列車は南下、交渉の着地点はどこへ(2月25日)
23日に平壌を出発した金正恩委員長を乗せた列車は24日午後1時頃に天津を通過し、南下を続けた。中朝の親密さを対外的に見せつけるために金正恩委員長が北京に立ち寄り、習近平主席と会談するのではないかとの観測もあったが、列車は北京には向かわなかった。これについて韓国峨山政策研究院の辛範哲研究員は、「1月に金正恩は北京に行ったので、帰国の際に北京に行って、米朝首脳会談の成果を報告するのではないか」と述べ、さらに「中国が北朝鮮に鉄道を提供しているのは、やはり両国が運命共同体であり、変わらず『唇歯の関係』にあることを示している」と述べている。...
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23日に平壌を出発した金正恩委員長を乗せた列車は24日午後1時頃に天津を通過し、南下を続けた。中朝の親密さを対外的に見せつけるために金正恩委員長が北京に立ち寄り、習近平主席と会談するのではないかとの観測もあったが、列車は北京には向かわなかった。これについて韓国峨山政策研究院の辛範哲研究員は、「1月に金正恩は北京に行ったので、帰国の際に北京に行って、米朝首脳会談の成果を報告するのではないか」と述べ、さらに「中国が北朝鮮に鉄道を提供しているのは、やはり両国が運命共同体であり、変わらず『唇歯の関係』にあることを示している」と述べている。
確かに沿線の警備だけでも中国の負担はかなり大きいものになる。中朝の親密さのアピールの他に、3日間かけて列車で移動するのは、北京やハノイという都会だけではなく、沿線の地方都市や農村の経済発展を見るためではないかといわれている。今回の金正恩委員長の随行者のなかには、シンガポール会談のときには随行していなかった、経済関係の官僚もいることからも金正恩委員長が経済発展を重視していることがうかがわれる。
一方トランプ大統領は25日にベトナムに向けて出発する。24日にトランプ大統領は核やミサイルの実験がなければ満足だと語り、金正恩委員長との関係は非常に良い、と語った。今回の米朝首脳会談はどのような共同声明がだされることになるのか。交渉や会談では相互の信頼関係の上で、双方の譲歩が必要になる。しかし譲歩や妥協だけでなく、昨年6月の会談の際に決められた「朝鮮半島の平和体制保証」や「朝鮮半島の完全な非核化」にさらに内容が上積みされる合意でなければならない。
24日にはロシアのラブロフ外相が2日間の予定でベトナムを訪問した。ラブロフ外相は訪越前にロシアのメディアに対し、米朝首脳会談の成功を願っている、と語り、また「首脳会談の準備をしている米国代表は我々と相談する責任を負っているし、我々は北朝鮮の友人としての関係を維持し続けている」と語り、東北アジアの問題には韓国、中国、ロシア、日本とも関係しているので、最終的にはマルチの会議が必要である、とも語った。米朝首脳会談の後に多国間の会議が始まり、多くの監視の目のなかで北朝鮮の非核化が本格的に始まる可能性もあり、非核化が少しでも前進すれば、韓国や中国の対北朝鮮投資が始まる可能性もある。
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北朝鮮・キム委員長・米朝首脳会談に向け“ハノイに出発”(2月24日)
北朝鮮国営・朝鮮中央テレビは、北朝鮮・キムジョンウン朝鮮労働党委員長が、米朝首脳会談が開かれるベトナムの首都ハノイに向かうため、きのう午後専用列車でピョンヤンの駅を出発したと伝えた。
列車は現在ベトナムに向かっていると見られるが、中国・北京を経由するかなど列車の具体的な経路は分かっていない。
ベトナムと中国の国境地帯では、ハノイに通じる国道が会談前日にあたる26日の午前6時~午後2時まで全面的に通行止めになると伝えられていて、この時間帯にキム委員長が通る可能性がある。...
