコンピューターを光ファイバー網による高速通信回線網でつなぐ構想「情報スーパーハイウェイ」を提唱した。これが瞬く間に世界へと広がり現在のインターネット環境の基となった。
1994年には日本において通信自由化が進み、新しい周波数帯が割り当てられた結果、新規事業者が次々と携帯電話市場に参入し市場が活性化した。
1995年にはマイクロソフトのパソコン基本ソフト「ウインドウズ95」が発売され、行列ができるほどの人気を博した。同時に、小型のノートパソコンが普及した。その結果、小型のリチウムイオン電池の需要が顕在化し、電池の小型化の流れが出てきた。
ISDNやADSLなどの通信網が整備され、日本でもインターネットが広がりを見せ始めた。一方、携帯電話業界ではPHSが現れ、NTTやIDOなどが携帯電話レンタル事業を軸にするなど商業展開して携帯電話が一般に定着し始めた。
インターネットの普及は1995年にスタンフォード大の学生だったラリーペイジとセルゲイブリンを刺激し、シリコンバレーの資金も巻き込んで1998年のグーグルの誕生へとつながっていく。つまり今をときめくGAFAの起点も1995年にあったと言える。
短い期間に同時に起きていたことが面白いようにどんどんつながり、動いていった。こうした時代の大変化に、上手に乗っていった企業が今の時代の主役となっていることがわかる。
次のモーションであるCASEにおいても、新たなスター企業が生まれる予感がする。
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ブタの腎臓を人間に移植“初成功”(10月22日)
米国のニューヨーク大学ランゴーンヘルスの外科医らが遺伝子操作されたブタの腎臓をヒトに移植することに成功したと発表した。
免疫系による拒絶反応を起こさずブタからの移植に成功したのは今回が初めてとなる。
研究者によるとこの患者は脳死状態で腎機能障害の兆候があった。
新しい腎臓は患者の血管につながれ体外で3日間維持された。外科医・モンゴメリー博士は「今回の移植実験で1~2年のうちに末期の腎不全患者を対象とした臨床試験への道が開かれる」と話している。
CASEにおける日本の半導体の役割(10月17日)
今、半導体業界は大きなゲームチェンジに差し掛かっている。例えばPCの半導体でインテルが世界標準になり、スマホでアームが世界標準となった時のような大きなゲームチェンジの時期に再び、差し掛かっている。
次の曲がり角にあるのはCASE(コネクテッド、自動運転、共有化、電動化)である。CASEにおいて、どこの国のどの会社の半導体が世界標準、半導体覇権をもぎ取るのかという熾烈な戦いが水面下で展開されている。...
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今、半導体業界は大きなゲームチェンジに差し掛かっている。例えばPCの半導体でインテルが世界標準になり、スマホでアームが世界標準となった時のような大きなゲームチェンジの時期に再び、差し掛かっている。
次の曲がり角にあるのはCASE(コネクテッド、自動運転、共有化、電動化)である。CASEにおいて、どこの国のどの会社の半導体が世界標準、半導体覇権をもぎ取るのかという熾烈な戦いが水面下で展開されている。現在、頭ひとつ抜けているのが米国のイーロンマスク率いるテスラである。
細部に目を奪われることなしに全体像の把握からまずは見てゆきたい。どれぐらいの大きさでどういう論理回路を使い、どれぐらいのスピードで、どのような機能をもたせるか、それらをどうコントロールできるようにしていくかといったスペックをまずは、はっきりさせていくべきである。目的を達成するためにこれらと周辺をどう組み合わせていくかといったアーキテクチャーの構築も非常に大事である。その後、フロアプランをはっきりさせてから、設計、製造に落とし込んでいく一連の流れを押さえておくことが重要である。
TSMCを日本に誘致したことをはずみにして、半導体を日本の成長戦略の中に組み込んでいきたい日本だが、自分自身の強みを正確に把握しておくことも重要である。日本の一番の強みは、半導体製造装置や微細素材など、日本にしかできない隙間技術を多数持ち、競争力を持っていることである。
