脅威を残したまま米朝が手打ちするという悪夢のシナリオ(7月27日)
(相次ぐ金委員長の軍事関連施設の視察・背景には8月の米韓合同軍事演習)
北朝鮮メディアは金正恩委員長が25日、未明に元山から発射された新型戦術誘導兵器の発射を視察していたことを明らかにした。つい先日、金正恩委員長が建造された潜水艦を視察したと報じたばかりで立て続けに軍事関連の視察を伝える背景には米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Aの韓国配備や8月に予定されている米韓合同軍事演習をけん制する狙いがある。...
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(相次ぐ金委員長の軍事関連施設の視察・背景には8月の米韓合同軍事演習)
北朝鮮メディアは金正恩委員長が25日、未明に元山から発射された新型戦術誘導兵器の発射を視察していたことを明らかにした。つい先日、金正恩委員長が建造された潜水艦を視察したと報じたばかりで立て続けに軍事関連の視察を伝える背景には米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Aの韓国配備や8月に予定されている米韓合同軍事演習をけん制する狙いがある。北朝鮮外務省は、「韓国との合同軍事演習を行わないという約束を米国は守らない」と批判し、北朝鮮の非核化に向けた協議がリスクにさらされていると指摘していた。韓国大統領府関係者は、8月の合同軍事演習は変更なく実施される見通しであることを明らかにし、米国は25日に北朝鮮が短距離ミサイルを発射したことについて、「これ以上の挑発行為がないよう自制を求めたい」との声明を発表している。ただ、こうした一連のやりとりはかって米朝で繰り広げられた緊迫したやりとりと比較すると非常にトーンが弱く、米朝関係が以前のような緊張状態に戻るようには見えない。米国は米朝協議の再開を目指す方針に変わりがないとの立場を明言している。
(危惧されるのは脅威を残したまま米朝が手打ちするという悪夢のシナリオ)
ポンペオ国務長官は北朝鮮との実務者協議の早期再開に期待感を示し、FOXニュースのインタビューで6月に行われた3回目の米朝首脳会談において金正恩委員長がトランプ大統領に「核実験と長距離・中距離弾道ミサイルの発射を控えること」を約束していたことを明らかにした。これが事実だとすれば、日本に対する脅威は残したまま米朝が手打ちするという日本が危惧していた方向性で話が動いているということになる。このままいくと日本にとっての安全保障上の脅威は何ひとつ解消されないまま米朝融和、南北融和が進み、日本だけが蚊帳の外という話にもつながりかねない。その先には核を持った統一朝鮮が日本の目と鼻の先に出現し、中国とともに日本の安全保障を脅かす事態も想定される。日本はホルムズ海峡にからむ有志連合への参加なども含め、最悪の事態を想定した今後の身の振り方を考える局面に来ている。
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北朝鮮、新型の弾道ミサイル発射(7月26日)
25日早朝の5時34分と同57分に、北朝鮮は東部の虎島半島から新型ミサイルを発射した。高度は共に50㌔で、飛行距離は各々430㌔、690㌔に達した。690㌔であれば、日本にも到達可能な距離である。
また26日の朝鮮中央通信は金正恩委員長が「韓国軍の好戦勢力に対する厳重な警告」として「新型戦術誘導兵器」の発射を視察したと伝えた。金正恩委員長は23日には潜水艦の建造現場を視察したと報道されているが、立て続けに軍関係の現場を視察したことになる。...
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25日早朝の5時34分と同57分に、北朝鮮は東部の虎島半島から新型ミサイルを発射した。高度は共に50㌔で、飛行距離は各々430㌔、690㌔に達した。690㌔であれば、日本にも到達可能な距離である。
また26日の朝鮮中央通信は金正恩委員長が「韓国軍の好戦勢力に対する厳重な警告」として「新型戦術誘導兵器」の発射を視察したと伝えた。金正恩委員長は23日には潜水艦の建造現場を視察したと報道されているが、立て続けに軍関係の現場を視察したことになる。
「韓国の好戦勢力」に対する警告ということであれば、今回の弾道ミサイル発射の目的の一つは、8月に行われる米韓合同軍事演習への警告ということなのだろう。米韓合同軍事演習は、規模は縮小されたとはいえ、北朝鮮、さらに金正恩委員長自身の体制の保証への直接的な脅威となっているからである。
一方タイで8月2日から開催予定のASEAN地域フォーラム(ARF)に、北朝鮮の李容浩外相は参加しないとの通知があった。北朝鮮の代表団は参加する予定。ARFの会議には米国のポンペオ国務長官も参加を予定していることから、米朝外相会談が行わるのではないかと予想されていた。外相会談を開催する準備が、北朝鮮側で整っていなかった可能性が高い。北朝鮮外相のARFの不参加は2003年以来となる。
6月30日に板門店で行われた米朝首脳による対談では、7月中旬には実務者交渉を行うとしていたにも関わらず交渉が行われていないことなどを見ると、北朝鮮のなかで、非核化の範囲をどの程度にすれば、米国を納得させられるかについての見極めがついていないのではないか。その見極めをつけるために、揺さぶりをかけているとも思われる。
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金正恩、潜水艦建造現場を視察(7月24日)
23日の朝鮮中央通信は、金正恩委員長が建造された潜水艦を視察したと報じた。同報道ではこの潜水艦は「作戦配備が控えている」としており、実戦配備が近いことを示唆している。
米国のトランプ大統領は、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を控えていることを評価しているが、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)のほうが米国に対する脅威の度合いは、はるかに高い。ICBMであれば、北朝鮮から発射されて米国に飛来するまでの間に迎撃の準備ができ、全部は無理でもある程度は飛んできたミサイルを打ち落とすこともできる。...