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北朝鮮国営・朝鮮中央テレビは、北朝鮮・キムジョンウン朝鮮労働党委員長が、米朝首脳会談が開かれるベトナムの首都ハノイに向かうため、きのう午後専用列車でピョンヤンの駅を出発したと伝えた。
列車は現在ベトナムに向かっていると見られるが、中国・北京を経由するかなど列車の具体的な経路は分かっていない。
ベトナムと中国の国境地帯では、ハノイに通じる国道が会談前日にあたる26日の午前6時~午後2時まで全面的に通行止めになると伝えられていて、この時間帯にキム委員長が通る可能性がある。
ただ中国を列車で移動し続けると線路沿いの警備が大がかりなものとなるため、キム委員長が行程の一部で航空機を利用するのではないかという見方も出ている。
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金正恩平壌出発、国際機関に食糧支援要請(2月24日)
23日午後、27-28日に行われる米朝首脳会談に向けて、金正恩委員長は平壌を列車で出発した。金英哲党中央副委員長、李容浩外相や努光鉄人民武力相をはじめ、妹で党中央第一副部長の金与正氏や崔善姫外務省次官などが同行している。
北朝鮮とベトナムは1950年1月に国交を樹立しており、1958年と64年に金日成首相(当時)が訪越、一方ベトナムからは1957年にホー・チミン主席が、2007年にはノン・ドゥック・マイン総書記が訪朝している。...
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23日午後、27-28日に行われる米朝首脳会談に向けて、金正恩委員長は平壌を列車で出発した。金英哲党中央副委員長、李容浩外相や努光鉄人民武力相をはじめ、妹で党中央第一副部長の金与正氏や崔善姫外務省次官などが同行している。
北朝鮮とベトナムは1950年1月に国交を樹立しており、1958年と64年に金日成首相(当時)が訪越、一方ベトナムからは1957年にホー・チミン主席が、2007年にはノン・ドゥック・マイン総書記が訪朝している。1958年の訪越の際には、金日成首相は、中国も公式に訪問、途中北京、武漢、広州に滞在し、広州から中国の要人用飛行機でハノイに向かった。また64年の訪越の際には中国が提供した飛行機で、平壌から北京、武漢、南寧を経由してハノイを訪れている。
一方国連のドゥジャリク事務総長報道官は21日(現地時間)の定例会見で、北朝鮮政府が食糧難で国際機関に支援を要請したことを明らかにした。同報道官によると、北朝鮮が提供した統計では、今年はコメや小麦、ジャガイモなど140万人分の食料不足が予想されるという。また米NBCテレビは、北朝鮮の金星国連大使が国連に食糧難を訴える公文を送ったと報じた。公文のなかでは食糧難の要因として、異常気象と自然災害の他に、経済制裁のために農業生産に必要な資機材が入手できなかったからだとしている、という。
北朝鮮は「苦難の行軍」の時代の1997年に政務院農業委員会農産局の車麟錫副局長が中国の新華社に対し、北朝鮮の食糧難について詳しく語ったことがあり、そのときには、最後に国際社会の援助を求めていた。
米朝首脳会談を前にした、今回の食糧支援の要請は、実際の食糧支援とともに、首脳会談で制裁の緩和の議題を出し、制裁緩和を進展させようとしているためとも思われる。
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北朝鮮への融和姿勢強める米国(2月23日)
(ベトナムは米朝首脳会談歓迎ムード一色)
27、28日にベトナムハノイで行われる2度目の米朝首脳会談にむけて着々と準備が進められている。中国・丹東では軍用とみられる多数の飛行機が周辺を旋回飛行し、一部ホテルで宿泊がストップされていることや、丹東駅ホームの落書きが見えないよう目隠しのフェンスが設置されていることなどから、金正恩党委員長が列車で中国を経由し23日にもベトナム入りする可能性が浮上している。...