TSMCも日本の金銭的援助以上に日本に期待しているものがシリコンウエハやフッ化水素、フォトレジスト、CMPスラリー、窒化ガリウム、炭化ケイ素などの微細素材の存在である。
この流れで見ていくと、あくまでも餅をつくるのはTSMCで、日本はその餅を整えるこね役のようにも見えなくもない。実際問題、CASEにおいて日本がアーキテクチャーに関わることや、テスラ以上の半導体を提供できるような存在になることはかなり難しい。
しかし、半導体の世界のレベルが上がったとは言え、ノーベル賞受賞者を多数輩出している日本が太刀打ちできない世界ではない。歴史を遡って見ればPCの半導体で世界標準になった米社の半導体は実は日本の嶋正利氏が設計したものであるということも日本人は頭の片隅に入れて置くべきである。
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サーモスフィア(熱圏)の戦い(10月16日)
かって米国は自由と豊かさを、そしてニューフロンティアを求めて、西部にどんどん進出していったが、これと同じことが今、地球表面に近い宇宙で起きている。米国だけでなく中国やロシアなどの他、各国の民間企業などが入り乱れて様々な目的を達成するために衛星打ち上げにしのぎを削っている。
今や60を超す国・地域がカーナビやスマートフォンの位置情報、天気予報、ATMを使うために衛星を運用している。地表から80キロ~800キロを熱圏(Thermosphere:サーモスフィア)と呼ぶが、さしずめ「サーモスフィアの戦い」とも呼ぶべき現象である。...
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かって米国は自由と豊かさを、そしてニューフロンティアを求めて、西部にどんどん進出していったが、これと同じことが今、地球表面に近い宇宙で起きている。米国だけでなく中国やロシアなどの他、各国の民間企業などが入り乱れて様々な目的を達成するために衛星打ち上げにしのぎを削っている。
今や60を超す国・地域がカーナビやスマートフォンの位置情報、天気予報、ATMを使うために衛星を運用している。地表から80キロ~800キロを熱圏(Thermosphere:サーモスフィア)と呼ぶが、さしずめ「サーモスフィアの戦い」とも呼ぶべき現象である。
まず目につくのは高度400キロ圏を飛ぶ軍事衛星である。軍事衛星には主に4種類あり、地表面の広範囲の捜索と緻密な偵察を行う偵察衛星とがある。これを経由してCSISなどが北朝鮮からのデータを日本などに送ってきている。
精密誘導弾や弾道ミサイルの発射探知や核実験などの検知を行うのは早期警戒衛星であり、中国や北朝鮮を隣国に持つ日本には欠かせない衛星と言える。他国の衛星やミサイルを撃ち落とす衛星が衛星攻撃衛星であるが、これからクローズアップされてくると思われる。
戦略通信を行う軍事用通信衛星では中国などが量子暗号技術を使った絶対破れない暗号を衛星経由で飛ばし、一帯一路の沿線国と連絡を取り合っているとされている。この他、軍事衛星に含めるべきではないかもしれないが、潜水艦の正確な位置を知るためにカーナビなどに使われるGPSが不可欠な衛星となっている。
高度550キロを飛ぶ超小型通信衛星コンステレーション群はスペースX社のスターリンクである。世界中でくまなくインターネット通信ができるようにするため、これまでに計360基が飛ばされている。これらの衛星は地上のインターネットでも今どこにいるのかが確認できる。
この他、災害対策・国土強靭化や農業など地球規模課題の解決のために飛ばされる地球観測衛星や気象衛星などがある。気象衛星といえば、今年3月に中国の気象衛星が、空中分解する事故が起きた。
この原因としてロシアの偵察衛星から放出されたスペースデブリと衝突した可能性があると指摘されている。2009年には米国の通信衛星とロシアの軍事通信衛星が衝突し、サーモスフィアに大量のごみが発生したことがあるが、様々な国が進出し宇宙のごみ問題はこれからますますクローズアップされてくることが予想される。
サーモスフィアでは最近、観光のためのロケットが飛ぶようになってきているが、今後はサーモスフィアを旅行者が一時的に滞在できる滞在衛星などが作られると期待されている。
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