米朝首脳会談:合意見送りの背景(3月1日)
2月27,28日にハノイで開催されていた米朝首脳会談は、非核化と制裁解除をめぐって両者の主張があわず、用意されていた合意文書に署名もできなかった。
1日未明に記者会見をした北朝鮮の李容浩外相は、制裁の解除について、完全な解除ではなく、「国連安保理の11件の制裁のうち、民需用や人民生活に支障がある5件についての解除を求めた」と述べ、米国がこれに応じれば、寧辺のプルトニウムとウランを含む総ての核施設を米国の専門家の立ち合いの下、永久に廃棄することを提案したとも述べた。...
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2月27,28日にハノイで開催されていた米朝首脳会談は、非核化と制裁解除をめぐって両者の主張があわず、用意されていた合意文書に署名もできなかった。
1日未明に記者会見をした北朝鮮の李容浩外相は、制裁の解除について、完全な解除ではなく、「国連安保理の11件の制裁のうち、民需用や人民生活に支障がある5件についての解除を求めた」と述べ、米国がこれに応じれば、寧辺のプルトニウムとウランを含む総ての核施設を米国の専門家の立ち合いの下、永久に廃棄することを提案したとも述べた。朝鮮中央通信社は、会談が合意に至らなかったことは伝えず、金正恩委員長とトランプ大統領は引き続き朝鮮半島の非核化と米朝関係改善に向けた建設的な議論を続けることで合意した、と伝えている。
北朝鮮が経済制裁を、全部であれ、一部であれ、解除されると思い込んだのはどうしてだったのか。
ひとつには事前にトランプ大統領が、北朝鮮が核を放棄すれば、北朝鮮は経済発展を遂げることができる、と再三発言していたことから、北朝鮮が経済発展の前提条件であると考えている、経済制裁の解除に踏み切るのではないかと思っていたのではないか。
またトランプ大統領が内政問題で窮地にたっていることから、外交上のポイントを稼ごうと焦っている、実務者協議で溝が埋まらなくても、トランプ大統領を説得できると金委員長は思ったのかもしれない。
さらに経済制裁が効果を発揮しているのかもしれない。北朝鮮の物価があがっていないことや、ブローカー業などを手広く営むトンジュ(金主)とよばれる人々の活躍で北朝鮮内にモノが流通していること、瀬取りをはじめとして密輸が大々的に行われているのではないかとして、経済制裁の効果に疑問視する人々もいる。しかし鉱物資源などを輸出して外貨を稼ぐことができなくなっていることから、労働党の外貨獲得機関であるが、いわゆる39号室が機能を果たせなくなっているのかもしれない。つまり金正恩委員長が使える資金が少なくなっているのではないか。実際金正恩委員長が力をいれている元山の観光施設も、インテリア資材が輸入できなくて建設が頓挫しているという。米朝首脳会談を前に、北朝鮮が国際社会にむけて食糧支援を22年ぶりに訴えたのも、北朝鮮が困窮していることのアピールであったとも考えられる。
北朝鮮が戦略を練り直して3度目の米朝首脳会談をすることはあるのか。トランプ大統領が応じるとすれば、大統領選挙戦が始まるまえの年内でなければ難しいと思われるが、それまでに準備できるのか。金正恩委員長としては、トランプ大統領が再選されるかどうかわからないことから、与しやすいと思えるトランプ大統領と交渉したいところだろう。
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安倍首相・“米朝会談で拉致問題提起”・首相・日朝会談開催に意欲(3月1日)
米朝首脳会談を終えたトランプ大統領と電話で会談した安倍総理大臣は、米朝首脳会談で拉致問題を2回にわたって提起したと説明を受けたことを明らかにした。
安倍総理は「トランプ大統領の決断を日本は全面的に支持する。日本にとって重要な拉致問題については一対一の会談で、私の拉致問題についての考え方を金正恩委員長に伝えていただいた」と述べた上で安倍総理大臣は、拉致問題を含めた問題の解決に向けて、「次は私が向き合わないとならない」と日朝首脳会談の開催に意欲を示した。...
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米朝首脳会談を終えたトランプ大統領と電話で会談した安倍総理大臣は、米朝首脳会談で拉致問題を2回にわたって提起したと説明を受けたことを明らかにした。
安倍総理は「トランプ大統領の決断を日本は全面的に支持する。日本にとって重要な拉致問題については一対一の会談で、私の拉致問題についての考え方を金正恩委員長に伝えていただいた」と述べた上で安倍総理大臣は、拉致問題を含めた問題の解決に向けて、「次は私が向き合わないとならない」と日朝首脳会談の開催に意欲を示した。
一方、拉致問題で具体的な動きがなかったことについて、拉致被害者の家族は「非常に残念」と述べた。
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米朝首脳会談:交渉決裂(2月28日)
2日目の米朝首脳会談は、午前中に1日目の1対1の会談に続き、2度目の1対1の会談が行われ、続いてポンペオ国務長官や金英哲党副委員長らを交えての拡大会議が開催された。続いてワーキングランチが行われる予定であったが、中止され、合意文書の署名もなかった。
拡大会議の公開場面で、金正恩委員長は「非核化の予定がなければここに来ていない」と話していて、和やかな様子であり、連絡事務所の設置などについて合意ができていたと見られたが、非核化と経済協力で折り合いがつかなかったようである。...
