オーストラリア(豪州)北部のダーウィン港は80年前の2月19日、南太平洋制圧を目論んでいた大日本帝国軍の大空襲を受けて壊滅的被害を受けた。1年10ヵ月前に大日本帝国海軍(IJN)が行ったハワイ真珠湾攻撃と同様、連合国側にとって大きな痛手となっている。同港は現在でも南太平洋地域にとって西側諸国の要となっていることから、現在の豪州は、中国を仮想敵とした米・英・豪3ヵ国軍事同盟(AUKUS)を組織したこともあってか、今度はIJNのように中国軍の攻撃を受ける恐れを懸念している。
2月16日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年設立の経済ニュース)は、「“豪州の真珠湾攻撃”と呼ばれるダーウィン大空襲から80年経った今、緊張関係にある中国軍による攻撃を懸念」と題して、貿易や安全保障問題等で緊張関係にある中国からの武力攻撃の恐れについて詳述している。
南太平洋地域の要となっていた豪州ノーザンテリトリー(北部準州)のダーウィン港は、80年前の2月19日午前十時、IJNが擁する空母から発進した188機から成る戦闘機によって空襲を受けた。
1時間後には、オランダ領東インド(現在のインドネシアに相当)の大日本帝国陸軍(IJA)基地から飛び立った54機の陸上爆撃機の攻撃も受けた。
その結果、連合国側の空軍・海軍基地であり、かつ南太平洋地域の補給拠点となっていたダーウィン港に停泊していた50隻余りの米・英・豪州の戦艦のうち11隻が撃沈され、15隻が半壊させられた上、戦闘機も30機撃墜された。
そして235人の将兵が犠牲となり、負傷者も300~400人出た。
大日本帝国軍がダーウィン港を攻撃したのは、南太平洋を制圧するに当たって、オランダ領東インドのジャワ島やフィリピンの連合国側拠点への補給経路を断つためであった。
ダーウィン港空襲には、1940年12月7日のハワイ・真珠湾攻撃を担った、淵田美津雄中佐(1902~1976年、最終階級は海軍大佐)率いる空襲部隊が同じく加わり、4隻の空母“赤城(1942年6月ミッドウェー海戦で損壊)”、“加賀(同左海戦で沈没)”、“飛龍(同左で沈没)”、及び“蒼龍(同左で沈没)”も真珠湾と同様参戦していた。
大日本帝国軍は、英国軍・オランダ軍・豪州軍を打ち負かしてマレーシア及びオランダ領東インドを侵略して後、ダーウィン大空襲で戦果を挙げたことから、いよいよ南シナ海及び豪州北部を制圧することとなった。
ダーウィン港空爆を皮切りに、大日本帝国軍は1943年11月までに、のべ100回も豪州を空爆している。
翻って現代であるが、豪州は現在、貿易や安全保障問題全般で中国との関係が緊迫している。
米国の主導もあって、昨年9月、AUKUSが組織されたが、仮想敵とされた中国は益々反発して、対豪政策も厳しさを増している。
特に、中国の近代化された軍事力を前にして、多くの豪州人が脅威を抱いている。
まず、中国軍は大型化かつ増強化された高性能長距離ミサイルを保有していて、直近では大陸間弾道ミサイル(ICBM、大洋に隔てられた大陸間を飛翔する長距離ミサイルで、米ロ間協定では5,500㎞超)に加えて、豪州も射程距離となる中距離弾道ミサイル(3,000~5,500㎞)を配備している。
また、世界最大規模となった中国海軍は、長距離ミサイルを装着した艦船を有するだけでなく、飛翔距離5,000マイル(約8,000㎞)のミサイルを装備した原子力潜水艦を建造済みである。
更に、中国空軍は、極超音速兵器を装着した、南シナ海の人工島から豪州北部まで飛翔可能な大型爆撃機H-6を保有し、ステルス型戦略爆撃機H-20も現在開発中である。
一方、豪州側も中国軍の脅威に対抗して、豪州軍の近代化を促進している。
例えば、長距離ミサイルの購入もしくは開発の意向に加えて、ステルス戦闘機F-35を合計72機手当てする計画であり、うち44機は既に配備済みである。
また、米国もダーウィン基地の強化を図る意向で10億ドル(約1,150憶円)弱を投下する意向で、米海兵隊を何年も常駐させている。
その上で、上述せるAUKUS組成を通じて、今後更に米軍配備をしていく計画である。
なお、昨年の2月19日、ダーウィン大空襲79年周年を迎えた際、北部準州のマイケル・ガンナー首相(当時46歳、2016年就任)は、“ダーウィンはインド太平洋地域における豪州の見張り塔であることに変わりなく、豪州の安全保障及び繁栄にとって重要な役割を演じている”と強調する発言を行っている。
