新年の辞の発表見送りの謎(1月4日)
(「新年の辞」の発表見送りの謎)
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は元日恒例の「新年の辞」の発表を見送った。これは2013年以降で初めてのことであり様々な憶測を呼んでいる。31日まで開かれた朝鮮労働党中央委員会総会で金委員長は「遠からず、新たな戦略兵器を目撃することになるだろう」と述べるなどしていたため、対米強硬姿勢に転じるのではないかとして「新年の辞」は大きな関心を集めた。金委員長が今回「新年の辞」を取りやめた背景には米国によるイランへの容赦ない攻撃を目の当たりにしたことが大きいとみられる。...
全部読む
(「新年の辞」の発表見送りの謎)
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は元日恒例の「新年の辞」の発表を見送った。これは2013年以降で初めてのことであり様々な憶測を呼んでいる。31日まで開かれた朝鮮労働党中央委員会総会で金委員長は「遠からず、新たな戦略兵器を目撃することになるだろう」と述べるなどしていたため、対米強硬姿勢に転じるのではないかとして「新年の辞」は大きな関心を集めた。金委員長が今回「新年の辞」を取りやめた背景には米国によるイランへの容赦ない攻撃を目の当たりにしたことが大きいとみられる。イランからの支援を受けたイスラムシーア派武装組織「カタイブヒズボラ」がイラクに駐留する米軍を標的に攻撃を繰り返したことへの報復として、米国は同組織の拠点を空爆しただけでなく、この組織を支援したイラン革命隊のソレイマニ司令官をもドローン攻撃で殺害した。これら米軍の一連の行動は朝鮮労働党中央委員会総会が開催されている最中に行われた。
(金正恩委員長の誕生日周辺には警戒が必要)
こうした攻撃は2017年にトランプ政権が行った59発のトマホーク巡航ミサイルによるシリア・シャイラト空軍基地への空爆を思い起こさせる。この攻撃で当時(2017年)、核実験や弾道ミサイル実験を繰り返していた北朝鮮をおとなしくさせたことは記憶に新しい。金委員長は一方で自衛のため「核は絶対捨てない」という意思をさらに強めた可能性も考えられる。38ノースによると新浦港に停泊している小型潜水艦の映像が衛星画像から確認されており、近日中にSLBMの実験を行う可能性も考えられる。トランプ大統領の行動や発言を横目に見ながら行動するとみられるが、特に1月8日の金正恩委員長の誕生日周辺には警戒が必要である。
閉じる
米国防長官、米韓合同軍事演習再開を示唆(1月4日)
現地時間2日、米国のエスパー国防長官は、もしも必要であれば、米国は朝鮮半島での作戦の準備をするし、北朝鮮が次の行動にでるようなことがあれば、米韓合同軍事演習を再開することもあるだろう、と語った。しかし同時に、依然として外交と政治的な交渉による解決が朝鮮半島にとって最も良い道だとも語っている。さらに同長官は、米国は北朝鮮の「悪辣な行為」を抑制する軍事的な対応力があり、「今晩にも開戦」できる準備も整っている、と述べていた。...