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2日目の米朝首脳会談は、午前中に1日目の1対1の会談に続き、2度目の1対1の会談が行われ、続いてポンペオ国務長官や金英哲党副委員長らを交えての拡大会議が開催された。続いてワーキングランチが行われる予定であったが、中止され、合意文書の署名もなかった。
拡大会議の公開場面で、金正恩委員長は「非核化の予定がなければここに来ていない」と話していて、和やかな様子であり、連絡事務所の設置などについて合意ができていたと見られたが、非核化と経済協力で折り合いがつかなかったようである。
実務者協議で準備が整ってなかったことから、かなり低いレベルでの合意で、トランプ大統領が「成功した」というシナリオになるのではないかと思われていたが、「安易な妥協」をするほうが自分の不利になるとの判断があった模様。
これに対し、ホワイトハウスのサンダース報道官は「非核化や経済協力について、とても良い建設的な意見交換を行ったが、非核化などで、合意に至らなかった。互いに今後も協議を続けることを期待している」と語った。協議が続かないと、昨年に米中首脳会談が決定される前よりも事態が悪化する恐れもあるが、北朝鮮も協議を続ける意思があるのであれば、核やミサイルの実験中止も続けられることになるだろう。
日本時間16時過ぎから行われたトランプ大統領の記者会見で、
・北朝鮮が完全な制裁解除を求めてきた。
・北朝鮮は寧辺を取り上げたが、米国はそれでは十分ではないとした。北朝鮮は非核化をしようとしていたが、米国が求めているレベルではなく、完全な申告までにいかなかった。
・早く交渉をまとめるよりも、正しいことをしたいと思った。
・制裁解除のためには北朝鮮はもっと多くのことを放棄しなければいけない。
・協議は続けるとしているが、時期などは約束していない。
などの点を明らかにした。
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米朝首脳会談初日(2月28日)
27日、8カ月の時を経て、2回目の米朝首脳会談が開催された。やや緊張した面持ちで握手を交わした両首脳は、通訳を交えただけの1対1の会談を行った。公開された冒頭部分で金正恩委員長が「我々は様々な困難を乗り越えて、ここに至った」「結果をだすために最善を尽くす」と語った。これに対しトランプ大統領は「再会できたことを嬉しく思う。今回の会談は前回からさらに成功するだろう」と語り、また「北朝鮮には経済発展の潜在力があり、我々は北朝鮮の経済発展を支援したい」とも語った。...
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27日、8カ月の時を経て、2回目の米朝首脳会談が開催された。やや緊張した面持ちで握手を交わした両首脳は、通訳を交えただけの1対1の会談を行った。公開された冒頭部分で金正恩委員長が「我々は様々な困難を乗り越えて、ここに至った」「結果をだすために最善を尽くす」と語った。これに対しトランプ大統領は「再会できたことを嬉しく思う。今回の会談は前回からさらに成功するだろう」と語り、また「北朝鮮には経済発展の潜在力があり、我々は北朝鮮の経済発展を支援したい」とも語った。会談は30分間行われた。
その後晩餐会が行われたが、米側からはポンペオ国務長官とマルバニー主席補佐官代行が、北朝鮮側からは金英哲党副委員長と李容浩外相が参加した。円卓での晩餐会で両首脳は隣り合わせで坐る形となった。
28日は9時(現地時間)から再度1対1の会合が開かれ、その後閣僚らを交えた拡大会議、およびワーキングランチが開催され、午後には共同声明が発表される予定である。
ただし両国の主張にはまだ隔たりがあるとも伝えられ、実質的な非核化に対する文言がどのようなものになるのか、終戦宣言などがだされるのか注目される。またトランプ大統領がしばしば北朝鮮の経済発展に言及していることからすれば、経済制裁の行方も気になるところである。
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両首脳ハノイ入り、非核化は進展するか(2月26日)
26日、金正恩委員長を乗せた列車は中国からベトナムのドンダン駅に着き、ハノイまでの約170㌔を自動車で移動する。一方トランプ大統領を乗せたエアーフォースワンは26日20時半頃にハノイに到着する。両首脳は27日夕方に1対1の会談を行い、28日には公式の会談を行う予定である。またトランプ大統領はすぐに帰国する予定だが、金正恩委員長は3月2日までベトナムに滞在する予定である。
トランプ大統領は出発前に、「北朝鮮が非核化すれば、北朝鮮はすぐに世界の経済強国の一つになるだろう」と楽観的に語り、「金正恩は賢明な決断をするだろう」と強調した。...
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26日、金正恩委員長を乗せた列車は中国からベトナムのドンダン駅に着き、ハノイまでの約170㌔を自動車で移動する。一方トランプ大統領を乗せたエアーフォースワンは26日20時半頃にハノイに到着する。両首脳は27日夕方に1対1の会談を行い、28日には公式の会談を行う予定である。またトランプ大統領はすぐに帰国する予定だが、金正恩委員長は3月2日までベトナムに滞在する予定である。
トランプ大統領は出発前に、「北朝鮮が非核化すれば、北朝鮮はすぐに世界の経済強国の一つになるだろう」と楽観的に語り、「金正恩は賢明な決断をするだろう」と強調した。これに対しポンペオ国務長官は「北朝鮮に対する制裁を変更することはない。今週で問題が何もかも解決するわけではない」と慎重に語っている。
米国内では、北朝鮮の非核化については懐疑的な見方が多く、コーツ国家情報長官は「北朝鮮がしばらく挑発行為をしていないからといって、完全に核兵器やその生産能力を放棄することはあり得ない」と述べている。
会談後トランプ大統領は「非核化の交渉は進展した」と発表しそうであるが、どの段階の非核化になるか、「凍結」だけなのか、「将来の核を廃棄する」だけに終わるのか、「完全なる核および核施設リストをすぐに提出するのか」「現有の核も含めての廃棄」になるのか、注目される。
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