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23日の朝鮮中央通信は、金正恩委員長が建造された潜水艦を視察したと報じた。同報道ではこの潜水艦は「作戦配備が控えている」としており、実戦配備が近いことを示唆している。
米国のトランプ大統領は、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を控えていることを評価しているが、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)のほうが米国に対する脅威の度合いは、はるかに高い。ICBMであれば、北朝鮮から発射されて米国に飛来するまでの間に迎撃の準備ができ、全部は無理でもある程度は飛んできたミサイルを打ち落とすこともできる。また北朝鮮に向けて反撃することも可能である。反撃の恐れがあるので、北朝鮮もICBMで攻撃をためらう可能性もある。それに対し、潜水艦の場合は探知が難しいので、潜水艦が米国沿海まで容易に辿り着き、そこからミサイルを発射されれば、攻撃された側は迎撃を準備する時間すらない。
6月30日にはサプライズの米朝首脳の対談行い、米朝実務者協議を7月中旬には行うとしていたが、下旬になっても実務者協議の開催についての報道はない。今回わざわざ潜水艦が建造されたとの報道を北朝鮮が行ったのは、米国に圧力をかけ、実務者協議やその後あるかもしれない首脳会談を有利に進めようとする、北朝鮮の駆け引きなのだろうか。
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北朝鮮で地方選挙行われる(7月23日)
21日に北朝鮮で第19次地方人民会議議員選挙が行われた。北朝鮮の各道(直轄市)、市(区)、郡で人民会議議員が選出された。朝鮮中央通信の報道によれば、海外に行っている人などを除いて、全員が投票しており、投票率は99.98%であった。
ある選挙区の選挙委員の話によると、議員候補者は各選挙区から民主集中制の原則に従って選ばれ、各選挙区の人々の共通の念願を体現しているという。つまり候補者は必ず選出されることになる。...
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21日に北朝鮮で第19次地方人民会議議員選挙が行われた。北朝鮮の各道(直轄市)、市(区)、郡で人民会議議員が選出された。朝鮮中央通信の報道によれば、海外に行っている人などを除いて、全員が投票しており、投票率は99.98%であった。
ある選挙区の選挙委員の話によると、議員候補者は各選挙区から民主集中制の原則に従って選ばれ、各選挙区の人々の共通の念願を体現しているという。つまり候補者は必ず選出されることになる。
なお北朝鮮の憲法の規定によると、地方議員の任期は4年で、地方の経済発展計画およびその執行情況報告を審査し、地方の予算およびその執行情況を審査する、とされている。
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北朝鮮の対外貿易、大幅減(7月20日)
19日、韓国の大韓貿易振興公社(KOTRA)は2018年の北朝鮮の貿易に関する報告書を発表した。それによると2018年の北朝鮮の貿易額(南北間交易は除く)は28.4億㌦で、前年に比べ48.8%減少し、2年連続の減少となった。うち輸出は86.3%減の2.4億㌦、輸入は31.2%減の26億㌦で、輸出の減少率が輸入の減少率よりも高かったこともあり、入超額は23.6億㌦と、前年より17.5%増加した。...
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19日、韓国の大韓貿易振興公社(KOTRA)は2018年の北朝鮮の貿易に関する報告書を発表した。それによると2018年の北朝鮮の貿易額(南北間交易は除く)は28.4億㌦で、前年に比べ48.8%減少し、2年連続の減少となった。うち輸出は86.3%減の2.4億㌦、輸入は31.2%減の26億㌦で、輸出の減少率が輸入の減少率よりも高かったこともあり、入超額は23.6億㌦と、前年より17.5%増加した。
南北交易は人道支援や開城工業団地関連の物資が多かったため、2016年2月に開城工業団地の操業が停止されて以降は大きく減少し、ほとんどゼロに近い状況である。停止される前年の2015年には27.14億㌦で北朝鮮の貿易相手国としては、中国に次ぐ相手国であったが、2016年3.33億㌦、2017年1000㌦、2018年3100㌦にとどまっており、南北交易の数字を加えても北朝鮮の対外貿易の数字が大きくかわることはない。
中国との貿易は50.5%減の24.6億㌦(注)であり、うち中国への輸出が86.6%減の2.21億㌦、輸入が32.7%減の22.39億㌦だった。中国との貿易額は、中国の対北朝鮮投資が本格化する前の2009年の貿易額(26.8億㌦)よりも少ない水準になった。これは北朝鮮の主な輸出品で会った石炭や鉄鉱石、非鉄金属、水産品、繊維製品が軒並み、ゼロないしゼロに近い水準まで減少しているからである。これら主要輸出商品は国連の経済制裁によって各国は北朝鮮からの輸入を禁じられていることから、中国以外の国への輸出も減少していることになる。
国連の経済制裁が解除されない限り、北朝鮮の輸出が増加する可能性はないことから、北朝鮮は当分外貨獲得が難しく、貿易赤字が拡大することになろう。
(注)中国海関統計の数字。KKOTRAの発表数字では27.2億㌦。
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