全部読む
現地時間2日、米国のエスパー国防長官は、もしも必要であれば、米国は朝鮮半島での作戦の準備をするし、北朝鮮が次の行動にでるようなことがあれば、米韓合同軍事演習を再開することもあるだろう、と語った。しかし同時に、依然として外交と政治的な交渉による解決が朝鮮半島にとって最も良い道だとも語っている。さらに同長官は、米国は北朝鮮の「悪辣な行為」を抑制する軍事的な対応力があり、「今晩にも開戦」できる準備も整っている、と述べていた。
エスパー国防長官は、「米国は未だに北朝鮮を非核化させるという考えを放棄していない」と語り、さらに最近トランプ大統領と話し合いを行い、米国は引き続き北朝鮮と交渉を行おうとしているが、いかなる挑戦にも対応できるようにしておく、と語った。
エスパー長官のこれらの態度表明について、韓国の新聞マネートゥデイ紙は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するなどの「レッドライン」を超えるような行為をすることに対する警告ではないかと見ている。一方「中央日報」は、米国が北朝鮮に交渉のテーブルに戻るように促しているのではないか、と見ている。韓国の「朝鮮日報」紙は、エスパー長官は米韓の合同演習がどのような条件の下で再開されるかについては、具体的には言及していなかったが、今後何か月か情勢を観察し、例年春季に行っていた「キーリゾルブ」や「フォールイーグル」と呼ばれている米韓合同軍事演習を再開する可能性もある、とみている。
米朝双方とも話し合いの窓は閉ざしていないとしており、米韓合同軍事演習の再開は、あくまで北朝鮮の自制を促すためとしながら、米朝両者ともに軍事力オプションも大きくなっているように見える。
閉じる
「新年の辞」の発表がなかったのはなぜか ~中国外交部、北朝鮮に「緊張を高めるな」~(1月3日)
2013年以降、金正恩委員長は毎年1月1日に「新年の辞」を発表していた。最初のうちは演台から演説するスタイルであったが、2019年には、スーツを着て、ソファに座って「新年の辞」を読み上げていた。朝鮮半島の非核化と、トランプ大統領との会談の意思を強く前面に押し出した格好であった。
遼寧省社会科学院朝鮮韓国研究センター首席の呂超氏は、「朝鮮労働党の第7次中央委員会第5回全体会議が終わったばかりであり、金正恩委員長はすでに朝鮮の内外の情勢を総括しており、重複を避けたのではないか」とみている。...
全部読む
2013年以降、金正恩委員長は毎年1月1日に「新年の辞」を発表していた。最初のうちは演台から演説するスタイルであったが、2019年には、スーツを着て、ソファに座って「新年の辞」を読み上げていた。朝鮮半島の非核化と、トランプ大統領との会談の意思を強く前面に押し出した格好であった。
遼寧省社会科学院朝鮮韓国研究センター首席の呂超氏は、「朝鮮労働党の第7次中央委員会第5回全体会議が終わったばかりであり、金正恩委員長はすでに朝鮮の内外の情勢を総括しており、重複を避けたのではないか」とみている。再度「新年の辞」を発表しなくとも、会議の報告ですでに目的は達したからだとしている。
呂超氏はさらに、今回の会議の公報では「戦略兵器」という言葉に注目が集まり、核やミサイルの発射を再開するのだと見られているが、「朝鮮の宣伝文のなかでは、『兵器』とは必ずしも兵器そのものをさすのではなく、全国民に団結を促し、国防建設を強化するときにも『兵器』という言葉を使うこともある」と述べた。
また呂超氏は、北朝鮮が米国との対話の余地を残していることに注目しており、金正恩委員長の言葉のなかに「米国が今後朝鮮の立場を認識するならば、核の『抑止力』をさらに強化さるよう調整しよう」と語っている、ことにも注目している。
中国現代国際関係研究所・東北アジア研究所の劉天聡氏は、朝鮮が新しいICBMを発射する可能性を完全には排除できるわけではないけれど、現在ではないだろうと述べ、もしも何かするとしたら、2月の「光明星節(2月16日、金正日総書記の誕生日)」前後だろう、と述べた。
中国外交部の耿爽報道官は1月2日「朝鮮半島の対話の局面が続き、朝鮮半島の問題の政治的解決が、各方面の利益に合致する。当面の情勢で緊張を劇化させることは、対話対対話、行動対行動の原則をとれなくなってしまう。我々は関係者、とくに朝鮮が対話路線を堅持し、積極的に膠着状態を打破し、朝鮮半島問題を解決する努力を続けることを望んでいる」と記者会会見で述べ、北朝鮮に自制を求めた。
閉じる
トランプ:金正恩は約束を守ると信じている(1月2日)
北朝鮮が再び核と経済の並進路線に戻ったことに対し、トランプ大統領は31日、「私は金正恩が約束を守ると信じている」と語った。CNNが伝えたもの。
金正恩委員長は12月28日から31日まで開催された中央委員会総会で、戦略兵器の開発を再開すると述べていたが、さらに「自力更生によって、経済封鎖に対抗する突撃戦のなかで、主要な戦線は経済戦線であり、国家の経済的基礎を固めて、生産の潜在力を掘り起こし、経済発展と民生の改善を保証することによって、さらに強大な政治外交、軍事攻勢を確保し、勝利の道を進もう」と語っていた。...