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(ベトナムは米朝首脳会談歓迎ムード一色)
27、28日にベトナムハノイで行われる2度目の米朝首脳会談にむけて着々と準備が進められている。中国・丹東では軍用とみられる多数の飛行機が周辺を旋回飛行し、一部ホテルで宿泊がストップされていることや、丹東駅ホームの落書きが見えないよう目隠しのフェンスが設置されていることなどから、金正恩党委員長が列車で中国を経由し23日にもベトナム入りする可能性が浮上している。中越国境のベトナム側では既に駅のホームに大きな花が飾られ多数の私服警官が配置されており、現地メディアはトランプ大統領と金正恩委員のそっくりさんが仲良く2人で歩く場面や、金委員長の髪型を真似た若者の話を報道するなどトランプ大統領と金正恩委員長歓迎ムード一色に包まれている。
(北朝鮮への融和姿勢強める米国)
米国・ホワイトハウスは「北朝鮮が完全な非核化に応じれば、我々は経済発展を実現させるために取り組む」との声明を出し、米国政府高官は、米朝首脳会談で共同声明の発表を目指していることを明らかにしたが、非核化のトーンは以前と比較すると大分弱まっている。関係筋によると米国は北朝鮮の態度を軟化させるために南北経済協力事業「金剛山観光」事業再開の容認すら検討しているという。さらにホワイトハウスは声明で「米国と友好国は北朝鮮に対する投資を集めたりインフラを改善したりする方法を検討する用意がある」と発表した。金委員長もトランプ大統領の出方次第では北朝鮮・寧辺の核施設について何らかの行動を取る可能性を示唆している。
(米朝首脳会談の行方)
二回目の米朝首脳会談で進展はみられるのだろうか。北朝鮮側の立場からすれば、核兵器リストの米国への提出は軍事攻撃のためのリストを与えることにつながるためハードルはかなり高い。逆に内政に苦しむトランプ大統領が2020年大統領選を見据え外交で得点を稼ごうとして北朝鮮に対し安易な妥協をするような事態になれば、交渉しやすい相手と判断し、さらに大きな譲歩を引き出そうとしてくる可能性がある。今回の会談で予想されるのは、北朝鮮が米国に届く核や大陸間弾道ミサイルの破棄(核兵器リストの提出は先送り)することと引き換えに北朝鮮は米国から終戦宣言と段階的な制裁緩和で、日本を引っ張り込むためにトランプ大統領は拉致問題の話題にも言及するとみられる。これによって日本は北朝鮮への投資プロセスに関与せざるを得なくなる可能性が高い。日本としてはトランプ大統領頼み一辺倒の姿勢は当面避けられないが、状況をよく見極めながら行動していく必要に迫られている。
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トランプ発言が意味することは(2月22日)
第二次米朝首脳会談まで1週間に迫った20日(現地時間)、トランプ大統領は「私は制裁の解除を望んでいるが、その前に北朝鮮が必ずなんらかの意義あることをしなければならない」と語った。
これに対し各国のメディア等はトランプ大統領の真意は何であるのか、探りあっている。英国のロイターは、米国が北朝鮮の完全な非核化の前に制裁を緩和しようとしているのではないか、とみている。一方日本の時事通信社は、トランプ大統領が制裁の緩和を交渉の切り札として、北朝鮮から核廃棄やその他の問題の譲歩を引き出そうとしているのではないかとの見方を示している。...
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第二次米朝首脳会談まで1週間に迫った20日(現地時間)、トランプ大統領は「私は制裁の解除を望んでいるが、その前に北朝鮮が必ずなんらかの意義あることをしなければならない」と語った。
これに対し各国のメディア等はトランプ大統領の真意は何であるのか、探りあっている。英国のロイターは、米国が北朝鮮の完全な非核化の前に制裁を緩和しようとしているのではないか、とみている。一方日本の時事通信社は、トランプ大統領が制裁の緩和を交渉の切り札として、北朝鮮から核廃棄やその他の問題の譲歩を引き出そうとしているのではないかとの見方を示している。
一方中国外交部の耿爽報道官は「中国側は一貫して全面的に、完全に安保理の対朝制裁決議を守っているが、制裁の執行と政治的な解決を安保理に要求することは、別のものであり、安保理に制裁緩和について議題にあげることも考慮する必要がある」と21日に述べた。
ロシアのコメルサント紙も、もし米朝首脳会談が順調に進展したならば、露中韓の3か国で国連安保理に北朝鮮への制裁の一部解除、例えば食料や紡織品、軽工業品の貿易や輸送関連などの面での制裁緩和を提案するだろう、との記事を掲載している。
トランプ大統領が先の発言と合わせて「私と金委員長は相思相愛だ」「今回の交渉が最後にはならない」と述べていることなどから、交渉の行方についても様々なに見方がある。
ドイツの南ドイツ新聞は、「終戦宣言」の利点は、米朝間の最もセンシティブな問題である非核化の問題でブレークスルーがなかったとしても、外部には何かを成し遂げたと見せることができることができることだ、と述べている。また米国のワシントンポストは、ハノイでの会談も昨年と同様に盛大なショーになるだろう。トランプ大統領が金正恩委員長との関係が良いと言っても、非核化で何の進展もなければ、第一次米朝首脳会談での成果も雲散霧消してしまうだろう、と言っている。
韓国の中央日報は、韓国は米国との間で、開城工業団地や金剛山観光の再開について話し合う計画があるといい、CNNも21日に、ボルトン大統領補佐官が今週末に韓国を訪問する予定があると言っている。
トランプ大統領がどこまで考えて上述の発言をしたのかはわからないので深読みする必要はないのかもしれない。それでも第二次米朝首脳会談では、実質的な非核化の話し合いが行われるのか、経済制裁の緩和はあるのか、単なるショーで終わってしまうのか、会談の結末が気がかりである。
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