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中国は、北京オリンピックと、国内で大規模な人の移動が発生する旧正月まで残り30日を切り、新型コロナウイルスに対して厳戒態勢を敷いている。しかし、ゼロ・コロナ政策の強化によって、住民は食糧難に直面し、企業の生産体制には混乱が生じている。
仏
『レゼコー』によると、これまで中国は徹底したゼロ・コロナ政策をとり、2020年3月から継続して国境を閉鎖している。国内では、ほぼ正常な日常生活への復帰の代償として、感染者が一人でも確認されるとただちに大規模な検査が実施され、ロックダウン措置が取られる。兵馬俑で知られる大都市西安の1300万人の住民は、わずか150人の感染者が確認されたことを受けて、2週間以上も自宅からの外出を禁じられた。これは武漢の閉鎖以来、前例のない規模の措置である。
北京の南800キロにある禹州では、無症状の新型コロナ感染者3名が確認され、100万人以上の住民に自宅待機が命じられた。深センでは、7日に2人の感染者が確認されて以来、約1700万人の住民を対象に大規模な検査が実施されている。北京からそう遠くない天津では、9日から1400万人の住民が検査を受け、20人が陽性となり、そのうち少なくとも2人がオミクロン株に感染していた。
中国政府のゼロ・コロナへのこだわりは、今のところ感染対策面では成功している。一方で、経済的・社会的な面で代償を支払っている。西安では、妊娠8ヶ月の女性が、48時間以内に検査を受けなかったため、病院に入ることを禁じられ、玄関先で流産してしまった。この事件は、同じく医療を拒否された白血病の8歳の少年や、複数の病院から門前払いされ心臓発作で死亡した男性の事件とともに、ソーシャルネットワーク上で論争を巻き起こしている。
完全なロックダウンが命じられた都市では、飢えた住民たちが、食料不足のため、コーヒーと卵、タバコとインスタントラーメンを交換する光景が見られた。大手多国籍企業もロックダウンの影響を受けている。サムスンとマイクロンという2大半導体メーカーは、ロックダウン措置を受けて、西安工場の操業を調整せざるを得ず、すでに脆弱なグローバルサプライチェーンをさらに混乱させる可能性があることを公表した。
米『ビジネス・インサイダー』は、中国当局によるウイルス撲滅のための各都市での厳しい移動制限は、世界的なサプライチェーンの危機が緩和される兆しがある中で、ブレーキとなっている、と伝えている。野村證券は、「中国での継続的なロックダウンは、すでに混乱を引き起こしている」と述べている。
約800万人が住む港湾都市、寧波でも一部でロックダウン措置が取られている。特に北侖地区は大きな打撃を受け、海運業界にとって大きな問題となっている。北侖地区には多くのトラック運転手が住んでおり、複雑なコロナ規制により、コンテナの搬出入が非常に困難になっている。野村證券は、感染力の強いオミクロンの変種が局地的に広がり始めたら、「サプライチェーンに大きな混乱をきたす」可能性があると指摘している。
『レゼコー』は、国産ワクチンを12億人に接種しているものの、14億人の人口を抱え、病院制度が不十分な中国では、規制を緩和すれば、巨大な感染爆発に見舞われることが警戒されていると伝えている。中国政府は、経済的にも、ゼロ・コロナ政策の方が、全国的な流行が再来するよりもコストがかからないと考えているという。
米国のシンクタンク、ユーラシア・グループは、「第20回党大会が近づいていることと、中国の新型コロナワクチンがオミクロン株の拡散を防ぐのに効果がない可能性があるため、オミクロンがデルタより穏やかであるとしても、中国当局の政策を緩和する意欲は低いだろう」と予測している。民間航空局は7日、国際便の再開について、2023年から2025年の期間を目標としていると発表している。
米『ブライトバート』は、北京当局は、2100万人以上が住む中国の首都で開催される冬季オリンピックでは、「クローズド・ループ」と呼ばれる管理システムを採用し、その一環として、住民に対し、緊急事態に巻き込まれたオリンピック関係者を支援しないよう、厳しい警告を発したと伝えている。事故など目撃した場合でも「車両や乗員には接触せず、専門家が現場に到着するのを待つように」とアドバイスしているという。
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