全部読む
北朝鮮が再び核と経済の並進路線に戻ったことに対し、トランプ大統領は31日、「私は金正恩が約束を守ると信じている」と語った。CNNが伝えたもの。
金正恩委員長は12月28日から31日まで開催された中央委員会総会で、戦略兵器の開発を再開すると述べていたが、さらに「自力更生によって、経済封鎖に対抗する突撃戦のなかで、主要な戦線は経済戦線であり、国家の経済的基礎を固めて、生産の潜在力を掘り起こし、経済発展と民生の改善を保証することによって、さらに強大な政治外交、軍事攻勢を確保し、勝利の道を進もう」と語っていた。
一方米国や韓国の多くのメディアは、金正恩委員長は強硬な言葉を使っているものの、米国との非核化交渉を全面的に放棄した様子はなく、朝米対話の余地を残して、米国の態度の変化を促そうとしているのではないかと見ている。英国のBBCは、金正恩委員長がトランプ大統領を名指しで非難していないことに注目し、このことは交渉のハードルを下げようとしているのではないかと見ている。
BBCはさらに、金正恩委員長は、トランプ大統領が選挙戦に臨むにあたって、もし北朝鮮が核実験やICBMの発射を再開したら、外交的な屈辱だと感じるだろうと考えており、「金正恩の最新の態度は、ワシントンに対し、もし選挙期間中に北朝鮮によるICBMの発射を回避したいなら、最大限の譲歩をするように」と迫っているのではないかとみている。北朝鮮は制裁の緩和を望んでいるのだろうが、ホワイトハウスは北朝鮮の圧力に屈服することはなく、トランプ大統領はさらに制裁を課し、東北アジアでの軍事的存在感を増加させることになるだろう。
CNNは、トランプ大統領は「私と金正恩との関係は良好であり、彼が非核化の約束を守ると信じている」と語ったと伝えている。またポンペオ国務長官はフォックスニュースの取材に応じ、金正恩委員長が平和を選択肢、衝突や戦争を引き起こさないことを望んでいる、と語った。
一方韓国外交部の李度勲朝鮮半島平和交渉本部長は、1日に米国国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表と電話会談を行ったことと、今月米国を訪問し、ビーガン代表と朝鮮半島情勢や米朝会談について会談を行うと発表した。
なお金正恩委員長は毎年1月1日に、自ら「新年の辞」を読み上げていたが、今年は1日に「新年の辞」に関する報道はなく、中央委員会総会での決定事項が、「新年の辞」にかわるものとなったようだ。
閉じる
金正恩:戦略兵器の開発推進へ(1月1日)
金正恩委員長は「朝鮮は戦略兵器の開発を推進する」と述べた。
12月28日から31日にかけて開催された朝鮮労働党の第7次中央委員会第5回全体会議の大会公報によると、金正恩委員長は「朝米の信頼関係を築くために、朝鮮は率先して核実験や大陸間弾道ミサイルの発射実験を停止し、核実験場を廃棄したにも関わらず、米国は一貫して何も対応しないばかりか、数十回も米韓の合同演習を行い、制裁等の朝鮮を敵視する政策を行ってきた。...
全部読む
金正恩委員長は「朝鮮は戦略兵器の開発を推進する」と述べた。
12月28日から31日にかけて開催された朝鮮労働党の第7次中央委員会第5回全体会議の大会公報によると、金正恩委員長は「朝米の信頼関係を築くために、朝鮮は率先して核実験や大陸間弾道ミサイルの発射実験を停止し、核実験場を廃棄したにも関わらず、米国は一貫して何も対応しないばかりか、数十回も米韓の合同演習を行い、制裁等の朝鮮を敵視する政策を行ってきた。このため、朝鮮は一方的に約束を守る理由がなくなった」と語り、さらに戦略兵器の開発を推進すると述べたもの。
戦略兵器ということは大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの開発を再開し、さらに核実験にふれていることからすると、核実験の再開も視野に入っていることになる。
米朝は2017年以前の状態に戻るだけでなく、さらに悪化する可能性もある。「私だから北朝鮮にICBMの発射実験や核実験をやめさせることができた」と外交上の成果を誇っていたトランプ大統領はどのような次の一手をうってくるだろうか。
閉じる
「北朝鮮を追う」内の検索